教育現場での主体性の育て方とは?自主性との違い、意味や重要視される理由を分かりやすく解説

2025/07/08(火)

予測困難な社会を生き抜くために、生徒たちの「主体性」を育む重要性が高まっています。「自分の生徒にもっと積極的に授業に参加してほしい」と感じている先生も多いのではないでしょうか。

この記事では、生徒の主体性を育むための具体的なアプローチを、メリットや「自主性」との違いを交えながら解説します。

生徒一人ひとりの興味・関心に寄り添い、自信につながる小さな成功体験を積ませることが、主体性を育むための第一歩です。

主体性とは

文部科学省の学習指導要領で「主体的・対話的で深い学び」がうたわれるなど、主体性の育成が求められています。主体性の意味や重要性、混同されがちな自主性との違いなどについて見ていきましょう。

主体性の意味

主体性とは、自らの意思と判断にもとづいて行動を選択し、結果に責任を持つ力のことです。何をすべきか決まっていない状況でも、自ら課題を見つけ出し、最善策を考えて行動に移す姿勢を指しています。

経済産業省が提唱する「社会人基礎力」でも「物事に進んで取り組む力」として重視されています。クラスの課題に対し、待ちの姿勢ではなく「〇〇をテーマにしてはどうか」と自ら提案し、周りを巻き込む姿勢が主体性です。

主体性はなぜ重要か

先行きが不透明で変化の激しい現代社会を、生徒たちがたくましく生き抜くために必要となる能力が主体性です。AIの進化やグローバル化など従来の常識が通用しない時代に、指示されたことをこなすだけでは、対応が難しくなっています。

未知の課題に直面したとき、他者の指示を待つのではなく、自ら情報を集め解決策を考え行動を起こす姿勢が未来を開きます。人生の羅針盤として、主体性の重要性は増しているといえるでしょう。

主体性がある人の特徴

主体性がある人は、常に当事者意識を持ち、指示を待たずに自ら課題を見つけて行動する特徴があります。物事を「自分のこと」として捉え、「どうすればもっと良くなるか」という目的思考で動いているからです。

授業でグループワークの際、黙って待つのではなく「まず〇〇について調べてみない?」と口火を切ります。議論が停滞すれば「別の視点から考えてみよう」と提案するなど、前向きで意欲的な姿勢は、主体性がある人の共通点です。

自主性との違いは意思決定の有無

主体性と自主性の最も大きな違いは、行動の起点となる「意思決定の有無」にあります。自主性は、やるべきことが決まっている状況で、指示される前に率先して動く力です。

一方、主体性はそもそも何をすべきか決まっていない段階から、自らの意思で目的を設定し行動する力を指します。「言われる前に宿題する」のは自主性、「テストの点数を上げるために、自分に合う勉強計画を立て実行する」のが主体性です。

主体性が育つことで得られる5つのメリット


生徒の主体性が育つと、学業面だけでなく、将来社会で活躍するためのさまざまな力が身に付きます。主体性がもたらす恩恵は、生徒の自信を育み、学習意欲を高めることにもつながるでしょう。

以下では代表的な5つのメリットを紹介します。

新しい解決方法が提案できる

主体性が育つと、従来のやり方にとらわれず、新たな解決策を自ら生み出し提案できるようになります。物事を多角的に捉え、「どうすれば課題を乗り越えられるか」を自分の頭で考える習慣が身に付いているからです。

部活動で練習がマンネリ化している際、ただ不満を言うのではありません。「他校の練習法を研究し、新しいメニューを取り入れては?」と具体的な代替案を示すなど、状況を打開する創造力を発揮します。

出来事を前向きに捉え行動が起こせるようになる

主体性が育つと、物事をポジティブに捉え、自ら行動できる人になります。
自分の意思で挑戦し、小さな成功を積み重ねることで自己肯定感が高まり、大きな自信につながるからです。

そのため、困難な課題に直面しても「どうせ無理だ」と諦めるのではなく、「どうすればできるか?」と解決策を探す前向きな姿勢が身に付きます。この姿勢こそが、逆境を乗り越える力や、困難な状況さえ楽しむ心の余裕を育みます。

自分からチャンスをつかめるようになる

主体性がある生徒は、目標達成のために自ら行動を起こすことをためらいません。「失敗したらどうしよう」と過度に恐れるのではなく、「まずはやってみよう」と考える傾向があるからです。行動することへの心理的なハードルが低いといえます。

試行錯誤を繰り返す姿勢が、結果的に多くの経験と学びをもたらします。主体性があると、文化祭の実行委員に立候補する、コンテストに挑戦するなど、自ら機会を創出しやすくなるでしょう。

積極的に関わることで、より多く成長のチャンスをつかめるようになります。

自分をアピールできるようになる

主体性を発揮する過程で、コミュニケーション能力も磨かれます。自分の考えを相手に伝えて他者を巻き込み、協力を得るためには、対話が必要になるからです。

相手に自分の意見を分かりやすく説明したり、自分とは異なる意見にも耳を傾けて議論を深めたりする経験を積みます。初対面の相手にも気後れせず話しかけられるのは、主体性が育っているからです。

自分の長所や考えを的確にアピールする力は、探究学習の発表や、進学・就職活動など、さまざまな場面で生きてくるでしょう。

積極性が身に付き個性が発揮できる

主体性を持つことは、自分らしさを大切にし、個性を発揮することに直結します。周囲の意見に流されるのではなく、「自分はどうしたいのか」を軸に行動するため、自分らしい選択ができるようになるでしょう。

現代は、周りに合わせる同調性が重視されがちですが、主体性のある生徒は、自分の興味や得意なことを堂々と表現できます。その積極的な姿勢が、周囲にも好影響を与え、多様性を尊重する雰囲気をつくることにもつながるでしょう。

主体性はVUCAやデジタル社会で必要な能力


現代は、将来の予測が困難な「VUCA(ブーカ)の時代」といわれます。このような変化の激しい社会にこそ、主体性は必要な能力です。

教育現場では、GIGAスクール構想により個別最適な学びが進み、生徒1人ひとりが自ら学ぶ姿勢が求められます。また、AIが多くの仕事を代替すると予測される中、人間にしかできないクリエイティブな価値の創造がますます重要になります。

AIが出した答えをうのみにするのではなく、それをどう生かすかを自ら考え、判断する力がなければなりません。主体性は、このデジタル社会を賢く生き抜くための強い基盤となるでしょう。

主体性を引き出す7つの方法


生徒の主体性は、特別な指導だけで育つものではありません。日々の授業や声かけ、関わり方の中に、その力を引き出すヒントが数多く隠されています。ここでは、すぐに実践できる7つの方法を紹介します。

興味や関心を引き出す

生徒の主体性を育む第一歩は、彼らが何に興味を持ち、何に関心があるのかを理解することです。生徒が特定分野に強い興味を示した場合、深掘りできる関連資料や情報を提供したり、探求の機会を与えたりすることが大切です。

「興味を示したことは、とことんやらせてみる」という姿勢は、生徒が自ら学びを深める原動力になります。生徒の「知りたい」「やってみたい」という気持ちを尊重し、最大限に引き出すことで、主体的な学びへつながっていくでしょう。

多くの体験を得るために背中を押す

生徒の主体性を育むためには、多様な経験を積ませることが重要です。失敗を恐れて一歩踏み出せない生徒がいた場合、教員には優しく背中を押してあげることが求められます。

発表の機会を設けたり、グループワークでリーダーシップを発揮する役割を与えたりする状況を、意図的につくり出すことも効果的です。成功体験はもちろん、失敗から学ぶ経験も生徒の成長には欠かせません。

安全な環境の中で積極的に行動できるように促すことが、主体性を育む上で大切です。

あまり干渉しない

教員が生徒の行動を全て管理したり、細かく指示を出し過ぎたりすると、生徒は自分で考える機会を失います。過度な干渉が原因で、指示待ちの姿勢になってしまう可能性があるからです。

適切な指導やサポートは必要ですが、生徒自身が試行錯誤をして、自力で解決策を見つけ出す時間を確保することも重要です。生徒が自分で考えて判断し、行動する過程を信じて見守ることで、生徒の主体性は着実に育まれていくでしょう。

自分で判断する機会を増やす

主体性を育てるには、生徒自身が「自分で決める」という経験を積み重ねる必要があります。授業内容を選択させたり、グループ活動の役割分担を生徒同士で決めさせたりするなど、判断の機会を増やすことが効果的です。

生徒が下した判断を尊重し、最善でなかったとしても、経験から何を学べるかを共に考える姿勢は勉強以外にも生きてきます。自分で判断し、その結果を受け止める経験を通じて、生徒は主体的に行動する力を養えます。

プレッシャーを与えない

生徒の主体性を育む上で、失敗を過度に恐れさせない環境づくりは重要です。プレッシャーを与え過ぎると、生徒は萎縮して挑戦することをためらってしまいます。

大切なのは、たとえ失敗したとしても、それを責めずに受け入れ、そこから学びを得られる機会と捉えることです。「失敗を責めず、受け入れる」姿勢は、生徒が安心して挑戦できる心理的な安全性につながります。

プレッシャーを感じずに行動できる環境があるからこそ、生徒は主体性を発揮することができます。

話は最後まで聞く

生徒の主体性を引き出すためには、彼らの話を途中で遮ることなく、最後まで耳を傾ける姿勢が大切です。生徒は自分の意見を話している途中で否定されると、「聞いてもらえない」と感じ、以降は発言を諦めてしまう可能性があります。

生徒が何を伝えたいのか、どのような考えを持っているのかを受け止めることが重要です。生徒は「自分の意見は尊重される」と感じ、安心して自己表現できるようになります。この安心感が、主体的な発言や行動へとつながっていきます。

信頼関係を築く

生徒の主体性を育む上では、教員と生徒間の強い信頼関係が必要です。生徒が教員を信頼していれば、安心して自分の意見を述べたり、困難な課題にも挑戦したりできます。

信頼関係は、日々のコミュニケーションの中で築かれます。具体的には、生徒1人ひとりの個性を認め、良い点を探して褒めること、生徒の小さな変化に気付き、声をかけることなどです。

教員が常に生徒に関心を持ち味方であると示すことで、生徒は自らの可能性を信じ、主体的に行動できるようになるでしょう。

まとめ


主体性の育成は、予測困難な現代社会を生徒がたくましく生き抜くために必要な能力です。
主体性を育むポイントは生徒の興味・関心に寄り添い、安全な環境で経験を積ませ、自己判断の機会を与え、信頼関係を築くことです。
これらの実践を通じて生徒は自信を育み、学習意欲を高め、将来社会で活躍するための力を身に付けられるでしょう。
本記事で示した主体性を引き出す方法を参考に、ぜひ生徒への指導にお役立てください。

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