主体的・対話的で深い学びとは?実現に必要なことや授業での具体例を紹介

2025/08/05(火)

授業方法/学習指導

評価

「主体的・対話的で深い学び」について理解を進めている教育現場の先生方は多いのではないでしょうか。この教育手法は学習指導要領の改訂により重要視されており、現代の教育現場で欠かせない概念です。

主体的・対話的で深い学びは、生徒一人ひとりが自分の考えを持ち、他者と対話しながら学習内容を深く理解する教育手法です。本記事では、主体的・対話的で深い学びの基本概念から、実現に必要な要素、具体的な授業事例まで解説します。

主体的・対話的で深い学びの概要

「主体的・対話的で深い学び」とは、生徒が意欲的に学習に取り組み、多角的な視点から物事を考察し理解を深めることを目指す学習方法です。

例えば、与えられた知識を覚えるだけでなく、なぜそうなるのかを考え友達と意見を交わし、自分の言葉で表現する活動がこれに当たります。生徒は学ぶ楽しさを知り、自分で考える力を身に付けられます。

主体的な学び

主体的な学びとは、生徒が自ら目標設定をし、見通しを立てて粘り強く学習に取り組む姿勢を指します。自らのキャリア形成を視野に入れ、学習活動を振り返り、次につなげる力を育むのが狙いです。

例えば、教師が一方的に知識を教えるのではなく、生徒が自ら課題を見つけ解決策を考えて発表するグループワークが該当します。このような活動を通じて、生徒は与えられた問いに答えるだけでなく、自ら問いを立て探究する力を養います。

主体的な学びを促すには、教師が生徒の興味や関心を引き出すような多様な学習機会を提供することが重要です。単に知識を習得するだけでなく、知識をどのように活用するかを生徒自身に考えさせることで学ぶ意欲が向上します。

対話的な学び

対話的な学びは、教師や他の生徒、地域の人々との交流を通じて、自分の考えを深めることを目指します。生徒は、与えられた答えを受け入れるだけでなく、自分なりの考えを持って相手と議論を重ねながら学びを進めることが大切です。このプロセスにより、多様な視点に触れて思考を広げる力を養えます。

対話的な学びを促すには、教師が一方的に話すだけでなく、生徒の発言を積極的に引き出して尊重する環境が必要です。例えば、地域の観光名所について学習した後、生徒同士でディスカッションする機会を設けることが必要です。互いに意見を出し合い、多角的に物事を捉える力が育まれます。

生徒は社会に出てからも、他者と協力しながら課題を解決できる人材へと成長していけるでしょう。

主体的・対話的で深い学びには粘り強さと自己の考えを広げることが必要


平成29・30・31年に改訂された学習指導要領では転換が図られました。すなわち「何を教えるか」「何を知っているか」という学習への考え方から、「何を学ぶか」「どのように学ぶか」「何ができるようになるか」という視点への転換です。「どのように学ぶか」の具体的な在り方こそが、主体的・対話的で深い学びなのです。

生徒が自ら課題を設定し、グループで議論を深め多様な意見に触れて自分自身の考えをより洗練させるような授業が求められます(※1)。

主体的・対話的で深い学びの根幹となる3つの要素


主体的・対話的で深い学びを効果的に進めるには、3つの重要な要素があります。それは、生徒が自ら学ぶための基礎能力、他者との対話を通じて比較検討する力、そして自己理解と自己認識を深めることです。

3つの要素は相互に関連し、生徒が知識を深め、より良い社会を築くための基盤となります(※2)。

1. 自ら学ぶために必要な基礎能力

基礎能力は知識や技能だけではありません。物事を論理的に考え、表現する力、情報を適切に処理する力、目標に向かって計画的に行動する力などを含みます。基礎力がなければ、主体的に課題を見つけたり、対話を通じて深く思考したりすることが難しくなるからです。

例えば、国語の授業で文章を読む際は、内容を理解するだけでなく筆者の意図や背景を考察する力を養うことが重要です。数学では、公式を暗記するだけでなく、公式が成り立つ理由やどのような場面で使えるのかを考えると応用力が身に付きます。

教師は生徒が既存の知識を基盤として、新たな知識を獲得し活用できるような学習活動をデザインする必要があります。

2.「比べる力」と対話の工夫

生徒が多様な情報や異なる意見を比較検討し、共通点や相違点を見出すことで、物事を多角的に捉える力が育まれます。対話は「比べる力」を実践する場であり、自分の考えを深め広げる上で重要です。

例えば、テーマを決めて複数の資料を読み比べ、それぞれの主張や根拠を比較する活動を取り入れるとよいでしょう。その上でグループディスカッションをして、互いの解釈や疑問点をぶつけ合うことでより深い理解につながります。

教師は、なぜそう考えるのか、他にどのような見方があるのかと問いかけをして議論を深める役割を担います。

異なる意見を尊重し建設的に議論する経験は、生徒にとって社会生活においても役立つ貴重なスキルとなるでしょう。

3. 自己理解と自己認識

生徒が自分の興味や得意・不得意を理解することで、学習への意欲や目標設定の質が高まります。自己認識が深まると、自分に合った学習方法を見つけやすくなり、効率的に学びを進められるようになります。

生徒が自分の学習ポートフォリオを作成し、定期的に振り返る機会を設けることは有効です。成功体験だけでなく、困難に直面したときの感情やどのように乗り越えたかを記録することで、自己の成長を客観的に認識できます。

教師は、生徒が自分自身と向き合い、学びの過程を内省できるようサポートすることが求められます。

自己理解と自己認識は、生徒の生涯にわたる自己成長の基盤です。

主体的・対話的で深い学びを取り入れる授業の3つの着眼点


新しい学習指導要領で重視されている「主体的・対話的で深い学び」。この学びは、生徒が学んだ知識を社会や人生で生かす力を育むことを目的としています。単に「何を学ぶか」だけでなく、「何ができるようになるか」を重視しているためです。

従って「どのように学ぶか」という視点で授業を改善していく必要があります。中央教育審議会の答申によると、具体的な授業改善は次の3つの視点から進めることが求められています。

1. 児童生徒自身がキャリア形成を見据えられる授業改善の視点

児童生徒が自らのキャリア形成を意識できるような授業改善が重要です。自分自身の将来や社会とのつながりを意識することで、学習意欲が高まり主体的に学ぶ姿勢が育まれるためです。

例えば、地域の人々を招いて仕事について話を聞く機会を設けることが考えられます。また、社会の課題を解決するPBL(Project Based Learning)型の学習を取り入れる方法もあります。これらの機会に児童生徒は「なぜ学ぶのか」を具体的に感じ取れるでしょう。

このように、授業を通して児童生徒が将来を見据え、学ぶことの意義を実感できるような工夫が求められます。

2. 学習者と教師の視点を往還する重要性

主体的・対話的で深い学びを促すには、学習者と教師双方の視点を行き来することが大切です。教師が一方的に「こうすれば生徒が興味を持つはず」と考えても、実際に生徒の興味関心につながらない可能性があるためです。

教師が具体的な教材を用意して生徒の注意を引こうとしても、生徒の日常生活や疑問と結びつかなければ、興味を持たれません。授業を改善する際には、教師が「どうすれば学ぶ意欲を引き出せるか」を考えるだけでは不十分です。さらに、生徒が「何に興味を持ち、何を学びたいと感じるか」を深く理解する必要があります。

教師が考える授業の方向性と生徒の反応や学びの状況を常に照らし合わせ、柔軟に授業を調整していくことが必要です。

3. 単元と題材を見通した授業デザイン

効果的な学習を実現するためには、長期的な視点で授業を構成することが重要です。単発の授業では、生徒の深い理解は育まれません。1つの単元を通して、どの場面で生徒が自ら考える機会を設けるか、どのタイミングで仲間との意見交換を促すかを戦略的に計画します。

例えば、導入では興味を引く問いかけを行います。次の展開では協働的な探究活動を取り入れ、まとめでは学習の振り返りと次への課題設定を行うといった流れです。教師主導で教える内容と、生徒が主体的に取り組む活動の配分を適切に調整することも必要です。知識の定着が必要な部分では直接指導し、思考力を伸ばしたい部分では探究的な活動を設定します。

このような授業設計により、生徒は段階的に学習を深められます。結果として、知識の活用力と思考力が総合的に向上するでしょう。

主体的・対話的で深い学びの高校・中学校の教科別事例


主体的・対話的で深い学びは、各教科の特性に応じた形で実践できます。ここでは、高校・中学校における具体的な実践例を教科別に紹介します。

「英語」での実践例

大阪高等学校は、英語のディベート活動で生徒主導のルーブリック評価を導入しました。

まず生徒に「優れたディベートとは何か」を考えさせ、重要な要素を抽出してもらいます。次に各要素について理想的な状態と現在の状況を言語化し、両者の間に位置する目標を設定させます。

ディベート後は、生徒が作成したルーブリックを用いて自己評価を実施しました。さらに他の生徒による評価も行い、多面的な学習効果を生み出しています。この手法により、生徒は学習の主体者として成長していけるでしょう。

「数学」での実践例

中学校の数学では、生徒が身近な問題から数学的な問いを発見することが重要です。特に関数の単元では、身近な現象を数学的に分析する場面を設定します。実生活と関連付けた問題を提示することで、生徒は数学的思考を働かせます。

ICTツールでグラフを作成し、データを視覚化することで抽象的な概念も具体的に理解できるでしょう。生徒は試行錯誤を繰り返しながら、数学の有用性を実感し、学習への意欲が高まります(※3)。

まとめ


「主体的・対話的で深い学び」は、学習指導要領改訂で重視される教育手法です。生徒が自ら課題を見つけ、他者と対話しながら学習内容を深く理解することを目指します。これには、基礎能力、多様な意見を比較する力、自己理解・自己認識が必要不可欠です。

キャリア形成を見据え、教師と学習者の視点を往還し、単元全体を見通した授業デザインが求められます。生徒は自分で考える力や社会で協働する力を身に付けます。

本記事での実践例や着眼点を、ぜひ日々の授業にお役立てください。

※1:「主体的・対話的で深い学びの実現(「アクティブ・ラーニング」の視点からの授業改善)について(イメージ)」

※2:「主体的・対話的で深い学びを実現する授業改善の視点について」

※3:「主体的・対話的で深い学びの授業づくり」

 

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