チーム担任制のメリットとは?学校教育における働き方改革として文部科学省も推奨

2025/08/10(日)

授業方法/学習指導

学校運営・教員

多様化する生徒への対応や増え続ける業務に悩む教員の方も多いでしょう。課題を解決する手段として注目されるのが、複数の教員で学級を運営する「チーム担任制」です。1人の教員に責任が集中しがちな従来の制度とは異なり、チーム担任制は負担を分散できます。

この記事では、チーム担任制の仕組みやメリット・デメリットを詳しく解説します。この記事を読むと、教育の質の向上と働き方改革を両立させるヒントが見つかるでしょう。

チーム担任制とは複数の教員がローテーションを組む仕組み

チーム担任制は、従来の「1学級1担任」とは異なり、学年などの単位で教員がチームを組みます。チームで複数の学級を受け持ち、協力しながら生徒を指導するのが大きな特徴です。

複数の教員がまとまって対応する

学級担任制とは異なり、複数の教員が協力して1つの学級を担当するのがチーム担任制です。教員の負担軽減や多様な生徒へのきめ細かな指導のため、チーム担任制が少しずつ広がりを見せています。

ただし、日本の多くの小中学校で採用されているのは、1人の教員が1つの学級を受け持つ学級担任制です。

チーム担任制は複数担任制とも呼ばれ、教員がローテーションを組むなどして生徒の指導に当たります。学年全体を複数の教員が連携して担当する場合は学年担任制と呼ばれます。

目的は教員の負担軽減とインクルーシブ教育

現在の学校現場では、教員が多くの業務を抱え、多忙な状況にあります。日々の授業準備はもちろん、生徒や保護者との面談、放課後の課外活動など、多くの業務を1人の担任がこなさなくてはなりません。

そこで、複数の教員が協力して学級を担当するチーム担任制が注目されています。チーム担任制により、教員1人にかかる業務負担を分散し、軽減できます。もし担任の1人が急な病気で休職したり、退職することになったりしても、他の教員がスムーズに引き継ぎ、学級運営に支障が出にくくなるでしょう。

インクルーシブ教育の推進もチーム担任制の重要な目的の1つです。インクルーシブ教育とは、障害の有無や個々の特性にかかわらず、全ての生徒が同じ環境で質の高い教育を受けられるものです。チーム担任制であれば、1人の生徒を複数の教員が多角的に見守り、それぞれの専門性を生かした指導が可能になります。

チーム担任制を導入する5つのメリット


チーム担任制の導入により、教育現場に良い影響をもたらすことが期待されています。複数の教員が協力して学級運営することで、従来の1人担任制では実現が困難だった効果的な指導体制を築けるでしょう。以下では、具体的な5つのメリットについて解説します。

1. 教員の負担軽減が期待できる

現在の学級担任制では、1人の教員が年間を通して学級運営の全責任を負うため、そのプレッシャーは非常に大きいものです。特に経験の浅い若手教員は、重圧を強く感じてしまう傾向があります。

しかし、複数の教員がチームとして学級を担当すれば、精神的なプレッシャーを分け合えます。指導方法に悩んだ際に経験豊富な教員に相談したり、若手教員がベテラン教員の指導の様子から学びを得たりすることも可能です。

精神的な負担の軽減に加え、実際の業務も分担できるため、物理的な負担軽減にもつながります。

2. 授業の質の向上が期待できる

従来は1人の教員が多くの業務を抱えていたため、授業準備に十分な時間を割くのが難しい状況でした。

しかし、業務負担が軽減されれば、空いた時間を教材の読み込み、授業資料の作成、授業方法の研究に充てられます。内容をより深く掘り下げた授業や、生徒の理解を深める工夫を凝らした授業が期待できるでしょう。

学校によっては、チーム担任制と同時に教科担任制を導入するケースもあります。この場合、教員は特定の教科に集中して専門性を高められるため、さらに授業の質が高まります。

チーム担任制は教員が本来の授業に注力できる環境をつくり出し、教育全体の質の向上に貢献できる制度です。

3. 学級崩壊などの問題抑制と早期解決が見込まれる

学級担任制では教員と生徒の相性が合わない場合、学級全体の雰囲気が悪化し、最悪のケースでは担任が休職・退職に追い込まれます。1人の教員では見落としがちな生徒間のトラブルも存在するでしょう。

チーム担任制を導入すれば、1人の教員が学級運営で困難を抱えても、他の教員がサポートしカバーできます。複数の教員が交代で担任を務めることで、学級間の指導力に差が生じにくく、均質な指導の提供が可能です。いじめや学級崩壊といったクラス内の問題の発生を抑えられます。

問題が発生した場合でも複数の教員間で相談し、協力しながら解決できるのが強みです。

4. 生徒を適正に評価し「ひいき」が少なくなる

学級担任制では、生徒の評価は担任1人の視点に委ねられていました。しかし、複数の教員がチームとして生徒を指導し評価することで、多くの視点から生徒を観察し、多角的な評価が可能になります。特定の生徒への過度な評価や不公平な評価、いわゆる「ひいき」が起こりにくくなるでしょう。

授業についていけない生徒がいる場合、学級担任制ではクラス全体のペースに合わせることが優先されがちです。一方、チーム担任制では授業を担当していない別の教員が個別指導を提供できるため、個々の学習状況に応じたサポートを提供できます。

5. 生徒にとっても自分に合った教師との出会いが期待できる

教員と相性が合わないことが原因で、生徒が授業に集中できなかったり、学校を休みがちになったりするケースは少なくありません。

しかし、複数の教員が担任として学級に関わることで、生徒は「この先生なら話せる」と感じる教員を見つけやすくなります。ある先生には話しにくいと感じても、別の先生には気軽に相談できる状況が生まれるでしょう。

いじめや学級内での問題が発生した場合でも、生徒が教員に悩みを打ち明ける機会が増えるため、問題の早期発見につながります。

チーム担任制を導入する3つのデメリット


チーム担任制には、教員の負担軽減や教育の質の向上といったメリットがある一方で、デメリットも存在します。導入を検討する際はデメリットを理解し、適切な対策を講じることが必要です。

1. 責任の所在の明確化が必要

生徒や保護者にとっても、責任の所在が不明確な状態は望ましくありません。例えば、特定の生徒の課題について、どの先生に相談すればよいのか迷ってしまうケースがあります。

相談しやすい先生を見つけられても、その先生だけが問題を抱え込んでしまう事態にもつながりかねません。保護者も同様に、子どものことについて相談したいときに、誰に話せばよいか分からず困惑することが予想されます。

このような状況を避けるためにも、教員間の対話と情報共有は極めて重要です。生徒や保護者が、誰に相談しても大丈夫だと感じられる状況をつくることが理想です。相談された内容をすぐにチーム内の他の教員に共有し、協力しながら対応する体制を構築しましょう。

2. より意識した意思疎通が必要

情報共有が不十分だと、生徒と先生の間に信頼関係を築くのが難しくなります。ある先生には伝えた情報が他の先生には届いていない、といった事態が起こる可能性があるからです。チーム担任制がスムーズに機能するまでは、このようなディスコミュニケーションが発生しやすいでしょう。

こうした問題を防ぐためには、意図的で継続的な情報共有の場を設けることが重要です。具体的には、定期的なミーティングや、生徒の状況を共有するためのオンラインツールの導入などが考えられます。

教員は毎朝連絡事項を共有したり、週に一度は生徒1人ひとりの進捗や課題について話し合う時間を設けたりするとよいでしょう。

3. 全科目の経験が積める工夫が必要

チーム担任制を導入すると、教員は自分の担当教科以外の指導経験を積む機会が減る可能性があります。その年度は問題がなくても、将来的にさまざまな教科を指導する必要が生じた際に、経験不足となる恐れがあるためです。教員のスキルアップやキャリア形成を考えると、この点はデメリットです。

来年度には別の科目を担当する可能性もあり、学年全体を見る立場になることも考えられます。若手教員は特定の教科に限定されず、ある程度は全教科の指導経験を積めるような工夫が必要でしょう。

これにより、教員は幅広い知識と指導スキルを身に付け、将来的な教育現場の変化にも柔軟に対応できるようになります。

チーム担任制を導入した事例


チーム担任制を取り入れた学校では、どのような成果が得られているのでしょうか。下記の事例から、チーム担任制の導入が学校現場にもたらす影響を具体的に見ていきましょう。

大阪市新巽中学校の事例

大阪市立新巽中学校では2016年から複数担任制を導入し、大きな成果を上げています。導入の背景には学校の荒れた状況があり、生徒の問題行動や教員の負担が課題となっていました。

同校では2人の教員が1クラスの担任を務める「複数担任制」を実施しました。生徒はどちらの教員にも相談できるため、教員は問題の早期発見や早期解決を実現できています。2018年からは1人の教員が3学年の教科指導を受け持つ「タテ持ち型編成」も導入しました。

結果として生徒の問題行動はほぼなくなり、全国学力テストの成績も大阪市の平均を超えるなど学力向上も達成されています。

兵庫県神戸市での事例

神戸市は2023年度から、市立小中学校のモデル校で「チーム担任制」の導入を開始しました。

学級担任を固定せず複数の教員でローテーションを組み、授業や生徒指導など学級運営全般をチームで分担しました。各校の事情に合わせて月・週・日ごとに担任が変わる形式を採用しています。

複数の教員による「多面的な視点」で子どもの変化に気づく機会を増やし、教員の不適切な指導を防ぐ効果も期待されています。

教員の業務平準化や負担軽減も目的の1つとされており、教員に「担任をしない日」ができるのが理想です。

まとめ

「チーム担任制」は、複数の教員が協力して学級を運営する制度です。教員の負担軽減とインクルーシブ教育の推進が主な目的とされています。大阪市や神戸市で導入され、問題行動の抑制や学力向上などの成果が見られています。チーム担任制を検討する際は、ぜひ本記事の内容をお役立てください。

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