義務教育とは 日本での義務教育の定義や目的、海外の事例を紹介

2025/08/20(水)

 

日本の義務教育は、小学校・中学校の9年間で授業料と教科書は無償です。保護者には、子どもに普通教育を受けさせる義務があります。

本記事では、日本での義務教育の定義と目的・目標や義務教育期間の学校の種類について解説します。海外5カ国の義務教育の事例も紹介するので、ぜひ参考にしてください。

義務教育とは


義務教育とは、国や保護者などが子どもに受けさせなければいけない教育のことです。

日本に限らず義務教育は、子どもが充実した人生を送れるように教育することが目的の1つです。ひいては、日本が国として必要不可欠な人材育成を行うことにつながります。

以下では、日本の義務教育について解説します。

日本の義務教育制度の概要

日本の義務教育制度は、子どもの満6歳の誕生日以後の最初の4月からの6年間を小学校に、小学校修了から15歳に達した日以後の最初の3月までの3年間を、中学校に就学させることとなっています。

費用面で見ると、義務教育では授業料を徴収せず、教科書も無償です。教科書については、国による検定制度が設けられています。

法律上の義務教育の定義

1.憲法

憲法第26条第2項では下記の内容が規定されています。

  • 保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負う
  • 義務教育はこれを無償とする

子どもに教育を受けさせる義務があるのは、保護者が日本国籍を有している場合です。保護者が日本国籍を有していれば、子どもが外国籍でも教育を受けさせる義務が生じます。

また、普通教育とは通常全ての国民に共通する、一般的・基礎的な教育を指す概念です。職業的・専門的でない教育のことをいいます。

2.教育基本法

教育基本法第4条では、下記の内容が規定されています。

  • 国民は保護する子に普通教育を受けさせる義務を負う
  • 国公立の学校における義務教育は授業料を徴収しない

現在は教科書無償措置法などにより、義務教育では私立学校も授業料・教科書ともに無償です。

3.学校教育法

学校教育法第16条では「保護者は子に9年の普通教育を受けさせる義務」がある旨を規定しています。

子どもに義務教育を受ける義務があるのでなく、保護者が子どもに教育を受けさせる義務があります。

日本の義務教育はいつからいつまで?

日本の義務教育制度の就学年齢は、6歳から15歳の9年間です。

1886年に義務教育の文言が初めて登場し、尋常小学校を卒業するまでの3~4年と規定されました。(小学校令)

その後変遷を重ね、1947年になって義務教育は現在の9年と規定されています。(教育基本法・学校教育法)

参考資料:文部科学省「我が国の義務教育制度の変遷」

義務教育の目的と目標

人間として、生涯にわたって生き抜く力を育成する基礎教育が義務教育の目的です。義務教育の目標は、学校教育法第21条に下記のような態度・能力を養うことなどが記されています。

  • 主体的に社会の形成に参画して発展に寄与する
  • 生命と自然を尊重する精神や環境保全に寄与する
  • 国と郷土を愛する
  • 外国の文化の理解を通じ他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する
  • 家族と家庭の役割、生活に必要な衣食住、情報、産業などについての基礎的な理解と技能
  • 読書に親しみ生活に必要な国語を正しく理解・使用する基礎的な能力
  • 生活に必要な数量的な関係の理解と処理する基礎的能力
  • 自然現象について観察及び実験を通じ科学的に理解・処理する基礎的な能力
  • 健康・安全で幸福な生活のために必要な習慣
  • 運動を通じて体力を増進
  • 心身の調和的発達を図る
  • 音楽・美術・文芸など他の芸術について基礎的な理解・技能
  • 勤労を重んずる態度と個性に応じ将来の進路を選択する能力

義務教育期間の学校の種類


小学校・中学校を含め、義務教育期間の学校は4種類あります。以下で順に解説します。

小学校

小学校の修業年限は6年です。小学校では心身の発達に応じ、義務教育として行われる普通教育の基礎的な部分を学習します。

小学校での教育指導を行うにあたって、重要な点は下記のとおりです。

  • 児童の体験的な学習活動
  • ボランティア活動などの社会奉仕体験活動
  • 自然体験活動など

さまざまな体験活動の実施を重視していることが分かります。

中学校

中学校の修業年限は3年です。中学校では小学校教育を基礎として心身の発達に応じ、義務教育として行われる普通教育を学習します。

中学校での3年間では必修科目と選択教科、道徳、総合的な学習の時間、特別活動の強化過程を学習します。

小中一貫型小学校・中学校

すでにある小中学校を統合するなど、組み合わせて一貫教育を行う学校が小中一貫型小学校・中学校です。

小中一貫型小学校・中学校では、離れた場所にある小学校・中学校で一貫した教育を行う「施設分離型」が最も多い施設の形態となっています。

小中一貫型の修業年限は小学校が3年、中学校が6年です。小学校と中学校のそれぞれに、校長と教職員がいます。市区町村教育委員会の規則などで設置され、学級規模は12学級以上18学級以下です。

義務教育学校

義務教育学校とは、小学校と中学校の9年ある義務教育を一貫して行う学校をいいます。小学校・中学校の区切りをなくして合わせ、教育課程を9年とした学校制度です。

義務教育学校の歴史はまだ浅く、2016年に制度化されました。小学校・中学校での教員の勤務時間の多さが、制度化の背景にあります。

義務教育学校は同一の校舎内において、小学校と中学校の運営を行うことで一貫して教育を行う「施設一体型」が最も多い施設の形態となっています。

義務教育学校の修業年限は前期課程6年、後期課程3年の合計9年です。小学校と中学校を1人の校長が担当し、教職員は原則として、小学校・中学校両方の教員免許を所有しています。

市区町村の条例で設置され、学級規模は18学級以上27学級以下です。

よくある勘違い|義務教育は「子どもの義務」ではない


義務教育を受けるのは子どもの義務だと考える方もいますが、それは異なります。ここでは、義務教育に関するよくある勘違いについて解説します。

義務教育は「保護者の義務」

学校教育法第16条に「保護者は子に9年の普通教育を受けさせる義務を負う」旨が規定されています。保護者には子どもに普通教育を受けさせる義務があり、子どもは教育を受ける権利を有しているということです。

子どもが有しているのは、教育を受ける権利であって教育を受ける義務ではありません。

不登校は欠席の正当事由のため保護者の義務違反にはならない

憲法第26条第2項では「保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負う」と定められています。

保護者には子どもに普通教育を受けさせる義務がありますが、いじめや精神疾患などさまざまな理由で学校を休まざるを得ない不登校は、学校を欠席する正当な事由です。

したがって、不登校であることは保護者の義務違反にはあたりません。子どもが自らの身体や精神状態などを守るために、不登校となっている点に着目しなければなりません。

2023年10月発表の文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」によれば、小中学校の不登校児童生徒数は10年連続で増加し299,048人(前年度比22.1%増)と過去最高になっています。

日本とどう違う?海外諸国の義務教育制度の比較


国際的に見ても、6〜15歳の9年間を義務教育としている国は多くあります。義務教育制度のある国の義務教育年限は、5〜12年間の範囲に収まります。

一方で、義務教育制度のない国もあります。ブルネイ・ネパール・パキスタン・モルディブの4カ国には義務教育制度がありません。

ここからは、韓国・アメリカ・イギリス・ドイツ・フランスの5カ国と日本の義務教育制度の違いを比較してみましょう。

参考資料:文部科学省「各国の義務教育年限」

韓国の義務教育制度

韓国の義務教育は6〜15歳の9年間で、日本と同じ6-3-3制を採用しています。 日本の小学校にあたる初等学校及び中学校は義務教育となっています。

公立学校は授業料を徴収せず、教科書が無償である点も同じなため、日本に近い義務教育制度といえるでしょう。

韓国は、高等学校・大学への進学率が高いことでも有名です。 (高等学校99.5%、大学や専門大学89.3%:2011年)

アメリカの義務教育制度

アメリカでは、州によって就学義務に関する規定が異なります。就学義務開始年齢が7歳の州が多いものの、実際にはほとんどの州で6歳から就学が認められています。

義務教育年限は9〜12年の間ですが、9年間あるいは10年間としている州が多くあります。

義務教育制度の対象となる学校は公立学校です。私立学校やホームスクーリングなどは就学義務免除の扱いになります。

アメリカは連邦国家のため、義務教育であっても州によって独自性の多いことが特徴といえます。

イギリスの義務教育制度

イギリスの義務教育は、5〜16歳の11年間です。初等教育と16歳までの中等教育が、義務教育の対象になります。

イギリスの初等教育はプライマリースクールと呼ばれ、前期課程(5〜7歳対象)と後期課程(7〜11歳対象)に分かれることが多い傾向にあります。2つの課程は1つの学校に併設されるのが一般的です。

中等教育はセカンダリースクールと呼ばれ、11〜16歳までを対象にしています。

義務教育は基本的に無償ですが、給食費・遠足日などは有償です。日本や韓国と比べると、義務教育年限が2年多いことが分かります。

ドイツの義務教育制度

ドイツの義務教育は原則5〜16歳の9年間で、一部では10年間の州もあります。

初等教育は基礎学校において4年間(一部の州は6年間)実施され、中等教育は生徒の能力や適性に応じてハウプトシューレ・実科学校・ギムナジウムに分かれます。

義務教育は公立学校であれば無償です。私立学校は有償であるものの、公費補助の比率が高い傾向があります。

大きな特徴として、義務教育終了後に就職して見習いで職業訓練を受ける人は、職業学校就業義務があります。職業学校就業義務とは、通常3年にわたり週に1〜2日職業学校に通う義務をいいます。

ドイツの教育制度は、日本と大きく異なっているといえます。

フランスの義務教育制度

フランスでは6〜11歳の5年間が小学校、12〜16歳の4年間が中学校です。この6〜16歳までの10年間が義務教育です。

5年間の初等教育を受けた後、中等教育に進みます。中等教育は前期(11〜15歳)と後期(15〜18歳)に分かれています。

義務教育は基本的に無償です。給食費や強制参加でない旅行は有償になります。

フランスでは、全体の98.7%の子どもは基本的に3歳から幼稚園に通っているのが現状です。

まとめ


国連が採択した持続可能な開発目標SDGsで「全ての人に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する」目標4が掲げられています。日本の義務教育制度は、日本社会の基礎を支える柱といえます。

本記事が義務教育に携わる方々の参考になれば幸いです。

 

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