形成的評価とは?総括的評価・診断的評価との違いを解説

2025/09/03(水)

授業方法/学習指導

評価

日々の授業で形成的評価について悩む先生も多くいるでしょう。期末試験のような総括的評価もあり、評価する時間には限りがあるためです。一方、形成的評価を取り入れることで学習の定着度を高められるため、生徒が自ら学びを振り返る力も養えます。

この記事では形成的評価とは何かを整理し、総括的評価や診断的評価との違いから活用の実践例まで解説します。記事を読むことで、授業改善のヒントにしてください。

形成的評価の基本

形成的評価とは、学習の途中段階で生徒の理解や習熟度を把握し、指導の質を高めるために活用する評価方法です。以下では、形成的評価の定義と目的、背景を紹介します。

定義と目的

形成的評価とは、学習目標に照らして生徒の達成状況を途中段階で見極め、指導を柔軟に改善するための評価方法です。評価する理由は、一人ひとりの理解度やつまずきを早期に把握でき、個別最適なサポートが可能になる点です。

授業中のミニテストや質問を活用することで、内容が十分に理解されているかを把握し、説明の仕方や教材を工夫します。形成的評価とは、学習成果だけでなく学びの過程も重視し、学びの質を高める目的で活用されます。

注目される背景

形成的評価が注目される背景には、生徒の思考力や表現力を重視する教育への転換があります。知識の量を測る従来の評価だけでは、生徒が主体的に学ぶ力を十分に育成できないからです。

新学習指導要領が目指す「主体的・対話的で深い学び」の実現には、学習過程を評価し、個々の学びを支援する必要があります。教育の目標が変化したことで、学習を改善するための形成的評価の重要性が増しています。

総括的評価との違い


総括的評価は学習の区切りで成果を判定し、成績評価にも使うものです。形成的評価は途中経過を見て指導を改善する点が異なります。総括的評価が最終的な判断に重点を置く一方で、形成的評価は学習者の理解度を把握しながら学びの質を高める役割を果たします。

総括的評価の特徴

総括的評価は、学習の区切りの段階で行われる評価です。テストやレポートなどで得た成果から、生徒の総合的な理解や実力を判定します。総括的評価は、成績の決定や進級・進学の判断材料として用いられることが多いでしょう。

学期末の期末試験が総括的評価に当たり、学習の結果を客観的に示す役割を果たします。総括的評価は学習全体の成果を把握することに適しており、教育現場で重要視され続けています。

評価のタイミングと目的の比較

評価のタイミングを比較すると、形成的評価は原則として毎回の授業で継続的に行われます。総括的評価は育成したい資質や能力が明確に表れる、特定の場面を選んで実施されるものです。

目的の違いも明確です。形成的評価は指導方法の改善と学習支援が主目的であり、生徒の理解不足を早期に発見して適切な手立てを講じることを重視しています。総括的評価は学習成果を数値化し、評定として記録することが主な役割です。

完全習得学習との違い


完全習得学習はブルームが提唱した理論で、全ての学習者が最終目標に到達できるよう設計されました。過程では授業を細かく区切り、理解度を繰り返し確認する仕組みが重視されます。

形成的評価は、この考えを実際の授業で支える手法で、生徒の理解度やつまずきを把握して補習的な指導をする点に特徴があります。

両者の違いは、完全習得学習が学習全体の枠組みで、形成的評価は枠組みを実現する具体的手段に位置付けられることです。

診断的評価との違い


診断的評価とは、学習を始める前に生徒の基礎的な知識や技能、興味や関心の傾向を把握するために行う評価です。結果をもとに、単元の計画や授業構成を調整し、一人ひとりに合った学習環境を整える役割を果たします。

一方で形成的評価とは、授業の途中で理解度を確認し、指導改善に直結させる取り組みです。診断的評価が学習開始前に行われるのに対し、形成的評価は学習の進行中に機能します。

形成的評価を活用するための具体例


形成的評価は授業中のさまざまな場面で活用できる効果的な手法です。小テストによる理解度確認、教員の観察や生徒への質問、自己評価や相互評価の実施、ICTツールを使ったリアルタイムの把握などが代表的な方法です。

小テストや確認問題による理解度チェック

小テストや確認問題は授業の節目や単元の区切りに実施することで、生徒の理解度をすぐ把握できます。授業開始時に前回の復習問題を出題したり、重要なポイントを説明した後に理解度を確認する短時間のクイズをしたりします。

単元修了時には、学習内容全体を振り返る確認テストを実施することも効果的です。

観察・面談・質問を通じた把握

日常的な観察や対話は、生徒の学習状況を深く理解するための重要な評価手法です。ペーパーテストでは測れない、思考過程や学習への取り組み姿勢を把握できます。授業中の発言内容や表情の変化を観察したり、個別面談で学習の問題点を聞き取ることが効果的です。

グループワークでの協働場面を観察し、コミュニケーション能力や問題解決力を評価できます。休み時間の何げない質問から、理解度の深さを確認できる場合もあります。

自己評価・相互評価の活用

生徒自身による評価活動は、学習状況を客観視し、仲間との相互作用を通じて新たな気づきが生まれるため有効です。学習の振り返りシートで理解度を5段階評価したり、グループ発表後に互いのプレゼンテーションについて意見交換をしたりすることが挙げられます。

作品制作では評価ルーブリックを共有し、同じ基準で作品を評価し合う取り組みも有効です。生徒は評価の視点を身に付け、学習者として成長していきます。

ICTツールを活用したリアルタイム評価

タブレットや学習管理システムを活用すると、授業中に生徒の理解度を即座に把握できます。オンラインクイズやアンケートで回答を集め、結果をグラフ化して共有することで、理解の偏りや誤解を授業内で修正可能です。

ICTツールを活用したリアルタイム評価は、授業改善や次の学習計画にも直結し、学習効果を高めることに役立ちます。

形成的評価の進め方


効果的な形成的評価を実施するには、体系的なアプローチが欠かせません。学習目標の明確化から始まり、評価方法の選定、フィードバック、授業改善まで計画的に進めることで教育効果を高めましょう。

学習目標と評価基準の明確化

曖昧な目的のまま評価活動を進めると、効果的な学習支援につながらず、生徒にとっても意味のない活動になってしまいます。具体的には「グループ活動での協働スキルを把握し、個別指導に生かす」といった、明確な目標を立てることが挙げられます。

評価結果をどのように活用するかも事前に決めておくことで、より意図的な指導改善が可能です。目的の明確化により評価活動の質が向上します。

評価方法と観点の設定

形成的評価の充実には、学習指導要領をもとに評価規準を作成し、各教科の特性を考慮した適切な評価方法を選ぶことが重要です。ペーパーテストのみに頼らず、口頭での質問や活動観察、作品提出など多面的に評価することで、生徒の多様な学びを捉えます。

多角的な評価は、生徒の成長や学習改善に結び付き、指導の質の向上にも役立ちます。評価方法と観点を工夫することで、形成的評価がより効果的に作用します。

即時性と具体性を重視したフィードバック

形成的評価では、評価後すぐに具体的な内容で生徒にフィードバックすることが重要です。時間がたつほどフィードバックの効果が低下し、抽象的な助言では生徒が改善点を理解できないためです。

例えば、発表直後に「声の大きさは良かったが、次は意見の根拠を3つ示してみよう」と具体的に伝えることが挙げられます。

通知表や面談といった機会を通じて、保護者と評価に関する情報を共有することも重要です。保護者が子どもの学習状況を把握し、家庭でもサポートできるように促せます。

評価結果を授業改善に反映するサイクル

評価は単なる点数や成績をつけるためのものではなく、生徒一人ひとりの学習を促すためのものです。評価結果は、生徒の学びを振り返る貴重な機会となり、指導の改善に生かせる情報です。

クラスの多くの生徒が特定の単元でつまずいていると分かれば、指導方法を見直したり、復習問題を増やしたりしましょう。サイクルを回すことで、「主体的・対話的で深い学び」の実現につながり、生徒の資質や能力を育めます。

形成的評価を行う際の注意点


形成的評価をする際は、評価の目的を明確にし、学習者に適切なフィードバックをすることが重要です。心理的負担や偏りを避け、教員間や保護者との情報共有も意識することで、評価の効果を最大化できます。

評価の目的を明確にする

学習面での評価は、学習の質を高め、指導を改善し、生徒の意欲向上を目的に行いたいところです。形成的評価は、これらの目的を達成する重要なプロセスとして位置付けられます。評価の目的が明確であれば、生徒も教員も評価を建設的に活用できるからです。

理解度に応じた指導改善が可能となり、生徒の学習意欲も高まります。評価は単なる点数ではなく、学びの成長を支える役割を果たします。

学習者の心理的負担を軽減する工夫

形成的評価をする際には、過度な点数化や頻繁な評価を避けることが重要です。代わりに、コメントや口頭での助言を中心にフィードバックをし、生徒に安心感を与えます。

活動単位で評価することで、生徒の緊張やストレスを軽減し、自然な学びの姿勢を促せます。形成的評価をする際は、学習意欲の向上や継続的な成長につなげるために配慮しましょう。

主観的評価の偏りを防ぐ方法

評価の偏りを防ぐためには、学習状況を観点別に細かく設定し、複数の評価者によるクロスチェックが効果的です。ルーブリックなど客観的な評価基準を活用することで、生徒のパフォーマンスを公平に評価できます。

仕組みを整えることで、形成的評価の信頼性が高まります。教員間の評価のばらつきを抑え、生徒は公正な評価を受けることが可能です。

関係者との情報共有と連携

形成的評価の効果を高めるためには、生徒や保護者、教員の間で評価結果を適切に共有することが不可欠です。学年会議やチームティーチングを活用し、情報を共有することで、授業改善や指導方法の見直しが効果的に行えます。

連携体制があることで生徒一人ひとりに対し、きめ細かな支援が可能となり、教育の質の向上につながります。

まとめ


形成的評価は、学習途中に生徒の理解度を見極め、指導を柔軟に改善する評価方法です。知識量だけでなく、思考力・表現力重視の教育において「主体的・対話的で深い学び」の実現を支えます。

小テスト、観察、自己評価、ICT活用などが例で、明確な目標設定、即時フィードバック、評価結果を次の授業に生かす継続的な取り組みが必要です。生徒の心理的負担軽減や評価の公平性も重要です。

日々の授業で形成的評価をする際は、本記事の内容をお役立てください。

 

CONTACT USお問い合わせ

「すらら」「すららドリル」に関する資料や、具体的な導⼊⽅法に関するご相談は、
下記のフォームよりお問い合わせください。

「すらら」「すららドリル」ご導⼊校の先⽣⽅は
こちらよりお問い合わせください。

閉じる