2025/09/30(火)

進路指導や担任として、学校推薦型選抜について生徒や保護者に説明する機会が多いのではないでしょうか。学校推薦型選抜の制度は複雑で、総合型選抜との違いや具体的な仕組みについて正確に理解することが必要です。
この記事では学校推薦型選抜の基本的な仕組みから種類、他の選抜方法との違い、メリット・デメリットを解説します。この記事を読むと学校推薦型選抜の全体像が把握でき、生徒や保護者への的確な指導ができるようになります。
大学推薦入試の現状・入試方式ごとの割合
文部科学省の「令和4年度大学入学者選抜実態調査」によると、学校推薦型選抜は重要な位置を占めています。大学全体での入試方式の割合は一般選抜が49.7%、総合型選抜が19.3%、学校推薦型選抜が31.0%です。
注目すべき点は、総合型選抜の割合が2020年度の13.4%から2022年度の19.3%に増加していることです。一方で、学校推薦型選抜は34.1%から31.0%へと若干減少したものの、依然として3割を超える高い水準を維持しています。(※1)
学校推薦型選抜の仕組みと種類

学校推薦型選抜は指定校制と公募制に大別され、それぞれ異なる仕組みとなっています。
学校推薦型選抜とは
学校推薦型選抜とは、学校長からの推薦書が出願に必須となる入試制度です。高校での学習成果や課外活動の実績を総合的に評価するためには、在籍校の証明が不可欠だからです。
評定平均値の基準達成、部活動やボランティア活動での顕著な成果、生徒会活動への参加など、出願要件を満たす必要があります。さらに、学力検査・小論文・面接・資格検定試験・大学入学共通テストのうち、最低1つは実施することになっています。
専願が原則となるため、学校推薦型選抜への出願は慎重な検討が必要です。
指定校制
指定校制は、大学が特定の高校に対して推薦枠を設定し、優秀な生徒を確保する制度です。大学にとって安定した入学者を獲得でき、高校にとっても生徒の進路保障につながる相互利益があります。
具体的な流れとして、まず9月頃に高校内で推薦希望調査を実施し、応募者を対象に校内選考を行います。選考では1年生から3年生1学期までの評定平均値、課外活動実績、生活態度などを総合評価し、推薦候補者を決定します。
ただし、推薦枠は通常1~3名程度と極めて限定的で、校内選考は激戦です。応募者が基準を満たさない場合は、「該当者なし」の判定もあり得ます。
公募制
公募制は出願条件を満たせば全国どの高校からも応募可能で、一般推薦と特別推薦に分かれます。
公募制一般推薦
公募制一般推薦は、出願条件を満たせば全国どの高校からも応募できるため、競争率が高くなりがちです。指定校制のような推薦枠の制限がなく、多くの受験生が同じ大学を目指すからです。
人気のある大学・学部では倍率が上昇し、指定校制と比べて合格の確率は低くなります。多くの大学では人物評価に加えて、大学入学共通テストや独自の学力試験を実施するのが特徴です。
国公立大学の学校推薦型選抜は、一部公立大学を除き、公募制一般推薦のみです。
公募制特別推薦選抜
公募制特別推薦選抜は、スポーツや文化活動で顕著な実績を持つ生徒が対象となる選抜方式です。大学は多様な才能を持つ学生を求めており、学業成績だけでは測れない能力を評価したいからです。
具体的には全国大会出場レベルの運動部実績、吹奏楽コンクール金賞受賞、美術展覧会入選など、明確な成果が求められます。
公募制特別推薦選抜は、学校推薦型選抜の中でも特技や活動歴が重視される選抜方式です。
国公立大学の場合、共通テストがある可能性も
国公立大学では、大学入学共通テストを課すケースが多く見られます。国公立大学は、学習指導要領の内容を幅広く習得しているかを確認したいからです。面接や小論文に加えて、共通テストの受験が必要な大学が多数存在します。
一方で、共通テストのみで選考を行い、面接や小論文を実施しない方式を採用している大学・学部もあります。この場合でも調査書などの出願書類の提出は必要です。
学校推薦型選抜の出願条件と評価基準

学校推薦型選抜では、評定平均値が最も重要な出願条件です。評定平均値は、高校3年間の学習成果を客観的に示す指標だからです。
評定平均値は1年生から3年生1学期までの全科目成績の平均で、小数点以下第2位を四捨入して算出します。多くの大学が「評定平均値4.2以上」といった具体的な基準を設定しているため、早い段階からの継続的な学習が必要です。
学校推薦型選抜と他の選抜方法との違い

学校推薦型選抜と他の入試方式(一般選抜・総合型選抜)との違いは、評価されるポイントと試験内容にあります。それぞれの違いを理解して、生徒に最適な入試方式を案内することが大切です。
一般選抜との違い
学校推薦型選抜と一般選抜は、高校3年間の総合的な取り組みが評価される点が違います。学校推薦型選抜では評定平均値が出願条件となり、調査書による総合評価が行われるからです。
学校推薦型選抜では、部活動実績、生徒会活動、ボランティア経験、各種資格取得などが重要な評価要素となります。一般選抜は、入学試験当日の学力検査結果が合否を左右する仕組みです。
総合型選抜との違い
学校推薦型選抜と総合型選抜は、高校からの推薦書が必要かどうかが異なります。学校推薦型選抜は学校長の推薦が必須条件ですが、総合型選抜は志願者が自分の意志で直接出願できるからです。
学校推薦型選抜は書類審査・小論文・面接を中心とした標準的な手法が多いのに対し、総合型選抜は大学の求める人物像にもとづく独自色の強い選考が特徴的といえます。
学校推薦型選抜のスケジュールと対策

学校推薦型選抜は、計画的なスケジュール管理と早期からの対策が重要です。
出願から合格発表までのスケジュール
学校推薦型選抜のスケジュールは以下のとおりです。一般選抜より早期に実施することで、多様な入学者を確保したいという大学側の意図があります。
| 指定校制 | 公募制 | |
|---|---|---|
| 校内選考 | 7~10月 (8~10月に願書配布) | |
| 出願 | 11月~ | 11月~ |
| 選考 | 11~12月 | 11~12月 |
| 合格発表 | 12月~ | 12月~ |
共通テストが課される場合は1月の共通テスト後に最終選考となるため、合格発表は2月となることもあり、早期の準備が重要です。(※2)
校内での選考方法
校内での選考方法は、評定平均値と総合的な活動実績による多角的評価が基本です。限られた推薦枠を公正かつ客観的に配分する必要があるからです。
具体的には学習成績(評定平均値)、部活動実績、生徒会活動、ボランティア経験、各種資格取得状況などを総合的に判定します。多くの高校では進路指導部や学年主任、担任が協議して推薦候補者を決定する体制を取っています。
学校推薦型選抜では併願検討も大切
学校推薦型選抜では、不合格の可能性も考慮した計画が重要です。学校推薦型選抜は基本的に専願制のため、複数校への同時出願ができないからです。
ただし、一部の私立大学では併願を認めているケースもあるため、志望校の受験要項を詳細に確認することが必要です。不合格となった場合は、2次募集への出願や一般選抜での同一校への再挑戦も可能になります。
他大学の一般選抜との併用も認められているため、受験機会を最大限に生かす出願計画を立てることが合格への近道となるでしょう。
学校推薦型選抜のメリット

学校推薦型選抜には、日頃の学習や活動が評価されたり、合格の可能性が高まったりするなど、生徒にとって多くのメリットがあります。それぞれのメリットについて見ていきましょう。
学校の評定を評価に反映できる
学校推薦型選抜では、日々の学習や活動の成果を入試に生かせます。一般選抜のように試験当日の点数だけで判断されるのとは異なり、3年間の成績や学内での取り組みが重視されます。
体調不良や緊張で実力を出せない場合でも、調査書や推薦書を通じて努力が正当に評価されるのは大きなメリットです。生徒の継続的な努力が合否に反映されるため、安心して学習に取り組めます。
合格しやすい
学校推薦型選抜の中でも特に指定校制は、合格の可能性が高いのが特徴です。指定校制は学校が推薦枠を持つため、推薦されれば専願としてほぼ合格が期待できます。第一志望校の枠がある場合は、積極的に狙うことが大切です。
ただし、専願であるため、合格後の変更はできません。生徒の学習計画や進路指導にも有利に活用できる制度です。
受験の機会が増える
志望校への挑戦回数を複数回確保できる点がメリットです。学校推薦型選抜と一般選抜の両方を活用することで、同一大学に対する合格の可能性を高められます。
複数の入試制度を効果的に組み合わせることで、生徒の進路の選択肢を広げることができるでしょう。
学校推薦型選抜のデメリット

学校推薦型選抜には、校内での競争が激しかったり、合格後に辞退できなかったりといったデメリットもあります。生徒や保護者には、メリットだけでなくデメリットについても十分に理解してもらうことが大切です。
校内選考の競争が激しい
学校推薦型選抜の指定校推薦は合格率が高い一方で、校内選考で推薦枠を勝ち取る必要があります。高校ごとに推薦枠の大学や学部は異なり、希望する学校に枠があるとは限りません。
仮に枠があっても、1~4人程度の狭き門で、人気の大学や学部では応募者が集中します。生徒間での競争倍率は非常に高く、事前の準備や計画が欠かせません。
専願で合格したら辞退できない
学校推薦型選抜では、多くの大学が専願を条件としています。専願で合格すると、原則として入学を辞退できません。他大学に興味を持っても受験の機会は失われます。
ただし、一部の大学では併願が認められる場合もあります。出願前に専願か併願かを確認し、生徒に適切なアドバイスをすることが重要です。
不合格後の一般選抜対策は時間不足になりやすい
学校推薦型選抜には、もし不合格になった場合、十分な学習時間を確保することが困難になるリスクがあります。12月の合格発表から2~3月の一般選抜試験まで、2~3カ月程度しか準備期間がないからです。
不合格通知を受けてから一般選抜対策を本格化させても、学力試験に必要な時間を割くことが難しい状況です。学校推薦型選抜を検討する生徒には、並行して一般選抜の準備も継続するよう指導することが重要です。
学校推薦型選抜は早めの対策がカギ

学校推薦型選抜で合格を勝ち取るには、早い段階からの対策が必要です。特に重要となる3つの対策について紹介します。
対策①面接対策
学校推薦型選抜の面接対策では、1対1や1対複数、集団面接の形式があります。学部によっては、外国語学部で英語面接が行われる場合もあり、英語で質問を受けて英語で答える力が必要です。
面接対策としては、志望理由や高校での取り組みを明確に話せるように練習し、不安や緊張を和らげる訓練も重要です。相手に伝わるコミュニケーション能力を養うことで、より良い印象を与えることができます。
対策②小論文対策
学校推薦型選抜の小論文対策では、問いに対して明確に自分の意見を述べる力が必要です。理由や根拠を整理し、論理的な構成で説明できなければなりません。
テーマに関する基礎知識も欠かせないため、関連する知識の蓄積や文章の練習を重ねることが重要です。説得力のある文章を書くことで、合格に近づけます。
対策③1年生から勉強に取り組み評定平均を高めること
学校推薦型選抜では、高校の成績が出願条件に含まれることがあります。そのため、1年生から定期テストに真剣に取り組み、評定平均を意識して高めることが重要です。
具体的には、各教科で目標点を設定し、計画的に学習を進めることが効果的です。日々の努力が、将来の出願資格や推薦選考での評価につながります。
まとめ

学校推薦型選抜は、全入試の約3割を占める、校長推薦が必須の入試方式です。評定平均値や活動実績が重視され、指定校制と公募制に大別されます。
日頃の学習成果が評価されるメリットがある一方、校内競争が激しく専願が原則というデメリットがあります。合格には、高校1年生からの評定平均値向上と、面接・小論文の早期対策がポイントです。

