2025/10/17(金)

日本人の約40人に1人は色弱の悩みを抱えています。ユニバーサルカラーという単語は知っているものの、色弱の生徒に対してどのような配慮が必要なのかよく分からないと悩んでいる教職員の方もいるのではないでしょうか。
本記事では、ユニバーサルカラーについての知識や色弱者が困っていることを解説します。併せて、配慮のポイントや事例も紹介しますので、教育に携わる方はぜひご一読ください。
カラーユニバーサルデザイン・ユニバーサルカラーとは

カラーユニバーサルデザイン・ユニバーサルカラーとは、年齢や能力に関わらず、使いやすい製品や環境デザインを実現する色を指します。
人それぞれ味覚や聴覚が異なるように、色の感じ方も違います。色弱の場合、視力には問題がなく細かいものまで見えますが、赤色と緑色、黄色と黄緑色などの色の見分けがつきにくるといった特徴があります。一部の色の組み合わせが一般的な色覚者と色の感じ方が異なります。
日本人の約40人に1人が色弱の悩みを抱えています。ときには、色覚の差が情報の差になるケースもあるため、色覚の違いによって受け取る情報の差が生じないように、色使いの方法が配慮されたユニバーサルカラーやカラーユニバーサルデザインがあらゆる場面で活用されています。
カラーユニバーサルデザインはなぜ必要?知っておきたい色覚の違い
色は誰でも同じように見えるわけではありません。自分が区別しやすい色と思い使用している色が、他人にとっては分かりにくい場合もあります。
このように、見る人によって受け取る情報に差が出てしまい、理解する情報にまで差が生じるのを防ぐための手段として、カラーユニバーサルデザインは必要とされています。カラーユニバーサルデザインは、色弱の方の障壁を取り除き、快適な生活を送るためのサポート役といえるでしょう。
日本の色弱者は約40人に1人の割合
男女別では、男性の約5%(20人あたり1人)、女性の約0.2%(500人あたり1人)の割合となっており、色弱は男性に多い傾向があるようです。
色弱は日常生活ではほとんど不自由がなく外見からは分からないため、保護者でも気付かないことがほとんどです。そのため、色弱者に対して教育者が十分な配慮や指導を行うことは困難とされています。
色覚のタイプは5つに分類される
色弱者の中でも見え方は人それぞれです。そのため、色覚のタイプを次の5つに分類しています。
またCUDO(NPO法人カラーユニバーサルデザイン機構)は、十分に配慮した呼び方を提唱し、一般色覚者以外の色覚タイプの人を色弱者と称しました。
| CUDOの新呼称 | 従来の呼称 | 特徴 |
|---|---|---|
| 一般色覚者 C型 | 正常色覚 | – |
| 色弱者 | P型(強・弱) 第1 | 色盲、色弱、色覚障がい、色覚異常、赤色を感じにくい |
| D型(強・弱) 第2 | 緑色を感じにくい | |
| T型 第3 | 青色を感じにくい | |
| A型 全色盲 | – |
色弱の子どもはどんな不便を感じているのか

色弱の子どもは一般色覚者と見え方が異なるため、学校生活において本人だけにしか分からない不便を感じていることが多いと考えられます。ここでは、色弱の子どもが実際にどのような場面で不便を感じているのか解説していきます。
赤いチョークで書かれた文字が見づらい
P型のタイプの色弱者は赤色を感じにくいため、赤いチョークで書かれた文字が見えにくい傾向があります。授業では、注意を促したり強調したりする際に赤いチョークを使う教師も多いのではないでしょうか。しかし、P型タイプの色弱者には赤色に色分けされていることが伝わらないため、指示が分からずに不便を感じているでしょう。
晴れなのか曇りなのか天気が判断しづらい
色弱者は色の判断が難しいため、天気の判断がしづらい傾向にあります。空が青色のときは晴れ、グレーのときは曇り、さらに濃いグレーに変わると雨が降る可能性が高くなります。このように一般色覚者は空の色を見ることで、天気を判断できます。しかし色弱者には判断が難しく、不便さを日常的に感じている子どもも少なくないようです。
色分けされた地図などが見づらい
配色によっては、資料や地図などの情報が分からない場合があります。T型タイプの色弱者は青色が分かりにくいため、地図上の陸地と海面の差が理解しにくいでしょう。他のタイプでは、祝日を赤で示したカレンダーから祝日を見つけ出すことが難しかったり、似たような色を使用したグラフが分かりにくかったりして不便を感じることが多いようです。
一般色覚者であれば色分けされているのがはっきりと分かることであっても、色弱者にとっては違いを感じにくく理解するまで時間が必要でしょう。
色名で指示されてもわからない
色弱者は「赤色の本を取って」と指示されても、それが分からない場合があります。「赤色」といわれても、色弱者からは別の色に見えているためです。
本の場合は、色だけではなくタイトルや著者名、表紙の絵を伝えることで解決できます。このように、日頃から色に加えて色以外の他の情報を伝えることが大切です。色弱者にとっては、自身が見分けにくい色があること自体の認識も重要であるため、色は外さずにプラスαで情報を伝えるようにしましょう。
ユニバーサルカラーを意識した色使いのポイント3つ

ユニバーサルカラーを意識した色使いをすることで、できるだけ多くの人に正確な情報が伝わりやすくなります。ここからは、色使いの3つのポイントを解説します。
① 色覚にかかわらず見分けやすい配色を使う
一例を挙げると彩度が高い色と低い色、明度が明るい色と暗い色を組み合わせることが見やすくなるポイントです。また、背景の色を付けることで文字の色が引き立ち、より見やすくなるでしょう。
ユニバーサルカラーは色弱者のみに向けてデザインした特殊なものではないため、一般色覚者からも見やすいものです。ユニバーサルカラーは全ての人に対して価値のあるものといえるでしょう。
② 色以外の情報を使う
強調したい文字に色を付けても色弱者には伝わりにくいため、次のような方法を試すことも効果的です。
- 文字の形を変える
- 文字に縁取りを付ける
- 文字や線を太くする
- ハッチング模様を付ける
文字に縁取りを付けたり書体を変えたりと、重要な部分を強調させることも1つの手です。また、太字にするのも効果的です。
地図やグラフなどは、斜線やドット柄を用いると変化を感じやすく、全ての人に伝わりやすくなるでしょう。
③ 色名を表示する
シンプルな方法ですが、用紙の隅などに、ピンクの用紙は「ピンク」水色の用紙は「みずいろ」など、用紙の色名を表示することも効果的です。
教育現場で進むカラーユニバーサルデザインの使用

教育現場では子どもたちが快適な学校生活を送れるように、カラーユニバーサルデザインが使用されています。色覚に配慮したチョークを使用したり、カラーユニバーサルデザインに対応した教科書を導入しています。ここからは具体的な使用方法を解説します。
色覚に配慮したチョーク
通常使用されているチョークは色弱者にとって色の区別が付きにくいことがあるため、色覚に配慮したチョークが開発されました。色弱者でも、白・黄・緑・赤・青の色の区別がついて見やすく、カラーバリエーションが豊富な点が特徴です。
板書は子どもたちにとって、授業内容を理解し考えるためにとても大切です。誰が見ても分かりやすい板書作成のために、色覚に配慮したチョークが欠かせないといえるでしょう。
カラーユニバーサルデザインに対応した教科書
色の見え方は人それぞれ異なります。教科書を出版している各社は、色の認識が難しいことを理由に授業の理解不足につながるのを防ぐためにも、カラーユニバーサルデザインに対応した教科書づくりに取り組んでいます。
主に以下のような工夫を取り入れています。
- 見やすい色使い
- 学びやすいレイアウト
- 読みやすいフォント
色弱の生徒はもちろん、全ての生徒にとって見やすく分かりやすい教科書づくりをしています。
教室や教材制作で必要な色使いの配慮

子どもたちがスムーズな学校生活を送るためには、学校内の環境づくりも大切です。教室の掲示物や教材制作を行う上でも、色使いの配慮が必要です。ここからは、具体的な配慮の方法を解説していきます。
板書は白や黄色のチョークを主に使用する
色弱者は赤のチョークが見にくいため、黒板に文字を書く際には白と黄色のチョークを主に使用し、字は大きく線は太めに書くと区別しやすくなります。
また、赤・青・緑・茶色などのチョークでは文字を書かないようにし、文字を囲んだり線を引いたりする際に活用しましょう。それに加えて、色以外の情報を付け足したり、境界を明確にしたりする際に使用することで、全ての子どもが理解しやすい板書作成ができるでしょう。
採点には太めの朱色を使用する
正解と誤りを理解して次の学習につなげていくためにも、採点は子ども・教師の両者にとって大切なことです。子どもに正解と誤りをしっかりと伝えるためにも、採点には判断しやすい朱色を使用しましょう。
また、細字の赤ペンやボールペンは避けて、太めのペンを選ぶことが大切です。採点ペンやダーマトグラフ、色鉛筆などがおすすめです。
グラフでは明度の違いやパターンを使用する
淡い色をメインで作成してしまうと色の区別がつきにくいため、理解するまでに時間を要してしまう可能性があります。そのため、明度を変えたり線を太くしたりしてはっきりとしたグラフづくりを心掛けましょう。
凡例をグラフ内に入れることも、分かりやすいグラフづくりのポイントです。
まとめ
色弱者が快適な学校生活を送るために必要なユニバーサルカラー。まずは人それぞれ見え方が違うことへの理解が大切です。その上で、ユニバーサルカラーを取り入れた教材を使用したり黒板作成をしたりして、子どもたちの学校生活をサポートすることが重要です。
色弱者の困りごとや学校でできることを十分理解して、これからの教育に役立てていきましょう。

