2025/12/11(木)

高校生の就活には、大学生とは異なる独自のルールやスケジュールがあります。「1人1社制」や「学校を通した応募」など、特有の制度に沿った指導が求められるためです。
この記事では高校就活の全体像から実践的な指導ポイントまで解説します。この記事を読めば、生徒を内定に導く具体的なサポート方法が分かります。正しい知識を持ち、段階的な指導を実践することが大切です。
高校生の就活の現状と注目が高まる背景
厚生労働省によれば、令和6年9月末時点の高卒向け求人数は約48万2千人で、前年比3.7%増となりました。就職率はほぼ99%を維持し、求職者のほとんどが内定を獲得している状況です。
背景には人手不足や景気回復があり、企業は採用コストを抑えつつ若い人材を確保できる高卒採用に魅力を感じています。特にサービス業や情報通信分野では、これまで消極的だった高卒採用への姿勢が変化しつつあります。生徒にとって選択肢が広がるチャンスといえるでしょう。(※1)
高校生の就活スケジュール

高校の就活は4月から段階的に進行し、9月に選考が本格化します。以下でスケジュールを確認しましょう。
4月〜6月|就活準備として自己分析と企業研究を進める
高校生は地元での就職が中心となるため、まず地域にどのような企業が存在するのか把握することから始まります。
大学生と異なり、高校就活では「1人1社制」により同時に複数社へ応募できません。そのため選考を受けながら志望先を絞る方法は通用しません。
自分の強みや興味関心を明確にし、それに合う業種・職種を事前に研究しておく必要があります。7月の求人公開時にスムーズな判断ができるよう、生徒自身の適性と進路の方向性を固めておくことが求められます。
7月上旬|企業の求人票を確認して応募先の候補を絞る
7月1日に高卒求人が一斉に公開されます。生徒には求人票を十分に確認させ、志望企業を選定させましょう。
求人には「公開求人」と「指定校求人」の2種類があります。公開求人はどの高校からも応募可能ですが、指定校求人は学校からの推薦が必要です。
地元の優良企業が指定校求人を出している場合、自校が対象校に含まれるか確認する必要があります。この違いを生徒に説明し、応募可能な求人を把握させましょう。
7月中旬〜8月|職場見学を行い応募先を決める
この時期は求人票だけでは分からない、企業の雰囲気や職場環境を直接確認できる貴重な機会です。全国の高校生が一斉に職場見学へ応募するため、生徒には日々情報をチェックさせ、希望企業の見学枠を逃さないよう指導しましょう。
人気企業の見学枠はすぐに埋まってしまうケースも少なくありません。また8月頃には指定校求人の校内選考も実施されます。他の生徒との差別化を図るため、面接の練習や応募書類の添削を進めましょう。
9月初旬|応募書類を提出して面接対策を仕上げる
9月初旬は校内選考が完了し、応募先の企業が決まる時期です。書類提出後は入社試験に向けた最終調整に集中させましょう。書類を送ったことで安心し、気が緩む生徒も出てきます。面接開始までには一定の期間があるため、この期間を有効活用することが大切です。
例えば自己PRや志望動機を何度も声に出して練習させ、スムーズに話せるまで反復しましょう。繰り返し練習することで本番での緊張が和らぎ、面接官に好印象を与えられます。
9月中旬|就職試験が本格的に始まる
9月中旬は企業での面接が実施され、企業によっては筆記試験も行われます。生徒には各企業の選考内容に応じた対策を指導しましょう。
面接では志望動機や自己PRを明確に伝えられるよう、最終確認を行うことが大切です。選考結果は通常1週間程度で学校へ通知されます。生徒が結果を待つ間も、精神的なサポートを忘れないようにしましょう。
10月以降|2次募集に合わせて就活を継続する
この時期に内定がなくても、生徒は落胆する必要はありません。2次募集というと人気のない企業ばかりだと思われがちですが、実際はそうではありません。優良企業の中には、あえて2次募集で本当に自社で働きたい意欲の高い人材を見極めようとするケースもあります。
例えば、成長企業が事業拡大に伴い追加採用を行う場合や、内定辞退者の補充のために求人を出す場合などです。生徒には前向きな気持ちで求人情報をチェックさせ、新たなチャンスを逃さないよう励ましましょう。
高校生の就活で押さえておきたい独自ルール

高校の就活には大学生とは異なる特有のルールがあります。仕組みを理解しておくことで、適切な進路指導につながるでしょう。
求人票の公開日と応募開始日が決められている
高校の就活では求人票の公開日と応募開始日が、全国一律で定められています。これは学業を最優先とし、就職活動が授業や学校生活の妨げにならないための配慮です。社会経験の少ない高校生が公平に就職活動を行えるよう、スタートラインをそろえる目的もあります。
例えば7月1日より前の求人票の公開や、9月5日までに企業に応募することは原則としてできません。この統一ルールにより、生徒全員が同じ条件で準備や応募ができる仕組みになっています。(※2)
就職先は学校を通して探す
高校の就活の中心は「学校あっせん」という仕組みです。学校あっせんは企業と生徒の間に学校が仲介役として入り、円滑な就職活動をサポートする制度を指します。
企業が学校へ求人票を送付すると、進路指導の担当者が内容を確認した上で生徒に紹介する流れです。この仕組みにより、社会経験の少ない高校生でも安心して就職活動に取り組めるでしょう。教員は企業との窓口となり、生徒が適切な企業を選べるようサポートする役割を担う必要があります。
応募は1人1社の原則に従って進める
1人1社制は企業がハローワーク経由で学校へ求人票を提出し、生徒が教員や保護者と相談の上で最初の応募先を1社に絞る制度です。もし内定を得られなかった場合、初めて他の企業へ応募できるようになります。
一定期間が経過すると、複数社への同時応募も認められます。この制度により生徒は慎重に企業を選ぶ必要があるため、教員による丁寧な進路指導が不可欠です。
企業から高校生へ直接連絡することは禁止されている
企業が生徒へ直接連絡を取れないのは、生徒が学業に専念できる環境を守り、公平な選考機会を確保するためです。連絡は学校を経由して行われ、教員が適切に管理します。
選考日程の連絡や合否通知も、企業から学校へ伝えられた後に生徒へ共有されます。また企業が生徒個人のSNSアカウントへメッセージを送ったり、直接電話をかけたりする行為も認められていません。このルールにより、生徒は安心して就職活動に取り組めるでしょう。
書類選考だけで合否は判断されない
高校卒の採用では必ず面接を実施しなければなりません。生徒1人ひとりの能力や適性を公正に見極めるためのルールです。書類だけでは分からない人柄やコミュニケーション能力、意欲などを直接確認する必要があります。
多くの企業では面接に加えて適性検査や一般常識テスト、作文などを組み合わせた選考を行っています。生徒には面接が必須であることを伝え、十分な準備時間を確保させましょう。書類選考対策だけでなく、面接対策にも力を入れることが内定獲得への近道です。
合否基準にしてはいけない項目がある
高校卒の採用では公正な選考をするため、特定の項目を合否判断に用いることが禁止されています。本人に責任のない事項として、本籍や出生地、家族の職業や収入、住宅状況、生活環境などを確認してはいけません。
本来自由な事項として、宗教や支持政党、人生観、尊敬する人物、思想、社会運動への参加、愛読書なども質問できないルールです。例えば面接で「ご家族は何をされていますか」「どの政党を支持していますか」といった質問は不適切です。
選考方法においても、身元調査の実施や本人の適性に関係ない応募書類の使用、必要のない健康診断などは認められていません。教員はこれらの禁止事項を理解し、企業が適切な選考を行っているか必要に応じて確認しましょう。
高校生が内定獲得に近づくためのポイント

生徒を内定へ導くためには、以下の3つを指導しましょう。
自己分析をしっかり行う
自分自身を深く理解することで、進むべき方向性や企業にアピールすべき強みが明確になります。スケジュールでいえば、4月~6月頃までの就活準備期間が該当します。丁寧な自己分析を経て作成された自己PRや志望動機は、表面的な内容と比べて格段に説得力が増すでしょう。
「人と話すのが好き」という強みも、自己分析を通じて「初対面の相手とも打ち解けられるコミュニケーション能力」に変えられます。部活動や学校行事での経験を振り返ることで、自分でも気付かなかった長所を発見できるでしょう。
さらに自己理解を深めることは、入社後のミスマッチ防止にもつながります。生徒が自分に合った企業で長く働けるよう、自己分析は就活の土台と位置付けて指導しましょう。
資格やスキルを取得してアピール力を高める
資格取得は自分の強みを客観的に証明できる有効な手段です。点数や級によってスキルの習熟度を明確に示せるため、企業側も評価しやすくなります。就活で資格を生かしたい場合は、志望する業界や企業が求めるスキルに関連したものをすすめましょう。
高校生が就活で活用できる代表的な資格には、英検、漢検、TOEIC、日商簿記、ITパスポート、基本情報技術者試験などがあります。志望業界に直結する資格が最も効果的ですが、それ以外の資格でもアピール材料になり得ます。
最終的に他の業界へ進むとしても、高校生のうちに資格を取得した実績は評価される対象です。目標に向けて計画的に努力できる人物だと判断され、印象が良くなります。生徒には早めに資格取得を勧め、計画的な学習をサポートしましょう。
初期段階から候補を絞り込みすぎない
特定の業界や企業だけに注目すると視野が狭くなり、生徒の可能性を制限してしまいます。初めての就職活動では、求人票の情報だけで自分に合う企業を判断するのは困難といえます。そのため、最初は複数の業界や企業をピックアップし、夏休みでの職場見学を通じて徐々に候補を絞っていく方法が効果的です。
製造業志望の生徒でも、サービス業や情報通信業などを幅広く検討させることで、思いがけない適性が見つかる可能性があります。多くの企業を知っておくことで選択肢が広がり、内定を獲得できる確率も高まります。
仮に9月の選考で不合格となった場合でも、すぐに他の業界へ切り替えられ、スムーズに次の準備へ移行できるでしょう。
まとめ

高校の就活は大学生とは異なる、独自のルールとスケジュールに沿って進みます。1人1社制や学校あっせん、三者間ルールなど特有の制度を理解した上で、生徒をサポートすることが重要です。
4月から自己分析を開始し、7月の求人公開、夏休みでの職場見学を経て、9月に本格的な選考が始まります。教員には各段階で的確な指導が求められます。生徒1人ひとりに寄り添った丁寧なサポートが、内定獲得への近道となるでしょう。

