2025/12/23(火)

探究型入試(以下、探究入試)は、生徒の主体的な学びを評価する新しい入試形態として注目を集めています。特に総合型選抜では、探究学習の成果が合否を左右する重要な要素です。
この記事では探究入試の基本的な仕組みと、導入している大学の事例や効果的な指導方法を紹介します。この記事を読むと探究入試の全体像が理解でき、生徒一人ひとりに合わせた適切な指導ができるようになります。
探究学習の基本

探究入試を理解するには、まず探究学習の基本を押さえましょう。以下では探究学習の定義と進め方を解説します。
探究学習とは
探究学習は生徒自身が疑問を持ち、答えを探す過程で必要な力を身に付ける学びです。予測困難な時代を生きる生徒には、知識の暗記だけでなく自ら考え行動する力が求められます。
文部科学省はグローバル化やAI技術の発展が加速する社会において、探究的な視点で物事を捉える力の重要性を示しています。生徒は課題を発見し情報を集めて分析し、解決策を導き出す一連のプロセスを通じて学んでいきます。
例えば地域の環境問題をテーマに選んだ生徒は現地調査やインタビューを行い、データをもとに改善案を提案します。従来の授業で得た知識を実社会で生かし、思考力や表現力を育てる点が探究学習の特徴です。
変化の激しい時代において、探究学習は生徒の「生きる力」を育む重要な学習形態といえるでしょう。
探究学習の進め方
探究学習は4つの段階を進めることで、体系的な学びができます。第1に「課題設定」では、生徒が自分の興味関心から問いを立てます。第2の「情報収集」は、文献調査やインタビュー、実験、現地調査などで必要なデータを集める段階です。
第3の「整理・分析」では、収集した情報を吟味し、考察に必要な形に整えます。最後の「まとめ・表現」では、プレゼンテーションやレポートを通じて学びの成果を発信します。生徒は思考力や表現力を段階的に高めていけるでしょう。
探究入試とは

探究入試の位置付けと評価される内容を理解しましょう。ここでは総合型選抜との関係性と求められる評価基準を解説します。
総合型選抜との関係
探究入試は総合型選抜の一形態として、探究学習の成果を重視する入試です。従来の学力試験だけでは測れない、生徒の主体性や思考力を評価する必要性が高まっています。「探究評価型入試」や「探究成果活用入試」といった名称で、導入する大学は年々増加しています。
実施方法は大学によってさまざまです。探究活動をまとめたレポートの提出を求める大学、面接の代わりに探究成果のプレゼンテーションを課す大学もあります。さらに探究コンテストでの入賞実績を評価し、1次選考を免除する大学も存在します。
探究入試で求められる主な評価内容
探究入試では、大学での学びに対する主体性が重視されます。探究活動を通じて、生徒が自ら学ぶ姿勢を持っているかを見極めるためです。
具体的な評価方法は出願時に探究学習報告書を提出し、試験当日にプレゼンテーションと口頭試問を実施するケースが一般的です。調査書や事前課題も含めた書類審査と合わせて総合的に判定されます。
大学側はテーマへの関心の深さ、課題発見力、調査の粘り強さ、仮説の独創性など生徒の個性や主体性を多角的に評価しています。
今、探究入試が注目される理由

以下では入試改革で求められる学びの変化と、実際の活用状況を確認していきましょう。
大学入試改革で求められる学びの転換
知識偏重から思考力重視へと評価軸が変わっています。大学教育に必要な能力が単なる知識の記憶だけでなく、知識を活用する力へと広がったからです。
従来の入試は主に知識や技能の習得度を見るものでした。現在の大学入学共通テストでは、日常的な場面を題材に、情報を読み解き自分の考えを論理的に述べる力が問われています。
各大学の個別試験では、知識や思考力に加えて主体的に学ぶ姿勢も評価の対象です。例えば探究活動での問題発見力や粘り強く調査する態度などが、多面的に判定されるようになりました。
大学入試は実社会で生きる力を測る仕組みへと変化しています。
大学入試で探究学習を利用した人の割合
総合型選抜での活用率は非常に高い結果が出ています。旺文社の調査によると、総合型選抜で探究学習の成果を利用した受験生は43.4%に上りました。
この数字は一般選抜と比較すると3倍以上の開きがあり、総合型選抜と探究学習の親和性の高さを示しています。約半数近くの受験生が探究活動の実績を入試で生かしている実態は、入試で探究学習が重要な位置を占めているといえるでしょう。(※1)
探究学習が大学入試で評価される理由

探究学習が大学入試で評価される理由は以下の3つです。
- 探究学習が進学意欲・志望理由につながる
- 探究学習の成果が総合型選抜で活かせる
- 大学が探究学習で得られる力を評価している
探究学習が進学意欲・志望理由につながる
自分の関心がある分野を明確にすると、学びの目的が具体化します。探究活動を通じて興味のあるテーマを深掘りすると、大学で何を学びたいかが見えてくるからです。
「この大学に行きたい」と考える生徒と「この大学の授業や研究室で学びを続けたい」と目標を持つ生徒では、学習意欲に差が生まれます。
後者のように目標が具体的な生徒は、志望理由が明確なため入試対策も効率的に進められるでしょう。探究学習で得た問題意識が、進路選択の軸となり受験への強い動機付けになります。
探究学習の成果が総合型選抜で活かせる
提出書類の作成において、探究活動の経験は大きな強みです。多くの大学が求める志望理由書や活動報告書に、探究学習で得た学びを直接反映できるからです。
志望理由書では、大学で研究したいテーマや必要な学問分野、4年間の学習計画を記します。探究活動を深めるほど大学で学ぶ必然性が明確になるため、説得力のある志望理由を書きやすくなるでしょう。
活動報告書には、3年間の学内外での活動や役割を具体的に記入します。部活動や委員会活動だけでなく、探究テーマを深めるために行った調査や体験の記載も可能です。地域への聞き取り調査や企業訪問、フィールドワークなどの実践的な活動が評価の対象です。
探究学習を軸とした活動実績が、総合型選抜でアピールする材料になります。
大学が探究学習で得られる力を評価している
大学が探究学習を評価しているのは、探究入試で求める学生像と合致するためです。探究学習を通じて培われる「主体的に課題を発見し論理的に考え表現できる力」が、大学教育や研究活動の基盤になるからです。
北海道大学では一般選抜で調査書の主体性評価を合否に反映しています。総合型選抜に限らず、幅広い入試方式で探究学習によって培われる能力が必要です。
変化が激しい時代に対応できるのは、知識を使いこなして判断し、他者と連携できる学生です。探究入試はその力を総合的に測る制度といえるでしょう。
探究入試を導入している大学の具体例

探究入試を導入している、4つの大学の具体例を以下で見ていきましょう。最新の実施学部や詳細は公式サイトの募集要項で確認してください。(2025年12月現在)
1.関西学院大学
関西学院大学では「探究評価型入学試験」を実施しています。文学部や法学部、社会学部、総合政策学部など文系10学部に加え、理学部や工学部など全14学部で若干名を募集しています。
この入試は高校での総合的な学習や探究活動を通じて身に付けた、課題発見力や表現力を多面的に評価する点が特徴です。1次審査では探究の成果物を提出し、2次審査では面接やプレゼンテーションにより理解の深さや思考の柔軟さを確認します。(※2)
2.桜美林大学
桜美林大学では、2021年度から独自の「探究入試Spiral」を実施しています。この制度は、高校内外でのコンテストや発表会などに参加した経験があれば応募でき、受賞歴は必要ありません。
探究活動に一生懸命に取り組んできた生徒には挑戦しやすい入試です。選考では高校での探究成果や面接、プレゼンテーションを通じて、課題発見力や創造的な思考を多角的に評価します。リベラルアーツ学群など複数学群で実施されています。(※3)
3.福井県立大学
福井県立大学では、特定分野への強い関心と将来その分野で活躍したい意欲を持つ受験生を選ぶ入試を実施しています。高校などでの研究活動を通じて培った主体性や探究心を評価することが狙いです。
対象となるのは、探究学習や部活動、自由研究などで取り組んだ生物・化学・数学・情報など自然科学系の課題研究で、学校内の探究成果も評価対象です。総合型選抜「探究力発掘」などを通じて、探究型の学びに適性のある学生を受け入れています。(※4)
4.関東学院大学
関東学院大学の総合型選抜には、探究入試にあたる「探究評価型」を含む5つの方式があります。探究評価型のほかには、教科書レベルの出題による「基礎学力評価型」、小論文・プレゼンテーションに取り組む「課題型」などです。
また資格・検定を評価する「資格型」、自治体や企業等での実績を見る「社会活動評価型」を用意しています。生徒一人ひとりの高校での探究活動や地域活動など、さまざまな「頑張り方」を評価できる仕組みです。(※5)
探究入試に向けて高校で取り組むべき指導方法とは

探究入試に向けて、高校で取り組むべき指導方法には以下が挙げられます。
- 探究学習の質を高める
- 探究入試に向く生徒を見極める
探究学習の質を高める
探究学習の質を高めるには、生徒に身近な「なぜ?」を発見させる指導が欠かせません。部活動やボランティア、総合的な探究の時間など日常の活動から課題を見つけさせるのが効果的です。
例えば地元の高齢者の孤立問題に気づき、解決策を探るテーマを選ばせると心で問題を捉える力が育ちます。この習慣が探究入試の成果物作成に直結し、大学側が求める深い洞察力を養います。
探究入試に向く生徒を見極める
探究入試に向く生徒とは高校時代から特定のテーマに強い関心を持ち、大学でさらに深めたいタイプです。ネット検索だけで満足せず、自分で試行錯誤を好む生徒が適しています。
例えば地元産業の課題を独自に調べ上げ、実験まで進めた生徒は、面接で説得力のある志望理由を示せます。こうした熱中型の生徒には、探究入試の強みを生かした指導が効果的です。
まとめ

探究入試は、生徒の主体性や課題発見力を評価する新しい入試形態です。総合型選抜を中心に多くの大学が導入しており、探究学習の成果が合否を大きく左右します。
成功するポイントは探究活動の質にあります。教員は生徒の興味関心を見極め、身近な課題から探究テーマを設定させましょう。日常の疑問を学びに変える指導が、説得力のある成果物につながるからです。
関西学院大学や桜美林大学などをはじめ、探究入試を導入する大学は増加しています。探究学習で培われる思考力と表現力は、大学での学びの基盤となるでしょう。

