2026/02/06(金)

デジタル教科書とは、紙の教科書の内容を電子化したもので、音声や動画などのコンテンツも搭載されています。
GIGAスクール構想を背景に普及が進み、2024年度からは一部教科で本格導入が始まりました。
この記事では、デジタル教科書の基本的な知識から、導入のメリット・デメリット、具体的な使い方まで、その全体像を解説します。
そもそもデジタル教科書とは?紙の教科書との違いを解説

デジタル教科書は、従来の紙の教科書の内容をそのままデジタル端末で表示できるようにし、さらに動画や音声、アニメーションといった多様なコンテンツを付加したものです。
紙の教科書との大きな違いは、これらのデジタル機能によって、学習者の理解度や興味関心を高める工夫が凝らされている点にあります。
教育現場において、個別最適化された学びや、主体的で対話的な深い学びを実現するためのツールとして、その活用が期待されているのが特徴です。
学習者用と指導者用の2種類が存在
デジタル教科書には、児童生徒が使用する「学習者用」と、教員が使用する「指導者用」の2種類があります。
学習者用は、本文の閲覧に加え、音声再生や書き込み、保存といった基本的な機能を備えています。
一方、指導者用は、学習者用の機能に加えて、教科書の内容を電子黒板やプロジェクターに大きく映し出す機能や、特定の箇所を拡大表示する機能、図形やマーカーなどの書き込みツールが充実しています。
これにより、教員は生徒の注目を集めやすく、より効果的な授業展開が可能です。
「教科書」と「教材」は法律上の扱いが異なる
デジタル教科書とデジタル教材は、法律上の扱いに明確な違いがあります。
学校教育法において「正式な教科書」とは、文部科学大臣の検定に合格した図書を指します。
2019年の学校教育法改正により、デジタル教科書もこの検定の対象となり、条件付きで紙の教科書に代えて使用できる「正式な教科書」として認められました。
一方、デジタル教材は教科書会社や民間企業が独自に作成した補助的なコンテンツであり、検定の必要はありません。
法改正によって、デジタル教科書は教育の根幹を担う存在として法的に位置づけられています。
デジタル教科書の導入はいつから?最新の普及状況
日本におけるデジタル教科書の導入は、GIGAスクール構想による1人1台端末の整備を背景に急速に進みました。
文部科学省は教育のICT化を強力に推進しており、その一環としてデジタル教科書の使用を促進しています。
いつから本格的に導入されるかについては段階的に進められており、2024年度から特定の教科で本格的な活用が開始されるなど、教育現場での普及が着実に広がっています。
2024年度から特定教科で本格導入が開始
デジタル教科書の本格導入は2024年度から始まりました。
対象となるのは、小学校5年生から中学校3年生までの英語、および算数・数学です。
この正式導入により、これらの教科では、必要に応じて紙の教科書に代わってデジタル教科書を主として使用することが正式化されました。
ただし、当面は紙の教科書も無償で配布され、デジタルと併用する形での移行が進められています。
1人1台端末の配布が完了した教育環境を基盤に、デジタルを基本とした学習スタイルへの転換が図られています。
全国の小中学校における普及率の推移
全国の小中学校におけるデジタル教科書の普及は、GIGAスクール構想による1人1台の端末整備が追い風となり、急速な広がりを見せています。文部科学省が実施した調査の結果によれば、2021年度の時点で、すでに9割を超える学校が何らかのデジタル教科書を導入済みです。
政府は今後もこの流れを加速させる方針で、2025年度までに対象教科をさらに拡大することを目指しています。最終的には2030年度を一つの節目とし、全ての児童生徒が主要な教科においてデジタル教科書を活用できる教育環境の完全な構築を目標に掲げています。小中学校の双方で、今後も着実な導入が進む見通しです。
デジタル教科書を導入する5つのメリット

デジタル教科書を導入するメリットは多岐にわたります。
音声や動画といった多様なコンテンツによって学習内容への理解を深められるほか、文字の拡大や読み上げ機能により、個々の児童生徒の特性に応じた学習支援が可能です。
これらの機能は、学習効果の向上や新しい学びのスタイルの実現に貢献します。
ここでは、デジタル教科書のメリットを5つの側面に分けて具体的に解説します。
音声読み上げ機能で多様な学びに対応できる
デジタル教科書の機能の一つである音声読み上げは、多様な学習ニーズに応える上で大きなメリットがあります。
例えば、英語の授業ではネイティブの発音を繰り返し聞くことでリスニング力が向上し、国語の授業では正しいイントネーションでの音読練習に役立ちます。
また、視覚的な情報取得が困難な児童生徒や、文字を読むことに苦手意識を持つ児童生徒にとって、耳から情報を得るという学習手段を提供します。
このように、音声機能は個々の学習スタイルや特性に合わせた柔軟な学びをサポートするものです。
動画やアニメーションで学習内容の理解が深まる
デジタル教科書には、動画やアニメーションといったデジタルコンテンツが豊富に含まれており、児童生徒の学習内容への理解を効果的に深めます。
例えば、理科の実験映像や、社会科の歴史的な出来事を再現した動画は、紙の教科書だけでは伝わりにくい事象を視覚的かつ動的に捉えることを可能にします。
文字や静止画ではイメージしにくい抽象的な概念や複雑なプロセスも、動きのあるコンテンツによって直感的に理解しやすくなり、学習への興味や関心を引き出すことにもつながります。
拡大・縮小機能で文字や図が見やすくなる
デジタル教科書には、文字や図表、写真などを自由に拡大・縮小できる機能が備わっています。
この機能は、特に弱視の児童生徒や、細かい図の構造を詳しく確認したい場合に非常に有効です。
必要な部分をピンポイントで大きく表示できるため、一人ひとりの視力や学習状況に合わせて、最も見やすい状態で学習を進めることができます。
また、全ての漢字にフリガナを表示する総ルビ機能と組み合わせることで、漢字学習が困難な児童生徒の読解も支援し、学習のつまずきを軽減します。
書き込みや保存が簡単で繰り返し学習しやすい
デジタル教科書は、教科書上に直接メモを書き込んだり、重要な部分にマーカーを引いたりすることが容易です。
書き込んだ内容はデータとして保存できるため、ノートのように活用できます。
また、書き込みは簡単に消去できるため、問題を解き直すなどの繰り返し学習に最適です。
さらに、作成したワークシートやメモをクラウド上で教員や他の生徒と共有する機能もあり、協働学習や個別指導の場面で効果を発揮します。
これにより、学習の記録や振り返りが効率的に行えます。
教科書を持ち運ぶ負担が軽減される
デジタル教科書の大きなメリットの一つに、持ち運びの負担軽減が挙げられます。
全ての教科書データを1台のタブレット端末に集約できるため、児童生徒は毎日何冊もの重い教科書をカバンに入れて通学する必要がなくなります。
これにより、成長期の児童生徒の身体的な負担、特に肩や腰への負担を減らすことができます。
置き勉による教科書の紛失リスクも低減され、家庭学習の際にも必要な教科書をすぐに参照できるなど、利便性の向上にもつながります。
デジタル教科書導入・運用の課題
デジタル教科書の導入は多くのメリットがある一方、いくつかの課題も存在します。
まず、長時間のデジタル端末使用による視力低下や健康面への影響が懸念されています。
また、端末の故障や充電切れ、インターネット回線の不具合が発生した場合、学習が中断してしまうリスクも考慮しなければなりません。
さらに、家庭の通信環境によって学習機会に差が生じる可能性や、教員側のICT活用指導力の向上・導入時の費用が求められる点も重要な課題です。
これらの問題を解決していくことが、円滑な運用には不可欠です。
【教科別】デジタル教科書の効果的な活用方法と事例
デジタル教科書の効果は、教科の特性に合わせて活用することで最大化されます。
例えば、動きのある現象を扱う教科では動画が、音声が重要な教科では読み上げ機能が特に有効です。
実際の学校現場では、小学3年生から6年生まで、学年や教科に応じた様々な活用事例が研究されています。
ここでは、算数や英語、理科などの教科別に、デジタル教科書ならではの効果的な使い方や指導の例を紹介します。
算数・数学:図形を動かして立体的な理解を促す
算数・数学の学習において、デジタル教科書は図形の理解を深める上で非常に効果的です。
紙の上ではイメージしにくい立体の回転や、展開図から立体を組み立てるシミュレーションを、画面上で実際に動かしながら確認できます。
例えば、三角形を回転させて円錐ができる様子を視覚的に捉えたり、様々な角度から立体を観察したりすることで、空間認識能力を養うことが可能です。
このように、自分で操作しながら図形の性質を探求できるため、抽象的な概念の直感的な理解を促します。
英語:ネイティブの発音を繰り返し聞いてスピーキング力を養う
英語学習において、デジタル教科書の音声機能は極めて有効です。
教科書に掲載されている単語や本文を、ネイティブスピーカーの正しい発音で何度でも繰り返し聞くことができます。
これにより、リスニング力が向上するだけでなく、正しい発音を真似て音読することでスピーキング力の基礎を養えます。
また、一部のデジタル教科書には自分の発音を録音し、モデル音声と比較できる機能も搭載されており、客観的に自分の発音を確認しながら主体的に学習を進めることが可能です。
理科:実験の映像で危険な現象も安全に観察する
理科の授業では、デジタル教科書の映像コンテンツが大きな役割を果たします。
例えば、爆発や燃焼といった危険を伴う化学実験や、観察に長時間を要する植物の成長、あるいは瞬時に起こる生物の動きなどを、安全かつ効率的に映像で確認できます。
これにより、時間や場所、安全上の制約から学校では実施が難しい実験や観察も、リアルな映像を通じて深く学べます。
児童生徒の知的好奇心を引き出し、科学的な現象への理解を具体的に深めるための強力なツールとなります。
特別支援教育:個々の特性に合わせた学習サポートを実現
特別支援教育の分野では、デジタル教科書が持つ多様な機能が、児童生徒一人ひとりの特性に合わせた学習サポートを実現します。
文字の拡大や読み上げ機能は、視覚に障がいのある生徒や読み書きに困難を抱える生徒の学習を助けます。
また、画面の配色を反転させる機能や、漢字にルビを振る機能も、個々の見やすさや理解度に応じて調整可能です。
国語や社会、家庭科など、様々な教科において、これらの機能を活用することで、学習上のバリアを取り除き、主体的な学びに繋げることができます。
2030年度の正式な教科書化
文部科学省は、将来的にデジタル教科書を「正式な教科書」として完全に位置づける方針を示しています。
その目標時期として2030年度が議論されており、この頃までには、現在の紙とデジタルの併用期間を経て、多くの教科でデジタル教科書が主たる教材となる教育環境の実現が目指されています。
これは、学習者用デジタル教科書の使用率を100%に近づけるという目標とも連動しており、日本の教育が本格的なデジタルベースへと移行していく上での重要なマイルストーンと考えられています。
デジタル教材の活用方法
デジタル教科書は生徒に学習興味をわかせやすくして、先生が指導しやすくなります。しかし、個別最適を深めていきたいと思ったときにはデジタル教科書は一律の問題です。デジタル「教材」と連携させることで、個々の回答に合わせて出題問題を変えたり、適切な単元範囲の学習をしたりと個別最適につながりやすくなります。問題作成の時間を削減し、その分をデジタル教科書を使った対話的な学びの準備に充てることが可能です。
デジタル教材の代表的な例として挙げられるのが「すらら」です。すららは、無学年方式を採用したクラウド型の学習教材で、アニメーションを用いたレクチャー機能や、AIが児童生徒一人ひとりの理解度に合わせて出題を最適化するドリル機能を備えています。教科書が知識のインプットを主目的とするのに対し、すららのようなデジタル教材は、個別のつまずきを解消し、演習を通じてアウトプットを強化することに特化しています。
このように、デジタル教科書で基本事項を学び、デジタル教材であるすららで個々のレベルに応じた反復練習を行うといった使い分けがなされます。法律上の検定基準に基づいて作成される教科書と、民間の最新技術を活用して個別の学習進度をサポートする教材を組み合わせることで、より高い学習効果が期待できます。教育現場では、これら両者の特性を正しく理解し、授業の目的に応じて適切に併用していくことが求められています。
| 紙の教科書 | デジタル教科書 | デジタル教材(すらら) | |
| 主な目的 | 知識の網羅的提示 | 生徒の理解の深化・教員の負担軽減 | 演習・定着・個別最適化 |
| 法的区分 | 文科省検定教科書 | 文科省検定教科書(一部), | 補助教材(検定外・対応はできる) |
| 強み | 記憶の定着・俯瞰性 | 音声・拡大 | 習熟度分析・レコメンド |
まとめ

本記事では、デジタル教科書の定義や普及の現状、さらには具体的なメリット・デメリットまで幅広く解説しました。デジタル教科書は、音声再生や動画、アニメーションといったコンテンツを活用することで、従来の紙媒体では難しかった多角的な理解や、個々の特性に合わせた柔軟な学びを可能にします。2024年度からの一部教科での本格導入を皮切りに、教育現場のデジタル化は今後さらに加速し、2030年度の完全な教科書化を目指して進化を続けていく見通しです。
こうしたデジタル教科書による学びをさらに深めるためには、ICT教材「すらら」のような外部ツールとの連携が非常に有効です。デジタル教科書で基礎知識をインプットし、その理解度に合わせて「すらら」でアダプティブな演習を行うことで、インプットとアウトプットのサイクルを効率的に回せます。教科書の解説を補完するアニメーションレクチャーや、AIによる個別のつまずき診断機能を併用すれば、児童生徒一人ひとりに最適化された「個別最適な学び」がより高い精度で実現します。
もちろん、健康への影響や通信環境の整備といった課題は残されていますが、それらを適切に管理・克服することで、デジタルツールは教育の質を飛躍的に高める鍵となります。最新のテクノロジーを賢く取り入れ、次世代の学習環境を構築していくことが求められています。

