デジタル教材のメリット・デメリット、何ができるのかを解説

2022/06/06(月)

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今日、教育現場では教材のデジタル化が進んでいます。この記事では、教科ごとに用いる「デジタル教材」について解説します。
分厚い教科書や手書きの資料を、デジタル教材へ転換することに伴うメリットやデメリットについて紹介します。具体的な活用方法についても解説していくため、教育現場の変容を知ることができます。

今教育現場で話題のデジタル教材とは

デジタル教材とは、スマートフォンやタブレット端末、ノートパソコンなどのデジタル機器によって作成・利用される教材のことです。
日本では、2019年にデジタル教材の導入が閣議決定されました。デジタル教材の導入により、紙媒体での教材では困難だった情報の追加や削除・編集が容易になりました。 また、インターネットへの接続も可能となるため、より多面的な教材の運用が期待されています。

デジタル教材とデジタル教科書の違い

デジタル教材と似たものとして、デジタル教科書があります。
しかし、教育の分野では「教材」と「教科書」は明確に分類されています。教材と教科書の違いについて確認していきましょう。

教科書:大臣の検定に合格した教科書図書

文部科学省(文部科学大臣)の検定に合格したものが「教科書」です。教科書の総称は「教科用図書」です。
小・中・高等・特別支援学校の教育現場において、その教科を教えるための中心的な教材として扱われています。

大学などで書籍やテキストを教科書と呼ぶ場合もありますが、文部科学省の検定に合格していないものは、正確には教科書ではありません。

教材:教科書での学習をサポート

教科書における学習の補佐や副読本として用いられるものが「教材」です。教材は教科書と違い、文部科学省の検定に合格していません。そのため、「検定外教科書」に該当します。また、小・中・高等・特別支援学校において、この教材のみで授業を行うことはありません。
教材によっては、 取り扱っている教材の内容や記述様式が教科書に酷似している場合もあります。しかし、あくまでも教材は教科書による学習をサポートするためのものです。

デジタル教材を用いるメリット

教材のデジタル化には、さまざまなメリットがあります。デジタル教材の導入によるメリットについて確認していきましょう。

一人ひとりのレベルに合わせた学習ができる

デジタル教材では、子どもたちのレベルに合わせた学習を展開できます。なぜなら、デジタル教材では音声の読み上げや文字の拡大機能があるためです。これにより、例えば学習障害や視覚障害を抱えた子どもたちにも、内容を伝えやすくなります。
これらは、従来の紙媒体での教材では実現することが困難でした。しかし、デジタル教材の導入によって実現が容易になりました。

音声やアニメーションで理解が深まる

デジタル教材では、音声やアニメーションによって理解を深めることができます。
従来の文字や絵、図のみの教材ではなく、音声やアニメーションによる動きを交えることで、聴覚・視覚を活用した学習が可能です。
この機能により、子どもたちの教科に対する興味や関心を刺激し、より理解を深められます。

学習意欲が高まる

デジタル教材の導入によって、子どもたちの学習意欲を高められます。
従来の教材では、一方的な情報伝達型の授業が主流でした。
しかし、デジタル教材の導入によって、子どもたちがより主体的に学習できる「ディープラーニング」へと転換しやすくなりました。
文部科学省が定めた「新学習指導要領」では、デジタル教材をきっかけに、子どもたちが自発的にコミュニケーションを取りながら、授業を展開していくことを推奨しています。

児童・生徒の荷物を軽量化できる

デジタル教材の導入に合わせて、教材のペーパレス化が促進されることも期待されています。これにより、子どもたちの荷物を軽量化することができます。
小学校低学年の通学時の平均重量(ランドセルとサブバッグの合計重量)は、約7〜8kg といわれています。
低学年の子どもたちにとって、体への負担が大きいことが指摘されています。教材のペーパレス化による軽量化は、これらの課題を解決することができます。

デジタル時代への適合ができる

デジタル教材の導入は、今日の情報化社会・デジタル時代へ早期に適応できます。
タブレット端末などを操作する機会を増やし、今の時代に早く適応するための訓練を教育現場で実践できます。
また、インターネットを活用し、自ら必要な情報を自発的に取得するスキルを習得することも可能です。

教員の負担が減る

デジタル教材の導入によって、教員の負担軽減も期待されています。
従来の紙媒体での教材では、子どもたちに教材を新たに提示する場合、教員自らが手作業で作成していました。教材資料の作成は、教員全体の業務の中でも大きな負担となっています。
しかし、デジタル教材では資料の追加や編集が容易なため、教材資料作成の負担を軽減できます。

デジタル教材を用いるデメリット

ここまで、デジタル教材のメリットについて紹介してきました。
しかし、デジタル教材の導入はメリットばかりではなくデメリットも存在します。ここからはデジタル教材導入に伴うデメリットについてそれぞれ詳しく解説していきます。

画面に集中しすぎてしまう

デジタル教材の導入によって、子どもたちの興味・関心が、教科内容ではなくタブレット端末の機能性に移行してしまう可能性があります。
デジタル教材は、音声機能やアニメーション機能などの活用によって子どもたちの興味・関心を刺激する効果があります。

しかし、これらの機能がかえって過度な画面への集中を引き起こしてしまう可能性があります。
デジタル教材で活用するタブレット端末などは、あくまで学習をサポートするものです。このことを教員や子どもたちが共通して認識しておく必要があります。

視力低下を誘引する可能性がある

デジタル教材の導入により、子どもの視力低下を誘引する可能性があります。
近い位置で画面を長時間見続けていると、目が疲れたと感じやすく、視力の低下を誘引する可能性があります。
デジタル教材を活用する場合は、適宜休憩を挟みつつ、正しい姿勢で画面から30㎝以上離して使用するようにしましょう。

インターネットを適切に利用する知識が必要になる

デジタル教材を利用する場合は、インターネットを適切に利用する知識が必要になります。
より多くの情報を自発的に収集できることは、デジタル教材のメリットの一つです。
しかし、誤った情報や不適切な情報もインターネット上には混ざっています。子どもがインターネットを使用する際には、アクセス制限やフィルタリング機能を付けるなどの対策が大切です。
子どもが安心してインターネットを使用できるよう、子どもだけでなく保護者もインターネットに対する適切な知識が必要になります。
なお、実際にデジタル教材を導入している教育現場では、タブレット端末などにアクセス制限をかけるといった工夫がなされています。

端末が故障した時の対応が必要になる

タブレット端末やノートパソコンは精密機器であるため、端末が故障した際に対応する必要があります。

端末故障の対応に時間を取られてしまうと、授業の進行に支障が生じます。
そのため、教員側は一時的に端末が使えなくなっても大丈夫なように、端末の予備を用意するなど準備が必要です。また、故障や不具合に対処できるように、コンピューターに対するリテラシーを習得しておく必要があります。

主なデジタル教材でできる5つのこと

ここからは、デジタル教材の具体的な活用方法について紹介していきます。
授業の展開方法や教科によって、さまざまな活用を実践できます。ここでは、一般的な活用方法を確認していきましょう。

機能1:アニメーション講義

デジタル教材では、アニメーションを活用した講義が実施できます。
紙の教材では、イラストや写真が使われているものの、動きがなく分かりづらいことがあります。しかし、デジタル教材では、アニメーションを活用することにより動きが加わり、視覚的なイメージが容易になります。
これにより、子どもは紙の教材では理解しにくかった内容も簡単に理解できるようになります。

機能2:ドリル

練習問題を反復して解く「ドリル」としても、デジタル教材を活用できます。
紙媒体で練習問題を行うと、テストや試験のような緊張感を子どもたちに与えてしまいます。
そのため、なじみのあるタブレット端末などを活用することで、練習問題に取り組むまでの心理的負担を軽減させることができます。

機能3:学力診断テスト

デジタル教材を活用して学力診断テストを実施することで、子どもたち一人ひとりの理解度をデータ上で把握できます。
各教科における単元ごとに活用すれば、子どもたちの理解度が不足している単元や傾向をつかみやすくなります。

また、自動採点機能を活用することで、教員自身の業務負担を軽減させることもできます。

機能4:学習管理機能

デジタル教材には、学習管理機能があります。
例えば、タブレット端末やノートパソコンのログイン・ログアウト時間を管理することで、学習時間や学習進捗の管理が容易になります。
また、子どもたちの成績をデータ化させることで得意・不得意な分野を明確にし、子どもたちに適切なアプローチを実践できます。
このように、デジタル教材を活用することで、子どもたちの学習管理が容易になります。

機能5:ゲーム感覚で学ぶ

デジタル教材を活用することで、子どもたちはゲーム感覚で学ぶことができます。デジタル教材は紙の教材と違い、音声やアニメーションが豊富なためです。
例えば、紙の教材の場合は、子どもによっては退屈だったり抵抗感を感じたりすることもあります。
一方、デジタル教材の場合は、音声やアニメーションが豊富なため、ゲームのように視覚・聴覚が刺激されます。
これにより、子どもは退屈せず、ゲーム感覚で学習を進めることができます。

デジタル教科書は2024年に本格導入

文部科学省は、2024年度までに本格的なデジタル教材の導入を目指しています。
ここからは、日本の教育方針や展望について確認していきましょう。

GIGAスクール構想によりデジタル化が進む

子ども1人に対して1台のタブレット端末の普及を推奨する「GIGAスクール構想」によって、徐々にタブレット端末の配布が広まっています。
また、教育現場ではこれからの教育を支えるICT環境の整備に注力しています。
しかし、現段階ではデジタル教材導入によるメリットとデメリットを踏まえた慎重な実証実験が必要な段階です。

デジタル教科書の普及率はまだまだ

文部科学省は、2022年度からデジタル教科書の無料配信を進めています。これは、タブレット端末を導入している国公立・私立の小・中学校や特別支援学校が対象です。
現在9割以上の自治体において、デジタル教科書の導入が進められています。しかし、タブレット端末を有効活用できているといった状況にはありません。
教員一人ひとりがデジタル教科書の活用によるメリットやデメリットを適切に理解していく必要があります。

デジタル教材でデジタルに慣れる

デジタル教材の導入は、情報化社会が発展する現代社会にとって、重要な要素を持っています。
子どもたちにとっても、タブレット端末やノートパソコンを積極的に活用できるようになることは、デジタル社会に慣れる第一歩になります。
まずは国や自治体、教育現場が連携して、デジタル教材の導入に踏み切ることが大切です。
また、子どもたちだけではなく、教育現場もデジタル化に対応していく必要があります。

まとめ

この記事では、デジタル教材のメリットやデメリット、活用方法について解説しました。デジタル教材は、アニメーションを活用した学習など、紙媒体の教材ではできなかった学習を可能にしてくれます。
現代社会にとって、タブレット端末やノートパソコンは、わたしたちの生活に密接に関連するツールとなっています。
紙媒体中心で展開していた教育現場においても、デジタル教材を有効に活用し、子供の教育を発展させましょう。

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