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小学校の教科担任制は2022年度開始!メリットと課題

2022.12.01

近年、小学校の教員の離職率は高まっています。1人当たりにかかる負担や忙しさなどが原因です。少しでも離職率を低下させるために、文部科学省から小学校の教科担任制が導入されました。そこで今回は、小学校での教科担任制を導入する目的やメリット、実施する際の課題について紹介します。実際の事例についても紹介するので参考にしてみてください。

教科担任制とは?学級担任制とは何が違う?

学級担任制は従来の指導方法が取られているのに対し、教科担任制は現在の中学校での指導方法が取られています。都道府県によって教科担任制が導入される時期は異なりますが、年々教科担任制を導入する小学校が増えています。

2022年度から小学校高学年で本格的に教科担任制がスタート

教科担任制は2022年以前から少しずつ導入されていましたが、小学校高学年で本格的に導入がスタートしたのは2022年度からです。ここでは、導入方式や優先的に教科担任制となる教科について詳しく紹介します。

教科担任制の導入方式にはどのようなものがある?

教科担任制の導入には、以下の4つの方式があります。

・授業交換型:学年内や学校内での授業交換を行う
・追加型:専門教員を追加し、学内で授業を行ってもらう
・連携型:近隣学校の教員が代わりに授業を行う
・T・T型:学級担任と専門教員が連係し、授業を行う

教員の人数や生徒の人数などによって方式は変わりますが、少しでも教員の負担を減らすために様々な方法が導入され始めています。

優先的に教科担任制となる教科は?

優先的に教科担任制となる教科は、英語・理科・数学の3科目です。
中学校の学びに繋がることや苦手と感じる教員が多いといった観点から、上記の教科が優先的に選ばれています。私立小学校によっては体育・音楽・図工などを担当しているケースもあります。

小学校に教科担任制を導入する目的

小学校に教科担任制を導入する目的は以下の4つです。

・先生の指導力と児童の学力の向上
・先生の働き方改革
・中1ギャップへの対策
・多面的に児童への理解を深める

順番に見ていきましょう。

先生の指導力と児童の学力の向上

小学校に教科担任制を導入することで、先生の指導力と児童の学力向上が期待できます。従来の指導方法では、1つのクラスに対して全ての教科を1人の先生が教えなければなりません。苦手な科目の授業も担当しなければならないため、同じ科目でもクラスによって授業レベルに差が生まれます。教科担任制は、1人の先生が複数のクラスを受け持つため、差が生まれることはありません。また、先生側も得意な教科だけに専念できるので指導力が向上し、質の高い授業が展開できます。

先生の働き方改革

教科担任制を導入することで、働き方改革を推進させられます。なぜなら、先生の拘束時間を短くすることが期待できるためです。例えば、1人1科目の担当とすることで、持ちコマ数を軽減したり、授業準備時間を短縮したりできます。また、先生も慣れない教科を教える必要がないので、精神的なストレスを感じにくくなります。このように、教科担任制は長時間業務で心身共に疲労を感じる先生の負担を軽減させることが期待できます。

中1ギャップへの対策

教科担任制は、中1ギャップへの対策として効果的です。中1ギャップとは、中学校に進学した生徒が、進学先に上手くなじめず、いじめや不登校などに合ってしまう現象のことです。中1ギャップが起こる要因の1つに、中学校から教科担任制に変わることがあります。学生にとって、先生が授業ごとに変わることは大きな環境の変化になり、慣れないうちは緊張に繋がります。小学校から教科担任制を取り入れておくことで、環境の変化に順応し、中1ギャップを起こりにくくすることが期待できます。

多面的に児童への理解を深める

教科担任制は、多面的に児童に対する理解が深まります。なぜなら、授業を担当する先生が複数クラスを指導するからです。多面的な理解が深まることで、児童の成長を複数の先生で見守れます。更に多面的に児童への理解を深めるためにも、先生同士で児童の情報共有を行い、全員で児童を見守っていくような仕組みづくりが重要です。

小学校で教科担任制を実施する4つのメリット

次に、小学校で教科担任制を実施するメリットは以下の4つです。

・専門性を活かした質の高い授業ができる
・授業の負担が分散される
・クラス間の授業内容や進度の差が少なくなる
・多様な児童を指導することで自身の指導方法を見直せる

1つずつ見ていきましょう。

専門性を活かした質の高い授業ができる

教科担任制が実施されることで、専門性を活かした質の高い授業ができます。質の高い授業は、児童にとっても効果的に学力を上げる方法として有効的です。学級担任制は全ての教科を1人で担当しているため、教科によって質の違いが生まれます。反対に、教科担任制は複数の先生がそれぞれ専門としている教科を担当するため、質の高い授業が可能になります。

授業の準備の負担が分散される

教科担任制を実施することで、授業の準備の負担が分散されます。なぜなら、今まで学級担任制で行っていた各授業の事務作業やテスト採点などの作業が必要なくなるからです。その結果、先生1人1人に余裕が生まれ、定時で退勤・出勤できる可能性が高まります。ただし、どの教科を担当するかによって授業準備の負担の割合が異なる点には注意が必要です。

クラス間の授業内容や進度の差が少なくなる

教科担任制は、クラス間の授業内容や進度の差が少なくなります。なぜなら、1人の先生が複数のクラスを同時並行で指導するためです。例えば、3年生の国語を1人の先生が教えた場合、授業の進捗に差は生まれません。保護者からしても、クラスの授業の進行度が適正なのか、差が生まれていないのかどうかが心配になります。しかし教科担任制であれば、評価基準も1人の先生が評価を行うため、クラスによって差が生まれることは少なくなり、保護者も安心できます。

多様な児童を指導することで自身の指導方法を見直せる

教科担任制を導入することで、多様な児童を指導できるため、自身の指導方法を見直すことができます。学級担任制でやりがちな「自分だけの価値観で指導を進める」といった行為は、クラスごとの差を生む原因になります。教科担任制だと、複数のクラスで多くの児童に向き合うことになるため、児童に合わせた多様な指導方法が求められます。多様な指導方法は、自分だけの価値観で指導を進めているだけでは習得できません。生徒それぞれがどのような問題につまずき、疑問に感じているのかを考える必要があります。また、関わる児童の人数も多いため、自身の指導方法を見直し、改善するきっかけになります。

小学校で教科担任制を実施する4つの課題

ここまで、小学校で教科担任制を導入する目的や導入したときのメリットについて紹介しましたが、もちろん実施した際の課題も生まれています。実施したことで生まれる課題について4つ紹介します。

時間割の調整が複雑になる

複数の先生が複数のクラスを担当するため、時間割の調整が複雑になります。時間割の調整が上手くできないと、負担に繋がるため注意が必要です。時間割の調整を行うために、学級を持たない教員や校務教員に全体の管理を任せることが有効的です。調整を一気に進めるのではなく、段階的に先生・児童の困惑を避けるように調整を行いましょう。

小学校で教えられる専科教員が不足している

小学校で導入したとしても、小学校免許を所持している先生しか採用できないため、専科教員が不足しています。専門的な先生を導入して授業をお願いする仕組みができていたとしても、教員が不足していては意味がありません。教員不足を少しでも解消させるためにも、免許制度や教員養成などの見直しは必須事項といえるでしょう。

担当学級の児童と過ごす時間が減る

学級担任制に比べ、教科担任制は児童と過ごす時間が減ります。なぜなら、学級担任制ではすべての授業の時間で児童と過ごせていましたが、教科担任制だと決められた時間でしか児童と過ごす時間がないからです。児童と過ごす時間が減ると、児童の学習状況や心身の状況の把握が困難です。その結果、家庭訪問や三者面談などで児童のことが話せないといったことが発生します。対策としては、児童の個人情報を1つのシステムで管理できるプラットフォームの作成や、児童・教師が共有して利用できる校内サーバーなどの利用がおすすめです。

教科を横断した学習が進めにくくなる

教科担任制にすると、教科を横断した学習が進めにくくなります。なぜなら、1人の教員が1つの授業を複数のクラスで受け持つため、他の教員と連携しながら進めることが難しいからです。教科を横断した学習指導を行うためにも、教員同士で定期的にコミュニケーションを取る機会が必要です。また、学習内容を一枚で把握できる表を作成し、他教科の授業内容を把握できるようにする方法もおすすめです。

小学校教科担任制の実践例

最後に、小学校教科担任制の実践例について下記の2種類をご紹介します。

神奈川県横浜市の事例

神奈川県横浜市では、1学年3学級以上の学校において、教科担任制が導入されています。実際に現れた効果として、以下の内容が挙げられます。

・授業準備の効率化が図れた
・保護者対応や児童への指導で問題が発生しても複数の教員で対応が可能になった
・空きコマができることで、精神的・身体的余裕が生まれた

また、横浜市が行ったアンケートによると、「自分の悩みを他の教員に相談している」「家庭や個人の事情で取る年休をとれている」と答えた人の割合が増えるなど、先生の負担が軽減されていることが分かります。また、空きコマも平均1日1〜2コマ発生していることも分かり、教員の仕事への満足度が高まっています。

兵庫県の事例

兵庫県では、小学校高学年を担当する教科担任制に加え、担任間で授業交換を行う兵庫型学習システムが実施されています。兵庫型学習システムでは、学級担任を含めた8人の先生が1クラスを担当します。そして、定期的に教員同士で生徒の情報交換を行います。これにより、児童や学級の変化に気づきやすい仕組み作りが可能です。
兵庫県の事例では、理科・数学・外国語・音楽・図工・家庭科の教科を交換しながら授業を進めます。教科の種類や数などは、学校や教員の人数によって異なるため、情報交換で得られる児童に関する情報の量も異なります。

まとめ

今回は、導入する目的やメリット、実施する際の課題を解説し、最後に実際の事例について紹介しました。教科担任制は、小学校の教員1人1人の負担を軽減させ、授業の質向上や働き方改革などに大きな影響を与えています。まだ始まったばかりの教科担任制の導入ですが、これからも様々な小学校で独自の方法を用いた手法で導入していくことは間違いありません。これからの教科担任制の発展に注目していきましょう。

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