読解力は文章を読むだけの力じゃない?意味から鍛える方法まで解説

2022/12/05(月)

どの教科でも必要な読解力ですが、ただ文章を読むだけではないことを知っていますか?読解力が大切なのは分かっていても、なぜ重視されるのか答えられない人もいるでしょう。今、読解力が必要といわれているのには、明確な理由があるのです。この記事では、読解力の定義と構成する要素について徹底解説。読解力が必要な理由と鍛え方についても説明します。読解力について詳しく学びたい人は、ぜひ最後までご覧ください。

読解力とは?ただ「文章を読む力」ではない!

読解力をそのまま解釈すると「文章を読む力」となりますが、文字通りの意味とは異なります。ここでは、読解力の正しい意味を定義に基づいて解説します。

読解力とは文章を正確に理解する力のこと

読解力とは「文章を正確に理解する力」を意味します。書かれた文章から、登場人物の気持ちを推測したり、筆者の考えを正確に読み取ったりする能力です。「行間を読む」という慣用句があるように、筆者の本意が文章に書かれていないことがあります。使われる言葉から、文章に書かれていない部分を読み取る力も読解力に含まれるのです。

PISA(国際学習到達度調査)での定義

PISA(国際学習到達度調査)は、義務教育終了段階の15歳を対象に行うテストのことで、OECD(経済協力開発機構)が実施しています。読解力・数学的リテラシー・科学的リテラシーについてテストを行います。

読解力についてPISAでの定義は以下の通りです。
“自らの目標を達成し,自らの知識と可能性を発達させ,効果的に社会に参加するために,書かれたテキストを理解し,利用し,熟考する能力。”
“義務教育修了段階にある生徒が,文章のような「連続型テキスト」及び図表のような「非連続型テキスト」を幅広く読み,これらを広く学校内外の様々な状況に関連付けて,組み立て,展開し,意味を理解することをどの程度行えるかをみる。”
出典:文部科学省 「国際学力調査(PISA、TIMSS)」

この定義をみると、文章を読み取り、自分で考え利用する能力や、図表の読み取りなどの力も読解力に含まれていることが分かります。

読解力を構成する4つの要素

読解力を細かく分類すると、4つの要素から成り立っています。読み解く力をつけるヒントとなるので、構成要素について詳しく確認しておきましょう。

1.語彙力:言葉の意味を正確に読み取る力

文章を読む基礎となる語彙力は、読解力を構成する重要な要素です。 言葉の意味を知らないと正しく文章を読み取ることができないためです。子供は特に、普段使っている言葉の意味を勘違いしてとらえていることがあります。間違った意味で覚えていては、正しい読み取りができません。読解力を高めるため、教師は言葉の意味を確認し、正しく理解させる必要があります。

2.解釈力:文章の構造を理解する力

読解力には文章の構造を理解する力も必要です。文章の構成に気づけば内容を掴みやすくなり、自分で文章を書く時にも役立ちます。説明文なら、序論・本論・結論という具合に、文章構成がある程度決まっています。パターンが分かれば、どこに結論が書いてあるかをすぐに見つけられます。構成を意識しながら読むことで論点が分かりやすくなります。

3.要約力:文章の内容を自分なりに噛み砕く力

文章の内容を自分なりにまとめる要約力も読解力には必要です。文章をただ読んだだけでは理解したといえません。内容を要約し、自分の言葉で発信できるようになれば、本当に理解したといえるでしょう。

4.速読力:時間内に読み終える力

読解力には読むスピードも重要です。速読には先に述べた語彙力や解釈力・要約力がしっかり身についている必要があります。基礎的な能力を鍛えることで、自然と早く読めるようになります。

日本人の読解力は低下している?その理由も解説

日本人の読解力はなぜ低下しているのでしょうか。日本人の読解力が低下している理由について解説します。

日本人の読解力は低下傾向にある

日本人の読解力が低下傾向にあるのは、PISAの成績を見ても明らかです。2018年の調査では、参加国中15位という結果になりました。2012時点では読解力が4位であったため、6年間のうちに著しく低下していることがわかります。特に、「情報を探し出す力」や「(情報を)評価し、熟考する力」が低下傾向にあり、必要な情報を得るためにはどのサイトを見たら良いかを問う問題で不正解が目立つ結果に。また、情報の質と信ぴょう性を評価して対処方法を説明する問題も、正答率が低下しました。PISAの点数が下がったのは、テストのデジタル化も一因と言われています。画面を切り替えて問題を読む形式に対応できなかった可能性もあり、デジタル活用の経験不足が目立ちました。

読解力が低下する理由3選

読解力が低下傾向にあるのはなぜでしょうか。低下の理由として考えられるものを3つ解説します。

インターネットなどの情報に関する教育が足りない

インターネット情報に関する教育が不足していることも、読解力低下の原因です。必要な情報の選択や、信ぴょう性の高い情報を選ぶ学習が不足しているためです。デジタル環境が整い、インターネットで調べ学習を取り入れる授業も増えてきました。しかし、情報収集や選び方を学習する場面は少ないのが実情です。問題解決につながる情報の集め方や、情報を比べて信ぴょう性を確かめる方法などを、学校で教えていく必要があるでしょう。

情報収集が簡単になり読書量が減った

読解力の低下は、情報収集が簡単になり、読書量が減ったことも一因です。分からないことはスマホがあればすぐ調べられるので、本を読む機会が少なくなったと考えられます。以前は、知らない知識を得るには辞典や図鑑で調べるしか方法がありませんでした。そのため、自然と本を読んでいましたが、今はインターネットで情報を手に入れられる時代です。読書量が減ったのも、読解力が下がった原因です。

SNSの普及により情報の切り取られ方が変わった

読解力低下は、SNSの普及も理由のひとつです。切り取られた情報をそのまま受け取り、自分で考える機会が減ったためです。SNSでは短い言葉で情報を発信するため、インパクトの強い部分だけを切り取りとることが多いです。切り取られた情報では、前後の文脈がないため、文章全体を読んで考える必要はありません。このように、文章から書き手の考えを読み取る機会が減ったことが、読解力低下につながっています。

そもそもなぜ読解力が必要?鍛えるメリットを紹介

読解力が必要といわれる原因は何でしょうか。ここでは、読解力が求められる理由と鍛えるメリットを紹介します。

国語の問題以外でも読解力は求められるから

国語の学習以外でも読解力は求められます。どの教科でも文章による説明があり、内容を正しく把握する能力が必要なためです。また、読解力には文章を読む力の他に、図形や表を読み取る力も含まれています。例えば、社会で地域産業について学ぶ時、レタスの出荷が多いのであれば、レタス作りに適した涼しい気候であることが読み取れます。このように、国語だけに限らずどんな教科でも読解力が必要です。基本となる国語で読解力を身につけると、他教科でも活かせるようになります。

社会人になっても求められるスキルだから

読解力は社会人になってからこそ求められるスキルです。「行間を読む力」は、スムーズなコミュニケーションにつながるためです。アメリカの心理学者アルバート・メラビアン氏が唱えた「メラビアンの法則」によると、コミュニケーション全体から見た言語情報はわずか7%です。つまりコミュニケーションの9割が見た目や声など非言語コミュニケーションで行われているのです。相手の声の調子や表情などから、言いたいことを読み取る力は社会人として必須スキルです。学生時代に読解力を鍛えることで、コミュニケーション上手な人材育成につながります。

読解力を鍛える方法を要素別に詳しく解説

読解力を鍛えるには、どのような方法があるのでしょうか。読解力の構成要素ごとに具体的な手立てを解説します。

語彙力:辞書を活用する

読解力のひとつである語彙力を鍛えるには、辞書の活用が効果的です。辞書を引きながら文章を読むことで、語彙数を増やしながら正確に読み解く力が養われます。読解力の基本は、言葉の意味をたくさん知ることです。語彙数が豊富だと、文章の読み取りがスムーズになります。さらに、意味を知らない言葉があっても文章の流れから予想できるようになります。学習中の文章に知らない単語が出てきたら、辞書で確認しながら読むと語彙が増えます。授業中に辞書を手元に置き、調べる習慣をつけるとよいでしょう。

解釈力:思い込みをなくして接続詞に注目しながら読む

解釈力を鍛えるには、思い込みをなくし、接続詞に注意して読むのがポイントです。文章を読んでいると、自分の解釈が入り筆者の考えを正確に理解できない場合があります。「自分がこう思っているから筆者も同じ考えだろう」と思い込むと、正しい文章理解ができないためです。思い込みをなくして、正確に理解するには接続詞に注目しながら読むように指導しましょう。話題の変わり目や結論部分を知るヒントとなり、内容の正確な理解ができるようになります。

要約力:要約ノートを活用しながらアウトプットの習慣をつける

要約力を鍛えるには、授業で要約ノートを活用してアウトプットの練習を行うのが効果的です。文章を読んだ時、理解したつもりでも他の人に説明するとなると難しいものです。得た情報を噛み砕き、自分の言葉でまとめるようにすると、より深い内容理解につながります。要約力を鍛えるには、実際に要約の練習をするのがおすすめです。授業に要約ノートを取り入れ、短く分かりやすい文章から要約の練習に取り組みます。慣れないうちは、説明文など構成や結論が分かりやすい文章から練習してみましょう。

速読力:他の力を駆使しながら量をこなす

速読力を鍛えるには、内容を理解しながら読むスピードを上げることが大切です。文章をただ速く読むだけでは、本当の速読力があるとはいえません。読むスピードを上げても内容を正確に理解する力が必要です。それには、読解力・解釈力・要約力をしっかり身につけることが重要です。生徒の速読力を上げるには、語彙力や要約力を高めた上で、時間を決めて読む練習がおすすめです。要約や問題で内容を理解できているかチェックするのもよいでしょう。

まとめ

日本人の読解力は低下傾向にあり、これはSNSの普及や読書量の減少が原因と考えられます。インターネットの情報活用に関する教育が足りていないのも要因であるため、教育現場でも読解力を重視した指導が必要です。読解力を鍛えるには、語彙力・解釈力・要約力・速読力を高めるのが確実です。社会で活躍できる人材育成のため、読解力が身につく授業に改善していきましょう。

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