探究学習とは?学習指導要領での位置付けや実践時の先生の役割を解説

2022/12/12(月)

子供の学習方法として「探究学習」が注目されています。学習指導要領の改訂が行われたことで知られるようになり、子供の主体性を育むことが期待されています。探究学習とはどのようなものなのか、子供たちは学校でどのような探究学習をしているのか、わかりやすく紹介していきます。探究学習において先生に求められる役割についても解説しているので、参考にしてみてください。

「探究学習」は生徒が自ら見つけた課題の解決に取り組む学習法

探究学習とは、自分で課題や問いを見つけて、解決するための情報を収集・整理することをいいます。他社と議論し、協力し合うなかで最も適した答えを見つけていく学習方法を総合して、探究学習としています。グローバル化や科学技術の発展、そして新型コロナウイルスなど、未来を予想することが困難な時代に入っている今、子供には主体的に学びを深めることが求められています。最初はうまく行かずとも、何度も挑戦することによって、発想力・柔軟性・チャレンジ精神などを伸ばすことができます。

探究学習が必要とされる背景

探究学習が必要とされる背景として、AIに代用されない人材が求められていることが挙げられます。AI化技術の進歩により、ただ言われた通りにこなすだけではAIに代用される可能性があります。未来を予測するのが困難な時代で、決められた反復学習や暗記をするだけの学習方法では通用しません。探究学習を通し、AIに代用されないスキルを得ていく必要があります。

小学校の新学習指導要領における探究学習

小学生の探求学習は、先生から教えてもらう授業形式ではなく、自ら学び考える力を育てる学び方に変わっています。小学校の学習指導要領に則った授業が始まり、教科書以外の学びを取り入れ始めました。小学校における探究学習は、総合学習の中で実際に行われています。
特にプログラミングは探究学習との相性がよく、今後はより積極的に取り入れられると考えられています。プログラミングを学ぶことで、原因と結果を論理的に考えながら、自分の手で課題を解決していく能力が養われると期待されているためです。このように、小学校の探究学習では、子供が自ら考え学んでいくことを重視しています。

中学校の新学習指導要領における探究学習

中学校の探究学習では、他者と協働して主体的に取り組む学習を重視しています。これには、課題を解決するために必要な知識や技術を身につけ、学習の良さを理解させる目的があります。中学校では2017年より取り入れられたものです。さらに、お互いの良さを尊重しながら、社会に積極的に参画する態度を養います。自分の発表を他者に聞いてもらうと、改善点にも気づけ、自信を深めることにも繋がります。自分とは違った考えを持っている人の存在認識にもなるのです。

高校の新学習指導要領における探究学習

2022年より実施された高等学校の探究学習は、知能や技能だけでなく、思考力・判断力・表現力・人間性など、”生きる力”を総合的に高めることを重視しています。社会に出る一歩手前の年齢であることから、社会に出た後自らの能力を存分に発揮していく必要があるためです。高等学校の探究学習では、校外学習で得た情報から働くことの意義を意見交換したり、自身のライフプランを設計したりします。また、授業科目も選択が可能になります。主な選択科目は以下です。

・数学と理科では、理数探究・理数探究基礎
・国語には、古典探究
・地理、歴史には世界史探究・地理探究・日本史探究

このように、高等学校における探究学習は、社会に出る準備期間として、これまで以上に実践的な学びになっています。

総合的な学習の時間と総合的な探究の時間の違い

総合的な学習では、課題を解決することに重きを置いています。それに対して総合的な探究では、課題を自ら発見し解決することに重きを置いています。例えば、総合的な学習では、教科や分野にとらわれない多面的な視点を持って、与えられた課題を解決していくことが求められています。一方、総合的な探究では、先生は生徒に課題を直接与えることはありません。生徒が自ら何が課題と感じるかを考え、自ら課題解決のために動いていくことが求められています。また、総合的な探究では自ら課題を発見していく必要があるので、同時に生徒は何に課題を感じるのか考え続ける必要があります。自ら課題を探しながら社会を見ることで、生徒が自身の在り方や生き方と向き合うようになることが期待されています。

探究学習の基本的な実践方法

探求学習では、テーマ決めに悩む現場の声も少なくありません。実際に探求学習を取り入れる上で、基本となる実践方法を紹介します。

テーマ(課題)の設定

探求学習のテーマ(課題)決めでは、教師が中立の立場を維持し、生徒の疑問や問題意識を引き出すことが大切です。テーマ決めのポイントは以下の4つです。

・疑問や問題定義を通して取り組むテーマを見つける
・社会で実際に起きている問題を取り上げ、生徒に考えを問いかける
・生徒の興味・関心ごとをヒアリングし、具体化する
・住んでいる地域や環境問題など生徒にとって身近なテーマを検討してみる

教師がテーマを与えてしまうと、生徒の主体性を育むことができません。生徒が自らテーマを選べるように促すことで、生徒のモチベーションを維持させることがテーマ決めのポイントです。

情報収集

探究学習でテーマが決まったら、テーマに関連する情報を集めます。課題の解決に対してどのような情報が必要なのかを先に考えておくことで、情報収集にブレがなくなります。情報収集の方法も1つではありません。本やインターネットはもちろん、過去の新聞や専門家へのヒアリングも有効です。ありふれた情報を全て鵜呑みにせず、取捨選択して正しい情報を集めることは、生徒自身の視野を広げるきっかけにもなります。

情報の整理・分析

情報を分析し、資料を比較しながら課題を設定していきます。情報を複数の場所から集めることで、どんな変化が起きているのか、正確で最新の情報を手に入れる事ができます。資料を比較することで課題が見え、シミュレーションがしやすくなります。問題をランキング化するなどイメージをより具体化することにも繋がります。生徒1人で難しいときは、先生が中立的な立場でアドバイスをしてサポートします。生徒のモチベーションをいかに高めていくかを考えましょう。

まとめ・表現

情報の整理・分析が終わったら、探究学習の成果をまとめます。下記のように、さまざまな表現方法があります。

・レポートや論文
・ポスター
・プレゼンテーション
・パネルディスカッション
・新聞
・WEB記事

まとめ・表現のポイントとしては、テーマ(課題)の結論や主張について生徒に思考させることが大切です。あくまでも生徒自身に考えさせることが重要であるため、「どのような構成にしたらわかりやすくまとまるか」「結果に対して何を考察したか」など、適宜サポートを行いましょう。また、先生側でまとめ方のガイドラインやレイアウトを示し、表現しやすい環境を整えることも大切です。

評価

探究学習における評価では、どのような観点から評価するのか、評価を行う方法はどうするのかを明確にしておく必要があります。探究学習における評価は先生にとっても重要な課題です。例えば、学びを系統的に蓄積していくポートフォリオは、プロセスがわかりやすくなる表現方法です。レポートや作文、メモや付箋などの材料を蓄積し、学びを振り返る機会をつくります。プレゼンテーションやルーブリックなどの評価方法も考えられます。特に探究学習は答えのない問いも存在するため、主観的になってしまいがちです。いかに客観的な視点で評価をするのかが重要になってきます。

探究学習ではテーマ設定が重要

2022年度に向けた「総合的な探究の時間」に関するアンケート結果を見ると、探究学習のテーマのキーワードとして探究・地域・SDGsが多く入っていることが分かります。2022年に変更になった総合的な学習では、テーマをキャリアに関連付けることも重視されていますが、実際に取り入れている学校は少数です。同様のアンケート結果では、特定のジャンルに限らず、幅広いジャンルを取り上げていく学校が多いこともわかります。

テーマは誰が決めるもの?

テーマを決めるパターンとしては、以下の3つがあります。

・テーマを教師が決める
・教師が選択肢を与え生徒が決める
・生徒が全てを決める

テーマを教師が決めると、スムーズに探究学習が進みますが、生徒の主体性を育てることにはなりません。あくまでも中立的な立場でいる必要があります。そのため、教師が生徒に選択肢を与え、そこから生徒自身が選ぶ方法もあります。生徒が全てを決める場合、テーマを決める時間を十分に確保するようにしましょう。

探究学習にはどんなテーマが適している?

探究学習については、生徒のやる気を引き出しモチベーションを維持するかが重要です。そのため、全く興味のないテーマを提示したところで、調べる意欲に繋がらず、途中で挫折してしまう可能性があります。興味のあることであれば、関連性のあるものにも視野が広がり、より深く考え知ることができます。探究学習のテーマとしては以下がおすすめです。

・身近な疑問を発端とするテーマ
・深堀りが可能なテーマ
・多様な解釈が可能なテーマ

探究学習における先生の役割

探究学習において、先生はあくまでもサポートに徹する必要があります。ここからは、生徒の状況に応じて求められる先生の役割について解説します。

コーチング

探究学習におけるコーチングは、生徒から意見や考えを引き出す手法です。
そのため、コーチングでは、先生が答えを与えたり、アドバイスしたりすることはありません。その代わり、問いかけと聞き取りを行います。「どうしてそう思ったのか?」と問い、相手の気持ちや考えを聞くことに徹します。そうすることで、生徒にとっても考えるきっかけになり、より課題に対して真摯に向き合おうとする気持ちが生まれます。コーチングで相手の考えを引き出し、自発性を高めるサポートをしましょう。

ティーチング

ティーチングはその名の通り「教える」もので、先生が持っている知識や経験のノウハウを生徒に教えることです。
コーチングはこちらから答えを伝えず、相手の考えを聞くのに対し、ティーチングではこちらから答えを伝え、相手を指導します。スピード感をもって進められる半面、一方的なコミュニケーションになりやすいので注意が必要です。ティーチングは、あくまでも生徒のスキルや能力などが乏しく、1人ではできないときに使います。ティーチングばかりを使うのではなく、必要に応じてティーチングとコーチングの両方を使うことが大切です。

メンタリング

メンタリングとは、メンターとなる先生が、生徒に対して対話を重ねていき、気づきや答えを導き出す手法です。
コーチングのように一方的に教えるのではなく、どうやったら課題を解決できるのかを生徒と同じ目線で考え、対話を重ねます。同じ目線で考えるので、必要に応じてアドバイスをしたり、先生の意見を伝えたりもします。また、メンタリングでは課題の解決のための対話だけでなく、生徒の悩みなど精神的な面についてのケアも求められます。生徒との対話を楽しみながら、生徒と信頼関係を構築していきましょう。

ファシリテーション

ファシリテーションとは、先生が生徒に対して探究学習を促す行為をいいます。
いざ探究学習を始めるとなっても、生徒はどのようにして進めていったらいいかが分かりません。そこで、先生がファシリテーションを行い、次に何をしたらいいかを生徒に示していきます。ファシリテーションを行うときは、方向性を指し示すだけに留まり、中立な立場で行うことが大切です。先生が意見を言ったり、具体的なやり方までを指導する必要はありません。生徒の自発性に任せ、生徒の行動をサポートしていきましょう。

まとめ


探究学習の主役は生徒です。いかにやる気を引き出し、自発的に情報を収集し、分析すること、そこからどんな学びが得られるのかを先生はサポートしていく必要があります。そのためにも、どのポイントでアドバイスなどの助言を入れるべきか、生徒によっても探究学習が得意な子もいれば、問題が明確になっておらず難しい子もいます。探究学習を通して生徒の主体性を育てていきましょう。

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