オルタナティブ教育と学校教育の違いは?特徴とメリット・デメリット

2023/02/22(水)

多様性

保護者

オルタナティブ教育とは、主流な教育に代わる新しい教育のことです。フリースクールやホームスクーリングを指す場合もありますが、この記事ではいわゆる伝統的な学校とは一線を画した、独自の教育法を展開する学校で行われる教育を指します。
「オルタナティブ教育と学校教育との違いは?」
「具体的にどのような教育が行われているのか?」
上記のような疑問を持たれる方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、オルタナティブ教育の意味や内容について解説します。具体例を交えつつ詳しく説明するので、オルタナティブ教育の概要や特徴を知りたい方は必見です。

オルタナティブ教育の定義とは

オルタナティブ教育とは、学校教育法などの法的根拠を有さない非正規の教育機関で行われるされる教育のことを指し、「非伝統的な教育」「教育選択肢」と呼ばれる場合もあります。オルタナティブ教育の大きな特徴は、個性や主体性を重視し、一般の学校では実施しにくい新しい取り組みを行っていることです。例えば、クラスの人数を制限したり、講義形式でなく子ども同士が対話をする形式の授業形態を取ったりなど、多様な取り組みが行われています。

文部科学省が管轄する学校教育との違い

文部科学省管轄の学校教育とオルタナティブ教育では、運営制度や教育方針が大きく異なります。文部科学省発令の学校教育法で定められている学校の種類は下記の8つです。

・幼稚園
・小学校
・中学校
・高等学校
・中等教育学校
・特別支援学校
・大学
・高等専門学校

これらは総称して「一条校」と呼ばれる学校です。一条校では、文部科学省の定めたルールにもとづいて、目的や学習内容が定められています。一方でオルタナティブ教育を行うスクールは、文部科学省の定めたルールではなく、独自の理念をもとにした教育方針を設定しています。

主なオルタナティブ教育の種類は7つ|それぞれの特徴を解説

オルタナティブ教育の主な種類は下記の7つです。

・シュタイナー教育
・モンテッソーリ教育
・レッジョ・エミリア教育
・ドルトンプラン教育
・サドベリー教育
・フレネ教育
・イエナプラン教育

ここでは、各教育の特徴をまとめてご紹介します。

シュタイナー教育

シュタイナー教育は、1919年にRudolf Steiner氏によって考案されました。シュタイナー教育が目指すところは、身体・頭・心のバランスが取れた人間を育成することです。1つの教科を集中的に学ぶエポック教育や芸術活動、静かな環境づくりなどを行うことが大きな特徴です。

モンテッソーリ教育

モンテッソーリ教育とは、1907年に医者のMaria Montessori氏が考案した感覚教育法です。モンテッソーリ教育の根底には「子どもには自分で自分を教育する力がある」という自己教育力があり、これを存分に伸ばすことを目指して教育が行われます。異年齢の子どもを縦割りで保育したり、教具と呼ばれるおもちゃを使用して感覚器官の発達を促したりするなどの取り組みがなされています。

レッジョ・エミリア教育

1963年、教育家のLoris Malaguzzi氏が北イタリアのレッジョ・エミリア市で開発したのがレッジョ・エミリア教育です。「子どもには百とおりある」という信念のもと、子どもの意思や個性を尊重することを特に大切にしています。特徴的な活動として、プロジェクトと呼ばれる長時間の探求学習や、保育ドキュメンテーションと呼ばれる記録を通じて子どもの自主性や興味を伸ばす活動が挙げられます。

ドルトンプラン教育

ドルトンプラン教育は、1908年にドイツのHelen Parkhurst氏により提唱されました。ドルトンプラン教育で最も重視されるのが自主性と社会性です。異年齢の子どもたちが集う環境で、教師が1人1人の能力に合わせた学習計画を作成し、個別に指導していくという手法をとっています。

サドベリー教育

サドベリー教育は、1968年創設のサドベリー・バレー・スクールで行われている教育に賛同する機関が行う教育です。個性や自主性を重んじており、自由度が高いところが大きな特徴です。時間割・クラス・学年・授業・テストがなく、子どもが学びたいと思ったことをそのときに行うという教育を行っています。

フレネ教育

フランスの小学校教師であるCelestin Freinet氏が提唱したのがフレネ教育です。フレネ教育では自主性や表現力を高めることが重視されています。自分で決めた活動計画表に従い、マイペースに学習する学習スタイルが特徴です。自由作文に力を入れており、子どもが書いた作文を教材として活用する取り組みが行われています。

イエナプラン教育

イエナプラン教育は、ドイツにあるイエナ大学のPeter Petersen氏によって提唱されました。1人1人を尊重しながら、自立と共生を学ぶことを目的とした教育です。大きな特徴は「会話・遊び・仕事・催し」からなる4つの基本活動を循環的に行うことです。また、各教科の区別をつけない「総合的な学習」が実施されています。

オルタナティブ教育の4つのメリット

オルタナティブ教育を受けることのメリットとして、下記の4点が挙げられます。

1.学校と家庭の間で教育観の齟齬が少ない
2.少人数制できめ細かい指導ができる
3.学習指導要領に縛られない教育ができる学習指導要領に縛られない教育ができる
4.学校に馴染めない子どもの受け皿になる

それぞれ詳しく見ていきましょう。

学校と家庭の間で教育観の齟齬が少ない

まず、学校と家庭の間で教育観の齟齬が少ない点は大きなメリットです。例えば、公立の学校であれば、担任の考え方や地域性などによって教科や生活の指導方法は大きく左右されやすいものです。一方、オルタナティブ教育の場合は、教育方針がはっきりしていることに加え、教員も同じ意識をもって指導に当たることになります。そのため、オルタナティブ教育では入学前後でイメージのギャップが生じにくくなります。また、教育方針がはっきりしているため、家庭の希望に合った学校を選ぶことも比較的容易です。「思ったような教育・実践ではなかった」というような後悔は生まれにくいといえます。

少人数制できめ細かい指導ができる

オルタナティブ教育では、少人数制のきめ細かい指導を受けることができます。オルタナティブ教育を行うスクールでは、公立学校よりも少人数での指導を行っているところがほとんどであるためです。子ども1人1人に目が届きやすいため、教員にとっては個人に合わせた指導をより行いやすい環境となっています。

学習指導要領に縛られない教育ができる

学習指導要領に縛られない教育が受けられる点もメリットとして挙げられます。先述した一条校では、決められたカリキュラムを定められた授業時数分行うことが義務付けられているため、これを大きく逸脱することはありません。そのため、全国どこの学校に通ったとしても教育内容は基本的に同じです。対してオルタナティブ教育を行うスクールでは、子どもの個性を尊重して学習内容や生活ルールを決める場合が多いです。そのため、オルタナティブ教育を行うスクールでは一条校よりも柔軟に教育内容を決定でき、子どもの個性をより伸ばすことができると考えられます。

学校に馴染めない子どもたちの受け皿になる

オルタナティブ教育は、学校になじめない子どもたちの受け皿になることもあります。不登校で集団に入ることに抵抗がある子どもや、発達特性を抱えており講義形式の授業では理解が難しい子どもにとっては、一般的な学校生活は苦痛に感じられることがあります。オルタナティブスクールは、少人数指導や対話式授業を採用しているところが多く、上記のような学校に馴染みにくい子どもにとって生活しやすくなることが期待できます。文部科学省は2017年2月に「教育機会確保法」を施行しました。これは不登校の児童が教育の機会を失わないようにすることを目的とした法律で、学校以外にも学びの場を持つことが認められています。学びの場の多様化がより強く求められる現在、受け皿としての役割への期待はより一層高まっているといえます。

オルタナティブ教育の4つのデメリット

オルタナティブ教育を受けることのデメリットとしては下記の4点が考えられます。
1.スクールに通っても法的に出席扱いにならないことがある
2.スクールの数が少ない
3.家庭の費用負担が大きい
4.高等部まで併設しているスクールが少ない

それぞれ詳しく解説します。

スクールに通っても法的に出席扱いにならないことがある

オルタナティブ教育を行うスクールに通っても、法的に出席扱いにならない場合があります。多くのスクールは文部科学省からの認可を得ていないため、出席しても習い事や課外活動と同等の扱いとなります。そのため、スクールを卒業しても原則小学校・中学校の卒業資格を得られません。そこで、スクールに通う場合は就学義務を果たすために地元の小中学校に籍を置き、欠席として扱ってもらいながら通うという手法が一般的です。しかし、2017年2月の「教育機会確保法」により、スクールの出席日は公立学校でも出席として扱う自治体が増えてきました。オルタナティブ教育を行うスクールも、教育の場としての立場が徐々に認められてきているといえるでしょう。

スクールの数が少ない

オルタナティブ教育を行うスクールの数は全国で400~500校、東京都でも20校前後といわれており、数が限られています。さらに、一口にオルタナティブ教育といっても、どのような教育を行うかは各校によって大きく異なります。オルタナティブ教育を受けたくても近隣に希望する教育が受けられるスクールがないという場合も少なくないようです。

家庭の費用負担が大きい

オルタナティブ教育を行うスクールに通う場合、費用的負担が大きいことは1つのデメリットです。オルタナティブ教育を行うスクールは多くが文部科学省からの認可を得ていないため公的な金銭的支援がなく、学費は原則的に保護者が全額負担します。そのため、金銭的に余裕のある家庭の子どもしかスクールに通えないという問題も生じています。

高等部まで併設しているスクールが少ない

オルタナティブ教育を行うスクールは小学校あるいは中学校までで、高等部まで併設している学校はほとんどありません。スクールに通う生徒が高校へ進学する場合は一条校へ入学することになります。しかし、スクールと一条校では勉強法などにギャップがあり、戸惑いが生じることも想定されます。スクールを希望する場合は、高校以降の進路について頭に入れておくといいでしょう。

オルタナティブ教育を行っている認可私立学校もある

オルタナティブ教育を行っている学校の多くは文部科学省からの認可を得ていませんが、中には文部科学省の認可を受けた一条校も存在します。例えば、学校法人北海道シュタイナー学園いずみの学校が挙げられます。当校では、学習内容は学習指導要領を基本としつつ、シュタイナー教育の理論にもとづき、毎朝2時間、3~4週間かけて1つの教科・1つのテーマを学ぶ授業形態をとっています。イエナプラン教育実践校である学校法人茂来学園大日向小学校・大日向中学校では、「学習指導要領にもとづいた教育を行う一条校である学校の新たな在り方を示すこと」を目指しています。学習指導要領という枠の中で、異年齢グループで学んだり、自ら学習計画を立てて自律的に学習したりするといった、イエナプランのメソッドを取り入れています。認可私立学校で行われる教育は、教育基本法や学校教育法にもとづいた学習内容と、独自のカリキュラムを融合させているのが特徴です。

まとめ

今回は、オルタナティブ教育の意味や特徴についてご紹介しました。一般的な学校教育に慣れている私たちにとって、子どもの個性を尊重し独自の教育方針を持つオルタナティブ教育は特異な存在だと感じられるものです。しかし、伝統や当たり前にとらわれないオルタナティブ教育の取り組みは、新たな教育の在り方についてヒントを提示してくれる可能性があります。多様な教育の場を確保するという社会のニーズから、オルタナティブ教育への期待は近年ますます高まっているといえるでしょう。

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