個別最適化学習とは?内容や具体的な取り組みとメリット・デメリット

2024/02/29(木)

文部科学省の「一人も取り残さない学習」といったコンセプトを掲げ、導入された個別最適化学習。GIGAスクール構想の重要な狙いの1つとして位置づけられている新たな教育スタイルです。この記事では、教育者・学校の先生に向けて、まだまだ文化の浅い個別最適化学習の内容や具体的な取り組み、メリット・デメリットについて解説します。併せて、効果的に個別最適化学習を進める方法についても紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

文部科学省が推進する個別最適化学習とは

個別最適化学習とは、生徒1人1人の特性や理解度に応じて、最適化させた学習を提供する教育スタイルのことです。文部科学省が推進する「1人も取り残さない学習」を掲げ、特別支援学級で過ごす生徒も含めた学習レベル向上を目指します。ここでは、文部科学省が推進する個別最適化学習の目的や、特徴である「指導の個別化」「学習の個性化」の2点についてご紹介します。

指導の個別化

個別最適化学習では、指導の個別化を目的としています。指導の個別化とは、生徒1人1人に合った目標や課題を設定し、それらを達成できるように個別指導をしていく教育方法のことです。達成したい目標や抱えている課題に対して、しっかりとゴールを作ってあげたり、早く目標や課題をクリアできた学生には類似課題や発展課題を用意してあげたりなど、柔軟に指導できるのが指導の個別化の特徴です。生徒1人1人によって学習のペースや理解度は異なります。指導の個別化によって、学習ペースや理解度が遅い学生に対してもアプローチできるため、学内の全体レベルが期待できます。

学習の個性化

個別化最適化学習を取り入れることで、学習の個性化に繋がります。学習の個性化とは、生徒自身が個人的に興味があることを学習したり、アウトプットの表現を自分に合った方法で行ったりすることです。学習の個性化があることで、学生1人1人が自分に合うものを考え、自発的に人に伝える自主性などが磨かれます。指導の個別化と組み合わせながら、生徒1人1人が考え、選ぶことが重要です。教師もそのことを理解し、生徒が自ら考え、選べる環境をつくる必要があります。

個別最適化学習はGIGAスクール構想の重要な狙いの1つ

個別最適化学習は、2019年度から開始されたGIGAスクール構想の重要な狙いの1つであり、コンセプトの1つとして「個別最適化学習」が掲げられています。そこで、さらに個別最適化学習の狙いとして下記の3つをご紹介します。

・学校における教育データの利活用促進
・教育ビッグデータの利活用のための環境整備
・ハイブリッドな学びの推進

1つずつ順番に見ていきましょう。

学校における教育データの利活用促進

GIGAスクール構想では、学校における教育データの利活用促進が狙いの1つに挙げられます。GIGAスクール構想では国際的な標準を参考にしつつ、個別最適化学習の標準化を推進しています。また、将来的な学校内外での教育データの連携を見据えたデータの蓄積や流通の仕組み構築に向けて、関係省庁間で検討中です。さらに、学校における教育データの利活用促進を行うためにも、教育の目指すべき方向性を定めたロードマップを提示することが必須項目となっています。

教育ビッグデータ利活用のための環境整備

教育ビッグデータを利活用するための環境設備も、GIGAスクール構想の狙いの1つです。GIGAスクール構想では、教育ビッグデータのデータ収集のために、特定の教育現場を対象に教育分野の情報システムの在り方について具体的な対応方法や課題を整理しています。また、さらなる教育環境の整備のために、教育現場で見られた教育実践の好事例を取り込んだプラットフォームの構築に向けた検討も行われています。

ハイブリッドな学びの推進

GIGAスクール構想では、個別最適化学習を取り入れることで、ハイブリッドな学びの推進を狙いに掲げています。狙いを達成するためにも、GIGAスクールでは、下記の取り組みが行われています。

・教育現場と企業との協力による実証
・多様な人材が教育に関われるように、特別免許状の見直し
・高等学校において、遠隔授業を実施する際、受信側の教室における教師以外による学習支援を特例的に可能とする体制改善

個別最適化学習を取り入れていることで、教育現場が日々変化しています。ハイブリッドな学びの推進を達成するためにも、今後さらなる変化が訪れるでしょう。

個別最適化学習の3つのメリット

個別最適化学習のメリットは以下の3つです。

・生徒の個性や理解の状況に合わせた学習を提供できる
・蓄積データの活用により指導の水準が上がる
・授業の効率が向上する

1つずつ順番に見ていきましょう。

生徒の個性や理解の状況に合わせた学習を提供できる

個別最適化学習を取り入れることで、生徒の個性や理解の状況に合わせた学習を提供できます。個別最適化学習で導入するICT教材では、文字だけでなく画像や動画などを組み合わせた学習が可能になります。指導方法の幅も広がるため、さまざまな生徒への学習を提供できます。また、ICT教材では生徒の理解状況をデータベースで取得可能です。理解の状況に合わせて指導方法を変えられるため、生徒の理解度を高め、学習スピードを早めることができます。

蓄積データの活用により指導の水準が上がる

個別最適化学習では、蓄積データの活用により指導の水準が上がります。個々のデータだけでなく、AIにより他の学習者の分析結果もデータとして蓄積していきます。また、そのデータを基にどういった指導方法が良いのかといったことも、AIによって自動で抽出可能です。そのため、なんらかの課題を抱える生徒と似たような学生を蓄積データからピックアップすることが可能になり、ピンポイントで指導対応できます。今後も、さらに蓄積データが増えていくため、指導の水準が上がり続けると予測されます。

授業の効率が向上する

個別最適化学習を取り入れることで、授業の効率が向上します。個別最適化学習では、文章だけでなく、画像・動画・グラフ・表など様々な伝え方を活用するため、指導の幅が広がり、生徒の理解度も高まります。また、1人1台の端末が手元にあれば、細かな文字や情報も問題なく確認可能です。黒板から席までの距離によって生まれるアドバンテージがなくなることで、授業のやり易さや生徒の理解度のチェックが容易にできます。

個別最適化学習の3つのデメリット

個別最適化学習のデメリットは、以下の3つです。

・導入・維持コストの負担がある
・現場によって環境整備の状況にばらつきがある
・多様な教材やシステムの活用に対応する必要がある

それぞれ1つずつ順番に見ていきましょう。

導入・維持コストの負担がある

個別最適化学習を取り入れることで、導入・維持コストの負担がかかります。個別最適化学習には、タブレットやスマートフォンの購入、インターネット環境の設備設置など、さまざまな投資が必要になります。補助金を利用できたとしても、導入コストだけで半分ほどの負担が必要です。また、デバイスや設備が故障した際には、修理費用が必要になります。自宅学習と組み合わせると、生徒のインターネット環境設置も必要になるため、導入・維持コストの負担は大きなデメリットとして挙げられます。

現場によって環境整備の状況にばらつきがある

個別最適化学習のデメリットとして、現場によって環境整備の状況にばらつきがあることが挙げられます。その理由は、新型コロナウイルスが流行したことで、前倒しでICT環境の導入が進んでいる地域があったり、インターネット環境の整備が不十分な学校があったりなど、地域によってコストを負担できる割合が異なるためです。また、生徒側も、デバイスを購入したり、自宅のインターネット設備を整えるだけの費用を持ち合わせていない場合があります。

多様な教材やシステムの活用に対応する必要がある

個別指導学習を行うためには、多様な教材やシステムの活用に対応する必要があります。先生によっては、多様な教材やシステムに対応ができないケースがあります。その結果、授業の質に差が出やすいため、注意が必要です。また、どのような指導場面でどういった教材やシステムの活用が必要になるのかについても、検証が不十分です。セキュリティ確保やプライバシー保護を重視しすぎていることも、多様な教材やシステムの活用に対応できていない理由に挙げられます。

個別最適化学習は協働学習との一体的な充実を図ることが大切

これからの個別最適化学習は、協働学習との一体的な充実を図ることが大切です。なぜなら、これからの学生1人1人には、他者を価値のある存在として尊重し、多種多様な人材と交わりながら社会的変化を乗り越え、持続可能な社会の作り手となることが求められているからです。そのためには、学校内の関わりだけではなく、さまざまな考え方や価値観を持った人材との交流が必要不可欠です。異学年の子ども・他校の子ども・地域の住民・技術士や消防員などの専門家など、あらゆる立場の人と交流する機会を積極的に設けましょう。そうすることで、学生1人1人の成長や発達の推進が行われ、幅広い価値観や考え方を身に付けられます。

個別最適化学習を効果的に進めるポイント

個別最適化学習を効果的に進めるポイントは、以下の2つです。

・データの十分な活用
・先生の指導力向上と連携

それぞれ見ていきましょう。

データの十分な活用

個別最適化学習を効果的に進めるためにも、教育ビッグデータを十分に活用しましょう。教育ビッグデータを活用すれば、生徒1人1人の学習状況や理解度などを的確に把握できます。また、生徒自身が自らデータの活用を行ったり、学力定着を促したりも期待できます。より個別最適化学習を効率的に進めるために、AIを活用するのも1つの手段です。AIが学習履歴を分析すれば、生徒1人1人に合わせた教材や学習内容を明確に教えてくれるため、個別最適化された学びの実現が可能になります。

先生の指導力向上と連携

個別最適化学習を効果的に進めるポイントとして、先生の指導力向上と連携が挙げられます。いくら1人1人に合った学習内容を明確にしたり、データの活用を行ったりしたところで、先生の指導力が劣っていたり、他先生との連携が上手くいっていなかったりすれば、個別最適化学習をスムーズに進められません。多種多様な学生の成長や発展を促すためにも、先生の指導力向上は不可欠です。個別最適化学習を効果的に進めるためにも、データの十分な活用とともに、先生の指導力向上や先生同士の連携を意識しましょう。

まとめ

この記事では、個別最適化学習の内容や具体的な取り組み、メリット・デメリット、効果的に個別最適化学習を進める方法についても紹介しました。個別最適化学習は、まだまだ導入されたばかりの教育スタイルで、課題が多く残っています。しかし、誰も取り残さない学習スタイルとして、今後の教育現場や学生の成長・発展のきっかけになることが期待されます。今後も発展していくであろう個別最適化の動向をチェックしていきましょう。

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