主体的に学習に取り組む態度とは?意味や評価の観点、趣旨を分かりやすく解説

2023/04/04(火)

学習指導要領が変わったことに伴い、評価の仕方も変わりました。新たな評価観点のうち「主体的に学習に取り組む態度」については、従来と内容が大きく変わったことに加え、表現が抽象的であることから「分かりにくい」「評価のイメージが湧かない」と感じている教員も多いのではないでしょうか。そこで本記事では「主体的に学習に取り組む態度」の意味や評価基準・評価の方法を詳しく解説します。教育に携わる方は本記事をぜひ参考にしてください。

新しい学習評価の観点「主体的に学習に取り組む態度」とは


「主体的に学習に取り組む態度」とは、新しい学習状況評価における3観点の1つです。小学校・中学校・高校まで共通して用いられます。従来は4つの観点が設けられていましたが、学校教育法の第30条に沿って、今回新たに3つの観点に変更されました。詳しくは下記の通りです。

中でも大きな変化は「関心・意欲・態度」が「主体的に学習に取り組む態度」に置き換わったことです。中央教育審議会の教育課程部会から平成31年1月に出された「児童生徒の学習評価の在り方について」の報告において、「主体的に学習に取り組む態度」の評価方法は下記のように定義されています。

「主体的に学習に取り組む態度」の具体的な評価の方法としては、ノートやレポート等における記述、授業中の発言、教師による行動観察や、児童生徒による自己評価や相互評価等の状況を教師が評価を行う際に考慮する材料の一つとして用いることなどが考えられる。その際、各教科等の特質に応じて、児童 生徒の発達の段階や一人一人の個性を十分に考慮しながら、「知識・技能」や 「思考・判断・表現」の観点の状況を踏まえた上で、評価を行う必要がある。

引用元:「主体的に学習に取り組む態度」の学習評価の在り方

「主体的に学習に取り組む態度」を構成する2つの側面

「主体的に学習に取り組む態度」は下記2つの側面によって構成されており、教員には両方を踏まえて評価することが求められています。

・粘り強く取り組もうとする側面
・自己の学習を調整しようとする側面

後者の「自己の学習を調整しようとする側面」とは、自らの学習状況を把握し、学習の進め方を試行錯誤するなどの意思的な側面を指します。例えば子どもがテストを返却された際、間違えた問題をチェックし、間違えた理由を考え次に生かしていくというような行動がこれに該当します。「粘り強く取り組もうとする側面」が行動に表れやすいのに対し、「自己の学習を調整しようとする側面」は内面的で評価しづらい性質があります。後者を適切に把握するために、教員は生徒が自ら学習の振り返りができるような発問をする・考えを記述したり話し合ったりする場面を設けるなどの工夫が必要です。

「主体的に学習に取り組む態度」の評価方法と「関心・意欲・態度」との違い


「主体的に学習に取り組む態度」の評価は、「生徒が主体的な学びの過程に向かっているか」という観点から生徒の関心・意欲・態度などを見取るという方法で行われます。従来の「関心・意欲・態度」と大きく違うのは、表面的な行動に捉われずより生徒の内面に着目しようとしている点です。「関心・意欲・態度」の評価では正しいノートの取り方や挙手の回数など表面的な行動の一部を捉えて評価がなされているという指摘がありました。これを受けて「主体的に学習に取り組む態度」では、学習内容に関心を寄せることに加えて「よりよく学ぼうとする意欲をもって学習に取り組む態度」を評価するという趣旨が強調されています。

「主体的に学習に取り組む態度」の教育段階・教科別「評価の観点と趣旨」

ここでは「主体的に学習に取り組む態度」の評価の趣旨を、教育段階・教科別に紹介します。趣旨を十分に理解することで適切な評価につながりやすくなるため、実際に学習評価を行う方はぜひ参考にしてください。
引用元:各教科等・各学年等の評価の観点等及びその趣旨各教科等の評価の観点及びその趣旨(高等学校及び特別支援学校高等部)

小学校

ここでは小学校における「主体的に学習に取り組む態度」の評価の趣旨をまとめました。主要教科に絞って紹介します。

国語

言葉を通じて積極的に人と関わったり、思いや考えを広げたりしながら、言葉がもつよさを認識しようとしているとともに、言語感覚を養い、言葉をよりよく使おうとしている。

算数

数学的活動の楽しさや数学のよさに気付き粘り強く考えたり、学習を振り返ってよりよく問題解決しようとしたり、算数で学んだことを生活や学習に活用しようとしたりしている。

理科

自然の事物・現象に進んで関わり、粘り強く、他者と関わりながら問題解決しようとしているとともに、学んだことを学習や生活に生かそうとしている。

社会

社会的事象について、国家及び社会の担い手として、よりよい社会を考え主体的に問題解決しようとしている。

外国語

外国語の背景にある文化に対する理解を深め、他者に配慮しながら、主体的に外国語を用いてコミュニケーションを図ろうとしている。

中学校

中学校での「主体的に学習に取り組む態度」の評価の趣旨は下記の通りです。

国語

言葉を通じて積極的に人と関わったり、思いや考えを深めたりしながら、言葉がもつ価値を認識しようとしているとともに、言語感覚を豊かにし、言葉を適切に使おうとしている。

数学

数学的活動の楽しさや数学のよさを実感して粘り強く考え、数学を生活や学習に生かそうとしたり、問題解決の過程を振り返って評価・改善しようとしたりしている。

理科

自然の事物・現象に進んで関わり、見通しをもったり振り返ったりするなど、科学的に探究しようとしている。

社会

社会的事象について、国家及び社会の担い手として、よりよい社会の実現を視野に課題を主体的に解決しようとしている。

外国語

外国語の背景にある文化に対する理解を深め、聞き手、読み手、話し手、書き手に配慮しながら、主体的に外国語を用いてコミュニケーションを図ろうとしている。

高校

高校での「主体的に学習に取り組む態度」の評価の趣旨について下記にまとめました。

国語

言葉を通じて積極的に他者と関わったり、思いや考えを深めたりしながら、言葉のもつ価値への認識を深めようとしているとともに、言語感覚を磨き、言葉を効果的に使おうとしている。

数学

・数学のよさを認識し積極的に数学を活用しようとしたり、粘り強く考え数学的論拠に基づいて判断したりしようとしている。
・問題解決の過程を振り返って考察を深めたり、評価・改善しようとしたりしている。

理科

自然の事物・現象に主体的に関わり、見通しをもったり振り返ったりするなど、科学的に探究しようとしている。

地理歴史・公民

・地理歴史:地理や歴史に関わる諸事象について、国家及び社会の形成者として、よりよい社会の実現を視野に課題を主体的に解決しようとしている。
・公民:国家及び社会の形成者として、よりよい社会の実現を視野に、現代の諸課題を主体的に解決しようとしている。

外国語

外国語の背景にある文化に対する理解を深め、聞き手、読み手、話し手、書き手に配慮しながら、主体的、自律的に外国語を用いてコミュニケーションを図ろうとしている。

「主体的に学習に取り組む態度」の具体的な評価手段


「主体的に学習に取り組む態度」の評価にあたっては、評定に結びつく客観性を確保することが重要です。そのためにはエビデンスとして残る文章記録と、行動観察・面談を組み合わせることが有効です。以下で「主体的に学習に取り組む態度」の具体的な評価手段について詳しく説明していきます。

振り返りシートなど「文章記録」を主に用いる

「主体的に学習に取り組む態度」を評価する際に主に用いるのは、振り返りシート・レポート・ノートなどの文章記録です。文章記録を用いた評価は重点単元で単元のまとまりごとに実施するとよいとされています。以下では文章記録を用いることのメリットと評価基準の例を具体的に紹介します。

段落・評価に文章記録を用いるメリット

評価に文章記録を用いることには2つのメリットがあります。
1つ目は教員の評価活動の時間を保障できることです。子どもの発言・行動を評価対象とするならば、録画や録音をしないと教員は瞬時に消えてしまう動きや音を丁寧に見とることは困難です。加えて頻繁に録画や録音を行うことは難しく、見返すのにも多大な時間を要するという問題もあります。それゆえ教員の評価時間を確保するために、現実的には文章記録に頼らざるを得ないともいえます。
2つ目にどの子どもにも公平な評価時間を配分できることが挙げられます。子どもの発言や行動を評価対象とする場合、1人の教員がクラスの子ども全員の音や動きを公平に捉えることは現実的に困難です。しかし文章記録であれば教員が後からじっくりと見返せるため、1人1人を公平に捉えられます。これは公平な学習評価をすることにもつながります。

文章記録の評価基準の例

早稲田大学教職大学院教授の田中博之氏は「『主体的に学習に取り組む態度』の学習評価の在り方」という文書の中で、文章記録の評価基準の例として下記の10点を挙げています。

1.学習目標を自分が身に付けるべき資質・能力として書いている
2.間違いの修正や書き直しが書けている
3.友だちとの対話や交流を学びに生かした様子を書いている
4.もっとよい学び方はないか考えて書いている
5.学習の計画や見通しをもって取り組んでいる様子を書いている
6.考えや文章、作品を推敲したり改善したりした様子を書いている
7.間違えたり失敗したりしてもねばり強く取り組んだ様子を書いている
8.振り返りで自分の学習の成果と課題を書けている
9.自分の学習を改善する具体例を書いている
10.新たな疑問や学習課題を書いている
引用元:「主体的に学習に取り組む態度」の学習評価の在り方

田中氏は上記10項目を子どもの学びの姿として捉え、ここから各教科や領域の特徴に合わせて評価方法や基準を考えていくとよいとしています。さらにここからルーブリックと呼ばれる評価規準をレベル別に整理した判断基準の一覧表を作成し、教員による評価のぶれを防ぐことが重要だと提唱しています。

行動観察や面談を組み合わせる

「主体的に学習に取り組む態度」の評価は文章記録による評価を主としつつ、適宜行動観察や面談を組み合わせていきます。授業中の行動観察は評価がCになりそうな子どもを中心に行います。またC評価の子どもには改善に向けた指導をすることも大切です。

まとめ


「主体的に学習に取り組む態度」の評価にあたっては、子どもの表面的な行動の一部を捉えるのではなく、子どもの内面を見取る必要性がより強調されるようになりました。教員が子ども1人1人を公平に見取り学習成果を適切に把握するためには、文章記録を評価に用いることが有効です。「主体的に学習に取り組む態度」の評価は従来の「関心・意欲・態度」の評価と比べると慣れるまでには時間がかかるため、負担に感じる教員も多いかもしれません。しかし学習評価の改善によって、子どもたちの資質や能力の育成、子ども主体に学習を改善する姿勢が身に付きやすくなることなどが期待されています。子どもたちの健やかな成長に資するため、教員としては研修などを通じて適切な評価の方法を学んでいきましょう。

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