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教員の働き方改革はなぜ進まない?|改革推進に向けてできること

2023.04.18

近年教員の過酷な労働環境がニュースなどで話題になるケースが増えています。文部科学省は教員の労働環境を改善するために働き方改革を推進していますが、なかなか進んでいないのが現状です。そこで本記事では、働き方改革の概要や目的、進まない理由について詳しく解説します。併せて、教育現場における働き方改革の今後や成功事例についても紹介しますので、働き方改革を促進させたいと考える教職員の方はぜひ本記事をお役立てください。

文部科学省が推進する教員の働き方改革とは?始まりはいつから?

文部科学省が推進する教員の働き方改革とは「教師のこれまでの働き方を見直し、自らの授業を磨くとともに、その人間性や創造性を高め、子供たちに対して効果的な教育活動を行うことができるようにすること」を目指すものです。
引用元:文部科学省 学校における働き方改革について

近年、教員の身体的・精神的負担が増加していることが問題視されています。負担が増加した原因としては、時代の変化に対応すべく教育活動のさらなる充実・改善が求められていることや、いじめや不登校などのより複雑化・困難化する問題にも対応する必要があることが挙げられます。教員の負担の増加は教員勤務実態調査(平成28年度)の結果にも表れており、これを問題視した文部科学省は教員の働き方改革に乗り出しました。

教員の働き方改革推進の目的は主に3つ

教員の働き方改革の目的は、単に教員の労働環境を改善するだけではありません。働き方改革は教育業界全体にさまざまな恩恵をもたらすと期待されています。ここでは働き方改革の主な目的を3つ説明します。

1.教員の長時間労働の慢性化を解消する

働き方改革の目的の1つは教員の長時間労働の慢性化を解消することです。教員の労働時間は10年前と比較して大幅に増加しています。特に小中学校の教員の時間外労働は長く、その上長時間労働が慢性化している状態にあります。この状態を改善するためにも働き方改革が必要です。ここからは日本の教員の労働状況や、長時間労働に対して取られている対策について解説します。

日本の教員の平均労働時間は世界最長

日本の教員の労働状況を知るために、まずは国際教員指導環境調査(TALIS)の結果を見てみましょう。TALISとは初等・中等教育の学習環境・教員の勤務環境について調べるための国際調査です。2018年の結果によると、日本の教員の1週間当たりの勤務時間は小学校で54.4時間、中学校で56.0時間と、48カ国の調査参加国の中で最長でした。併せて、課外活動・事務業務・授業計画準備に充てる時間も最長となっています。調査へ参加した国の平均は38.3時間と、国際的に見ても日本の教員は労働時間が長く、過酷な労働環境にあることが分かります。

文部科学省はガイドラインを示して対策

文部科学省は教員の労働環境を問題視しており、抜本的な対策が必要だと考えています。具体的には教員の残業を抑制すべく、2019年に1カ月の時間外勤務が45時間を超えないように求めるガイドラインを全国の学校に通知しました。また部活動においても教員の負担を軽減できるよう、部活動日の削減や指導員の導入にも取り組んでいます。

2.教育の質が低下することを防ぐ

教員の働き方改革の推進は、教育の質が低下することを防ぐことにもつながります。教員が心身疲弊状態になれば、教育の質にも影響が出ると予想されます。また子どもたちに対して十分な教育を施せない可能性も高くなるでしょう。働き方改革により教員の心身の疲労を軽減することは、教育の質を保つためにも重要です。

3.採用倍率の激減などによる教員不足に対応する

教員の採用倍率は2000年度の13.3倍から、2021年には3.9倍にまで急激に低下しています。つまりこの20年で教員の採用倍率は1/3以下にまで激減したということです。採用希望者が激減している理由として、教育現場にいわゆる「ブラックな職場」というイメージが定着したことが挙げられます。モンスターペアレントへの対応や給与の引き下げなどが報道され、教職に対してネガティブな印象を受けた人は少なくないでしょう。これにより教員を志す人が減っていると考えられます。また団塊世代の退職による教員不足も深刻さを増す要因となっています。教員不足に対応するためにも教育現場の労働環境を改善し、採用希望者を増やすことが急務とされています。

どうして教員の働き方改革は進まないの?教員の現状とは?

近年教員の働き方改革の必要性が叫ばれていますが、なかなか改革が進みにくいのが現状です。ここからは教員の働き方改革が進まない理由について、教育現場の現状とからめながら説明していきます。

膨大な事務作業

教員は学習指導の他にも膨大な事務作業を抱えているため、そもそも労働時間を短縮することは困難です。TALISの2018年の調査によると、参加国の教員事務作業の平均時間は週2.7時間でした。これに対し日本の教員は事務作業に小学校で5.2時間、中学校で5.6時間を割いています。他国と比べ、日本の教員は倍近い時間を事務作業に割いていることが分かります。日本の教員が抱える事務作業の量は世界的に見ても膨大だといえるでしょう。

課外活動の指導

課外活動の指導も教員の労働時間を長引かせている原因の1つです。中学校で教員の勤務を長時間化させている最大の要因は、部活動指導であると指摘されています。文部科学省による「教員勤務実態調査(平成28年度)」によると、中学校の教員が部活動指導に費やした時間の平均は、平日が41分、土日が2時間9分でした。10年前の結果と比較すると指導時間は増え、特に土日に関しては1時間以上も増加しています。部活動の指導にやりがいを感じる教員は多いでしょう。しかし部活動指導に膨大な時間を費やさなければならないことは、教員の大きな負担になっています。また日本の学校には部活動指導を学校教育の重要な柱と捉える考えがあります。この考えが強固であるため、部活動の改革を行うこと自体も困難を極めています。

増え続ける教員の業務

社会の変化に伴い教員の業務が増え続けていることも、働き方改革が進まない要因です。現在社会構造が急激に変化していますが、教員には変化を踏まえつつ教育活動を行っていくことが求められます。教員はより高度な専門知識や技術を身に付ける必要があり、より多くの時間を教材研究や授業準備に割かなければならなくなりました。また、都市化や核家族化が進んだことで地域や家庭の教育力は低下しています。これにより学校や教員に生活習慣の育成などこれまで外部が担っていた機能が求められるようになりました。加えていじめや不登校・発達障がいの子どもへの対応など、学校教育における課題も一層複雑さ・多様さを増しています。これらの課題に対処するためには、膨大な時間がかかります。教員の業務は複雑さを増し、これに対応するために労働時間が長期化してしまうという現状があるようです。

人材の補充ができない

教員の働き方改革が進まない背景として、人材の補充が難しいことも関係しています。休職や産休・育休に対応するために人員を補充したくてもなり手がおらず、既存の教員でなんとかやりくりするというケースも少なくありません。教員として働くためには教員免許が必要であるため、転職サイトやハローワークなどで手軽に人材が集まるとは限りません。また以前は教員採用試験に不合格だった人が講師バンクに登録し休職者の代わりを務めることが多かったものの、近年教員採用率が高まったことに伴って講師バンクも枯渇しています。現在の教育現場では人員不足でも人材の補充ができず、1人当たりの業務負担が増えています。そして業務に疲弊して休職者・退職者がさらに増加するという悪循環をも招いています。

教員の働き方改革の今後|推進のためにできること

教員の働き方改革の推進はなかなか困難ですが、推進のために取れる対策も存在します。ここからは教員の働き方改革推進のためにできることを紹介していきます。

ICTの活用

ICTを活用することで、教員の業務は軽減できる可能性があります。ICTとは「Information and Communication Technology」の頭文字を取った略称で「情報通信技術」と訳されます。ICTはインターネット等を通じて人々をつなぐ役割を果たしています。ICTの活用方法として、例えば保護者との連絡ツールとして利用する方法が考えられます。現在学校と家庭で情報を共有するためのツールとしてはプリントの配布が一般的です。しかしお知らせをデジタルで行えば印刷等の業務を削減できます。また保護者向けアンケートをデジタル化すれば集計の手間を大幅に省くことも可能です。他にも保護者面談の日程調整や出欠管理などをICTによって行う取り組みも始まっています。ICTを活用して効率的な業務・学級運営を図ることは、教員の負担軽減のためにも有効だといえます。

徹底した労働時間の管理

教員の労働時間を短縮するためには、労働時間を徹底的に把握・管理することが必要です。公立学校教員の勤務時間の上限は、ガイドラインによって示されています。ガイドラインによると残業は月45時間・年360時間が上限です。教員の服務監督権者である教育委員会には、タイムカードやICカードを活用し、教員の労働時間が上限を超えないよう管理することが求められます。

学校の運営体制の見直し

教員の労働時間を短縮するためには学校の運営体制を見直し、これまで当たり前のように教員や学校が担ってきた業務を減らしていくことが重要です。例えば行事の在り方を見直して簡略化したり、不要な会議は廃止したりする取り組みが考えられます。

教員をサポートする人材の採用

教員の心身の負担を軽減するためには、教員をサポートする人材を採用することが有効です。部活動の指導においては、教員には時間を拘束されて身体的な負担がかかるだけでなく、専門外の指導を任されて精神的な負担を感じるケースもあります。外部の人材を採用して部活動の指導を依頼すれば、こういった心身の負担は軽減されるでしょう。さらに学校教育の情報化を推進するICT支援員を配置すれば、教員の事務仕事の削減を実現しやすくなります。また学習支援員を招いて障がいのある子どもの支援をしてもらえば、担任は全体の指導に集中でき、結果的に負担が軽くなります。講師バンクが枯渇している現状では教員免許を持った人材を採用するのは困難ですが、教員の業務を部分的に担ってくれる人材であれば比較的採用しやすいと考えられます。こういった人材が教員の負担を緩和してくれるでしょう。

教員の働き方改革の具体例を4つ紹介

ここからは、教員の働き方改革を成功させた学校の事例を4つ紹介します。

1.クラウド上で情報連携「福岡県久留米市立篠山小学校」

福岡県久留米市立篠山小学校ではクラウド上で情報連携を行い、事務作業の負担を大幅に軽減しました。例えば時間割を作成する際に、以前は印刷した紙に教員が予定を書き込み、調整の上で再度印刷するという段階を踏んでいました。これに対してICT導入後はクラウド上で共同編集を行うことで時間割を作成できるようになり、さまざまな手間が省けるようになりました。他にも出欠連絡をチャットで行ったり、毎日の伝達事項を教員端末や職員室の大型モニターで共有したりする取り組みも積極的に行っています。

2.教員業務支援員の導入「千葉県千葉市立加曽利中学校」

千葉県千葉市立加曽利中学校では、教員の業務を支援して負担軽減を図るために「教員業務支援員」を導入しました。支援員は教員が担っていた課題の印刷や消毒用具の管理などを行います。これにより教員の業務量や時間外勤務が削減できたと報告されています。

3.グループ担任制を導入「新潟県新潟市立内野中学校」

グループ担任制の導入によって教員の業務軽減に成功したのが新潟県新潟市立内野中学校です。グループ担任制とは複数人で1クラスを担任し、定期的にローテーションでメイン担任とサブ担任を交代する方法です。例えば一般的な担任制であれば1人で抱え込みがちな悩みや課題も、グループ担任制であれば複数人で共有できます。また初任の教員が保護者対応などの際にベテランの力を借りられるといったよさもあるようです。加えてグループ担任制であれば時差出勤を行うことも可能です。教員の事情に応じた働き方ができるのもメリットの1つといえます。

4.ICTを活用しペーパーレス化「岐阜県岐阜市立岐阜中央中学校」

岐阜県岐阜市立岐阜中央中学校ではICTを活用し業務を軽減させるための一歩として、まずは会議をペーパーレス化しました。これはICTに苦手意識がある教員も必然的にICTを使う機会を持てるようにすることを目的としています。さらにICT担当はICT利用の好事例を教員同士が共有できるようにしています。これにより、ICTに苦手意識を持つ教員も導入に積極的に挑戦するようになったそうです。

まとめ

教員の働き方改革の推進は、教員の心身を守るだけでなく、教員のなり手不足を解消したり教育の質を保ったりすることにもつながります。しかし教員の膨大な仕事量の削減は難しく、業務を分担するための人材も不足していることから、働き方改革はなかなか進みづらいのが現状です。大きな改革をすることは困難でも、学校の運営体制の見直しなどできそうなところから少しずつ労働環境を改善していくことは可能です。小さな積み重ねがやがて大きな成果につながっていくでしょう。

 

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