非認知能力は幼児期から鍛えよう!社会を生き抜く力を育てるには?

2023/10/17(火)

評価

教育現場で注目度が高まっている非認知能力。非認知能力は社会で生き抜くために必要な力だといわれています。しかし、非認知能力に含まれる力や学校現場における取り組み方について、疑問に思う教員の方も多いのではないでしょうか。本記事では、非認知能力の概要や重要性、注目されるようになった背景などについて分かりやすく解説します。学校教育で非認知能力を伸ばすためのポイントも紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

非認知能力とは?

非認知能力とは数値では表しにくい能力のことです。例として、以下のような能力が挙げられます。

・積極的に取り組む力
・粘り強く努力する姿勢
・円滑なコミュニケーションが取れる力
・仲間と協力する姿勢
・リーダーシップ
・モチベーションを高く保つ力
・思いやり

非認知能力は、社会に出て豊かな生活を送るために重要な力だといわれています。

認知能力との違い

認知能力との違いは、数値化できるか否かにあります。認知能力とは、テストで測定・数値化できる能力のことです。IQ(知能指数)をはじめ、記憶力、言語力、計算力などが認知能力に当たります。従来は、社会活動に影響を及ぼすのは認知能力だと考えられていました。しかし、現代ではあらゆる研究が進み、非認知能力の重要性が明確化されてきています。

非認知能力の基盤は3つに分類できる

ここでは、非認知能力の基盤となる3つの力について解説します。

①自分と向き合う力

自分と向き合う力は自分をコントロールする力ともいえます。自分と向き合う力には、以下のような能力が当てはまります。

・自制心(感情の起伏を抑える気持ち)
・忍耐力(苦しい状況でも踏ん張れる力)
・回復力(失敗から立ち上がる力)
・レジリエンス(ストレス状態から立ち直るために自分の気持ちを調整する力)

②自分を高める力

自分を高める力とは、自分を変革させたり、向上させたりする力のことを指します。自分を高める力の例は、以下の通りです。

・向上心
・意欲
・自尊感情(ありのままの自分を大事にする気持ち)
・自信
・楽観性

③他者とつながる力

他者とつながる力は、周りの人たちと協働できる力を意味します。例として、以下のような能力が挙げられます。

・コミュニケーション能力
・社交性(他者と上手く付き合う力)
・共感性(他者の言動・感情・思考などを理解する力)
・協調性(思考や価値観の違う他者と譲り合いながら協力する力)
・思いやり

なぜ非認知能力が注目されるようになったのか

非認知能力が注目されるようになった背景には、アメリカで行われたプロジェクトと新学習指導要領の施行があります。ここでは、それぞれの背景について見ていきましょう。

非認知能力の重要性が明らかになった「ペリー就学前プロジェクト」

1962年に開始された「ペリー就学前プロジェクト」によって、非認知能力の重要性が明確化されました。ペリー就学前プロジェクトとは、アメリカ・ミシガン州のペリー小学校付属幼稚園で行われたプロジェクトです。123名の3〜4歳児を2つのグループに分け、片方のグループのみに非認知能力の育成に重きを置いた就学前教育を行う実験が行われました。その後、対象となった子どもたちが年齢を重ねるとともに調査が行われ、現在でも追跡は続いています。ペリー就学前プロジェクトによって、就学前教育で幼児期から非認知能力を育んだ子どもたちは、就学前に教育を受けなかった子どもたちに比べて、大人になってからの人生の幸福度が高いことが分かりました。つまり、非認知能力は社会を豊かに生き抜くために必要な力であることが明らかになったのです。ペリー就学前プロジェクトで重要性が示されたことで、非認知能力は注目されるようになりました。

新学習指導要領「育成すべき資質・能力」の3つの柱にも非認知能力が挙げられている

2020年度から順次施行開始された新学習指導要領。そこで示されている「育成すべき資質・能力」の3つの柱に非認知能力が含まれています。新学習指導要領が示す資質・能力の3つの柱とは「知識及び技能」「思考力、判断力、表現力等」「学びに向かう力、人間性等」です。このうちの「学びに向かう力、人間性等」が非認知能力に当たります。また、非認知能力は認知能力の向上に必要な力だといわれています。認知能力を伸ばすためには、学習に向かう忍耐力や自分で考える力などの非認知能力が欠かせません。新学習指導要領で示されたこと、そして認知能力の育成に有効であることから、非認知能力の注目度が高まりました。

非認知能力が高い人の特徴

非認知能力が高い人には3つの特徴が見られます。ここでは、それぞれの特徴について解説します。

自己コントロール力が高い

自己コントロール力は、衝動に流されずに、我慢できる力を意味します。具体的には、以下のような特徴が見られます。

・誘惑に負けずに、目の前のことに集中できる
・ストレス下においても、冷静に行動できる
・長期目標を達成しやすい

自己コントロール力が高い人ほど、学業・人間関係・健康・経済など、あらゆる面で成功を収めています。

コミュニケーション能力が高い

コミュニケーション能力には伝える力と聞く力の両方が含まれています。相手の話に耳を傾け、尊重しながら自分の意見を述べられるのが、コミュニケーション能力が高い人の特徴です。また、コミュニケーション能力が高いと、自分が何かに困ったり悩んだりしたときに人を頼れるようになります。他者の手をうまく借りれるため、目標を達成しやすいのも特徴の1つです。

物事に積極的に取り組める

物事に積極的に取り組める特徴として、具体的には以下のようなものが挙げられます。

・好きな物事に夢中になれる
・他人からの指示ではなく、自分の意思で行動できる
・たとえうまくいかなくても投げ出さず、試行錯誤して解決しようとする
・失敗しても何度も挑戦する

何かに意欲的に取り組めることは、大人になってからも求められる力です。

非認知能力の測り方

現在、非認知能力を正しく測る方法は確立されていません。しかし、いくつかの教育機関では、非認知能力を測る試みが行われています。例えば、非認知能力が人間の内面の力であることから、パーソナリティ測定の尺度が用いられていました。また、学校現場では、教師の主観で生徒の性格を評価し、指導する取り組みが行われたこともあります。非認知能力は定義が曖昧なために、測定しようとすると生徒や教師の主観に大きく頼ることになってしまいます。しかし、正確な測定を行うのであれば、主観だけでなく客観的な評価も欠かせません。非認知能力を正しく測るためには、定義を明確にし、主観評価と客観評価が得られるようにする必要があります。

非認知能力が育つ時期

非認知能力は適切な時期に育てることが大切です。ここでは、非認知能力の育成時期について解説します。

幼児期から学童期に育てることが重要

非認知能力は日々の生活活動や遊びの中で伸ばすのが効果的であり、幼児期から学齢期は非認知能力を育てる活動を行いやすいといわれています。また幼児期から学齢期の子どもは、新たなことにチャレンジする力や多くの物事を吸収する力があるため、非認知能力に関するあらゆる力が伸びやすいと考えられています。幼稚園・保育園・小学校などの教育機関や各家庭での生活において、非認知能力を伸ばすアクティビティを積極的に取り入れることが重要です。

10代後半でも非認知能力を育てることは可能

幼児期から学齢期を過ぎてしまったからといって手遅れではありません。8歳までにある程度発達する認知能力とは異なり、非認知能力は10代後半でも鍛えられるといわれています。大人になって社会で豊かに暮らしていくために、10代後半からでも非認知能力の育成に取り組むことが大切です。

学校教育で非認知能力を伸ばすには

学校教育においても、非認知能力を伸ばす取り組みが必要です。ここからは、学校教育で非認知能力を育成するポイントを紹介します。

内発的意欲を尊重する

非認知能力を伸ばすためには、子どもの「やりたい!」を尊重して自由に活動させることが大切です。学校では、従来の一方通行型の指導ではなく、子どもが興味を持てるアクティビティを取り入れることが求められます。非認知能力を育てたい気持ちから、つい子どもたちを誘導したくなってしまう教師もいるのではないでしょうか。しかし、大事なのは子どもの内発的意欲です。子どもの意思を尊重することを意識しましょう。

考えさせる習慣を付ける

考える習慣を持つことで子どもの想像力は養われます。教師としては簡単に答えられる質問はすぐに解決してあげたくなるかもしれません。しかし、子どもが自分で思考をめぐらせたり推測したりすることで、想像力は伸びていきます。そのため、教師は子どもの「なぜ?」に対して、すぐに答えを与えないようにしましょう。

子どもの興味関心が育つ環境をつくる

子どもが何かに興味を持ったり課題を見つけたりすることは、探求心・行動力・協力する姿勢などの非認知能力が育つきっかけになります。学校では、子ども主体の教育であるアクティブ・ラーニングを実施することが大切です。子ども自身が試行錯誤したり、周りの仲間と意見交換したりする中で、非認知能力は伸びていきます。

結果だけではなく努力の過程を褒める

子どもが何かに取り組んだとき、結果だけを評価していては非認知能力は育ちません。過程を褒められた子どもは、自己効力感や自信が高まります。そのため、子どもがどのように努力してきたのかを振り返り、結果だけでなく過程を褒めることが大事です。

まとめ

非認知能力は積極性や思いやりなど、数値では表せない能力を指します。非認知能力は、子どもが社会に出たあとの生活を豊かにし、高い幸福度を得るために必要な力だといわれています。子どもの非認知能力を伸ばすためには、学校現場での取り組みも重要です。本記事でお伝えしたポイントを参考に、できるところから取り組んでみてはいかがでしょうか。

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