進む1人一台端末の活用!メリット・デメリットや運用のポイントは?

2024/02/22(木)

文部科学省から発表されたGIGAスクール構想によって、児童生徒が1人一台端末を活用できるような環境が整ってきています。1人一台端末を持つことに対して、不安を感じている方も多いでしょう。本記事では、1人一台端末化のメリットやデメリット、実際に運用する際に役立つ事例をご紹介します。

GIGAスクール構想のもと生徒・児童への1人一台端末の環境整備が進んでいる


文部科学省が推進する「GIGAスクール構想」のもと、生徒・児童へ1人一台の端末を配布したり、各学校に高速ネットワークを整備したりする取り組みが進んでいます。GIGAスクール構想は、学習指導要領改定を背景に、2019年に閣議決定されました。ICTを基盤とした先端技術の効果的な活用が求められています。GIGAとは、「Global and Innovation Gateway for All(全ての児童・生徒のための世界につながる革新的な扉)」を意味します。現在、小・中・高等学校では、どの程度端末の整備が整っているのかを見ていきましょう。

小・中学校の端末の整備状況

2021年7月末の時点で、小学校の96.2%、中学校の96.5%が「全学年」または「一部の学年」で端末の利活用を開始しています。「全学年」での利活用を見ても、小学校で84.8%、中学校で91.3%と大多数に普及しており、全ての児童生徒が学習用端末を活用できる日は近いと言えます。

高校の端末の整備状況

小・中学校で90%近く端末整備が進んでいる一方、高等学校では、2021年12月の時点でたったの30%(13自治体)です。小・中学校の端末整備には、GIGAスクール構想で国から新しく予算が設けられたため、円滑に整備が進みました。しかし、高等学校は予算の対象外であったため、整備に時間がかかっています。小・中学校から切れ目なく1人一台端末で学べる環境の整備が進められているものの、自治体によって整備方針や状況にばらつきが見られるため、高等学校で端末整備が完備されるまでもう少し時間がかかるでしょう。

1人一台端末の環境がもたらすメリット


1人一台端末を持つことによってもたらされるメリットは以下のとおりです。

・授業中に一人ひとりの反応が把握できる
・学習の個別最適化が可能になる
・生徒個人の意見の発信や共有が容易になる
・いじめなどの対策を個別に取りやすくなる

それぞれ詳しく説明します。

授業中に一人ひとりの反応が把握できる

1人一台端末を持っていると、授業中に児童生徒一人ひとりの反応が把握できます。今までは、教師が黒板を使って、複数の子どもに対して一方的な授業しかできませんでした。しかし、1人一台端末を使うことで、子どもたちが何をしているのか閲覧できるようになります。例えば、算数の授業であれば、問題に対してどうアプローチしたのかを把握できるため、一人ひとりの反応を踏まえた双方向型の授業を展開することが可能になります。

学習の個別最適化が可能になる

一人ひとりの児童・生徒に適した学習も可能になります。今までの授業形式では、全員が同時に同じ内容を学ぶ必要があったため、個人の理解度に応じた学習を提供することは困難でした。しかし、個別に端末を活用することで、児童・生徒の理解度に応じた個別学習が可能になります。学習履歴も自動的に記録されるので、教師側も進捗や理解度を問題なく把握することができます。

生徒個人の意見の発信や共有が容易になる

児童・生徒が、自身の意見を共有しやすくなる点もメリットです。従来の授業の場合、積極的な子どもだけが発言し、消極的な子どもは聴き手にまわる形が一般的でした。しかし、例えば端末のチャット機能を活用することにより、発言できなかった場合でも意見を発信しやすくなり、全体に共有しやすくなります。端末の機能を活用することで、より多くの子どもが発信・共有を行えます。

いじめなどの対策を個別に取りやすくなる

1人一台端末を活用することで、個別にいじめ対策をしやすくなります。アプリのメッセージ機能を利用することで、気軽に教師に相談が可能です。例えば、「STOPit」というアプリを使って、教育委員会などの相談員とチャットで相談・報告できる仕組みを導入している学校もあります。対面では言いづらいことも、端末を通してだと伝えやすくなるため、今後も様々な活用が期待できます。

1人一台端末の環境によるデメリットと対策


1人一台端末は多くのメリットがある反面、デメリットもあります。

・サイバー犯罪やいじめなどのトラブルに巻き込まれる危険がある
・端末の日常使いによって破損などのリスクが上がる
・年度更新作業などの負担が増える

それぞれ解説します。

サイバー犯罪やいじめなどのトラブルに巻き込まれる危険がある

サイバー犯罪やいじめといった、様々なトラブルに巻き込まれる危険があります。実際に行われた調査では、既に2割程度の子どもがトラブルを経験したと回答しました。フィッシング詐欺などの不正サイトへ接続をしてしまったり、共通のパスワードを利用して、児童・生徒内でなりすましをしていじめに発展したりすることがあるようです。しかし、これらは1人一台端末でなくても起こり得ることです。そのため、ツールの導入やパスワードの設定に関する教育など、対策をしっかり行い、学校全体を通してネットリテラシーを上げることが重要となります。

端末の日常使いによって破損などのリスクが上がる

端末を日常的に使うことで、落下などによる破損のリスクが上がることも懸念されています。修理の費用に関しては、各自治体の方針に従う形になるため、場合によっては保護者負担になる可能性もあります。責任の所在が曖昧な部分があるため、そもそも「誰が費用を負担するのか?」といった問題に発展することもあるでしょう。学校内で明確なルールを定めたり、端末の保障に加入したりすることでリスクを減らすことが可能です。

年度更新作業などの負担が増える

1人一台端末環境は、従来のコンピューター室とは別で年度更新作業が必要です。年度更新とは、アカウントや組織体制などのデータを、次年度に向けてアップデートする作業のことです。全ての端末の年度更新は教員にとって大きな負担になるでしょう。また、年度更新にかかる費用を、学校・教育委員会のどこが負担するのかといった問題にも繋がります。アカウントの命名規則を統一したり、利用アカウントと管理者を整理したりすることで、作業の手間を軽減できます。文部科学省により、年度更新のタスクがまとめられているので、スケジュールを立てて計画的に更新を行えるように準備することが大切です。

1人一台端末の活用において家庭と共有するべきポイント


1人一台端末を児童生徒が安心して使うために、保護者と協力して環境を整備する必要があります。各家庭と共有しておきたいのは、以下4つのポイントです。

・端末の取り扱いのルール
・インターネットや個人情報の扱い方
・健康面で配慮すること
・トラブル発生時の対応方法

それぞれ具体的に解説していきます。

端末の取り扱いのルール

端末を取り扱う際のルールを明確に定め、周知するようにしましょう。例えば、以下のような内容です。

・使用時間を守る
・パスワードを適切に扱うこと
・端末は落としたり濡らしたりしない
・学習以外の目的で使わない
・アプリのインストールや削除は学校の指示のもと行う

端末の取扱いに関するルールは、学校内で話し合って決めるのが良いでしょう。

インターネットや個人情報の扱い方

インターネットや個人情報の扱い方を正しく伝えることも重要です。インターネットの特性や個人情報流出時のトラブルなどもあわせて伝えられると良いでしょう。留意点の例は以下のとおりです。

・不適切なサイトにアクセスしない
・インターネット上のファイルをダウンロードしない
・他人に嫌な思いをさせることをネットに書き込まない
・許可なしで他人を撮影したり、録画・録音したりしない
・個人情報を書き込まない

健康面で配慮すること

端末に過度に依存してしまうと、健康面に影響を与える可能性があるため、健康に関する留意点も共有しましょう。利用時間の徹底など、児童生徒自身に端末使用上のリテラシーを身に付けてもらうのが理想的です。項目例は以下の通りです。

・目と端末の距離を30cm以上離す
・30分に1回は休憩を挟む
・部屋の明るさにあわせて画面の明るさを調整する
・就寝1時間前からは利用を控える

トラブル発生時の対応方法

どれだけ対応をしていてもトラブルに見舞われる危険性は常に存在します。トラブル発生時に適切な対応を迅速に取れるように、先生の連絡先や問い合わせ方法についても共有する必要があります。故障・破損・紛失・盗難・ネットトラブルなど、問題が発生した場合にとるべき手順や連絡先を、保護者・学校の間であらかじめ共有しておきましょう。

1人一台端末の活用事例


実際にどのように1人一台端末を活用したら良いのか、イメージができない方も多いかと思います。文部科学省のStuDX Styleに、実際の事例がまとまっているので参考にしてください。本記事では、以下2つの事例をご紹介します。

・家庭学習カードをクラウドで共有
・チャット機能を使った勉強会

家庭学習カードをクラウドで共有

家庭での学習カードをオンライン上で共有する取り組みです。家庭学習カードのフォーマットを、GoogleスプレッドシートやExcelを使って用意しておくことで、教師はオンライン上で学習状況を確認できるようになります。学習時間だけでなく、一言日記などを組み込むことも可能です。オンラインで作業を完了させることで、印刷・回収・配布といった作業が削減されます。

チャット機能を使った勉強会

チャット機能を使って、授業中に教え合いの場を設ける取り組みです。従来の授業であれば、伝える相手の席に行かないとコミュニケーションが難しかったのですが、チャットを活用することで気軽にコミュニケーションがとれます。例えば、算数の授業時に不明点が出た場合、不明点をチャットで共有することによって、友達からのコメントを参考に問題を解き進めていくことができます。使い方に関しては、あらかじめ児童生徒と一緒に考え、適切な使い方を共有しておくことが大切です。

まとめ


1人一台端末の環境は整ってきました。1人一台端末の導入は、学習の個別最適化や意見共有のしやすさといった利点がある一方、サイバー犯罪やいじめにつながる危険性ももあります。しかし、これらの問題は1人一台の端末配布がなくても起こり得ることです。メリットやデメリットをよく理解した上で、端末を有効かつ安全に活用していきましょう。

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