休校中も柔軟性と「すらら」フル活用でいつもどおりを実現
東海大学付属相模高等学校・中等部
東海大学付属相模高等学校・中等部は、1942年に東海大学の学園の原点「望星学塾」の開設に由来する。東海大学は幼稚園から大学院までを擁する大規模な教育機関。中高大の一貫教育で文武両道と文理融合を実現する教育を推進。部活動は全国レベルで数々の輝かしい活躍ぶりである。今回は、「すらら」導入から1年が経過する中等部に話しを聞いた。
説明を聞いて5分で心を掴まれた「すらら」
同校は2017年度からBYOD(Bring Your Own Device)によるiPadの導入を開始した。現在の高校1年生(今春から2年生)が中等部1年生の時からの導入だ。2021年度より、中等部1年生から高校3年生までの6学年全員が1人1台を所持することになる。
同校では、さまざまな学部に進学していく多様な生徒が同じクラスで学習を進める状況において、理解の深さや学力差が出る課題があったという。
技術科を担当する情報管理室・ICT教育推進委員の犬塚孝一教諭は、「『すらら』のことはiPad導入前から知っていました。教育ICT関連のセミナーに行った際、同じ会場で開催していた『すらら』の話しも聞いてみることにしたのです。説明を聞いて5分で、コレはいい、どうにか入れたいと思いました。学校で懸念していた課題と『すらら』の提供内容がとても合致していたからです」と語る。
「すらら」準備中にコロナ休校もすんなり移行
2020年2月末、コロナの影響で休校が決定した。ちょうど『すらら』導入の準備中で教員と生徒に説明をしたタイミングと重なった。活用計画は卒業式後からの予定だったが、緊急事態宣言が発令されるとわかったその日にアカウントを配布した。「それがむしろ良かったです。『課題はこれに配信されるからとにかくログインしてみて』と。ICTに頼らざるを得ない状況でしたから、休校中は『すらら』をフル活用しました」(犬塚教諭)。
「すらら」は中等部1~3年生まで全学年に5教科(国語、数学、英語、理科、社会)を導入した。その他にも日頃からGoogle Workspace(旧 G Suite)やYouTubeなどさまざまにICT活用をしていたことや、中等部では入学時に家庭に対して、学校でも家庭でもICTでの学習を推進している旨を伝えていることもあり、急な休校でもオンラインの移行がスムーズに行えた。
朝のホームルーム、授業、課題提示など、休校中もオンラインで問題に感じることはほとんどなかったという。「ただ生徒が学校にいないだけ。やっていることは同じでした。そうできたのは、教員が興味を持ってやってくれたからということもあります。こういう機会だし、いろいろやってみて面白いね、使えるね、教えて、とりあえずやってみようと。他の学年がやれば『そんなことやっているんだ?!』と別の学年でも動きがでました」。
すららカップ「大規模校の部」で首位独走
「すららカップ」は、すららの学習者同士が「努力の量」を競い合う恒例の大会。昨冬、第17回大会の学校対抗部門「大規模学校の部」で、同校は初参加にして見事1位を獲得した。23校がエントリーした中、2位以下の学校に大きなポイント差をつけての圧勝。中等部の全クラスに授業を持つ犬塚教諭は「絶対に1位を獲ろう!」と生徒を鼓舞していたというが、課題を増やしたわけではなく、基本的には「与えられた課題をしっかりやる」といつもしていることと同じだったという。「すららカップは努力したら評価されますし、自校や生徒個別の名前がサイトに出ていれば生徒も盛り上がります。今回は生徒自身がそれを知れたので、次は自分も掲載されたいとか、毎日ログインしてみようといったモチベーションにつながっているのは間違いないです」。
日頃、「すらら」は基本的に週1回、5教科とも授業で扱っている範囲を宿題や家庭学習として出している。課題は多くせず生徒の負担になり過ぎないよう、どの教科もすぐに終わらせられる量だという。また、授業後の復習や次の授業の予習にも活用しているという。中等部2年生を担当する社会科の石井朋之教諭は、生徒の取り組みや成績に表れた変化を複数挙げる。「試験前には自分が勉強している範囲を見せにきたり、教えてくださいと主体性が出てきたり。社会科で言えば、平均点が上がりましたし、またそれ以上に赤点が減少しました。それと、できるところからもう一つできるところに行くのは結構難しいと思うのですが、たとえば今まで70点ぐらいだった生徒が80点後半ぐらいまで取れるようにもなりました」。
犬塚教諭はすららの利点について「iPadが常に手元にあるため課題がサッとできます。休み時間などちょっとしたスキマ時間を上手に使って取り組む生徒もいます。学校でも家庭でもデバイス1つあれば完結できるのが『すらら』の大きな魅力。結果的に学習時間が増えてその効用は大きいです」と語る。また、従来であれば可視化できなかった生徒の取り組み過程が数値化されることもメリット。教員の主観によらない生徒の評価や個別の学習支援の助けにもなっている。
デジタルもアナログも最大に活かした学びを目指して
れまで高校3年生の担当で昨年4月から中等部に配属になったという石井教諭。1年前までICTの知識も経験も全くなかったという。「『すらら』も知りませんでしたし、iPadもみんなはアプリを使ってやりとりしているけれどわからなくて、はじめはきつかったです。でも休校中に使い方を覚える時間ができて助けられました。教員同士で教え合いながら、時間をかけて理解してだいぶ使いこなせるようになって、休校時もICTで授業が普通にできて、コロナ禍でも子どもたちの顔を見てやりとりできました。当校は犬塚先生が何年も前からICTを準備してくださっていたおかげもあり、大きく慌てることもなく行えました。もし授業ができなかったとしても『すらら』で自学ができ、かつ達成率も見えますから、状況を見て生徒に個別に連絡もできます。私は動画を織り交ぜたICTのの合わせ技もできるようなったので、どんどん発展できています」。
近くにいる教員同士でアドバイスしたり調整したり、一緒に気づきを増やせるコミュニケーションが日常的に頻繁にあるという。同校ではこうした教員のポジティブなつながりや順応性が、ICT活用を無理なくかつスピーディーに具現化できている大きな要因のようだ。
一方で反省点も見えてきた。この1年間を振り返って石井教諭は「ICTが便利すぎて使い過ぎた」と吐露する。ノートや黒板などアナログでやるべき大事なこともある。次の1年間も途切れることなく「すらら」を存分に使いながら、デジタルとアナログの効果的な使い分けを吟味して精査していきたいと抱負を語る。
犬塚教諭は、教室でもオンラインでも目的さえしっかり押さえておけばやり方は何でもありと語る。「その時々の状況に合わせて切り替えられる打ち手をたくさん持っていたら、学校の存在意義も広がってくると思います。数ある手法の中から何を選び取れるか。現状、ICTを使ってはいるけれど、活用しきれているか? そういったステージでまた授業や学びのスタイルがガラッとより良く変わってくると思います」。
ICT導入から5年目。教育の本質を根底に、学びの質の高みへ向けてさらなるステップアップを目指す。