「すらら」で教科横断のサポートと学習習慣の定着を実現
麗澤中学・高等学校
千葉県柏市に位置し、1万5000本もの木々が生い茂る広大な敷地に校舎を構える麗澤中学・高等学校。昨春、中学生向けに「すらら」の導入準備を進める中、コロナによる休校に見舞われた。当時の様子やその後の「すらら」活用など、同校の教諭と生徒に話を聞いた。
コロナ禍で「すらら」のスピード活用
同校がICT環境整備に着手したのは1995年。2つのコンピュータ教室を含め、生徒が使える常設のパソコン120台を準備した。DX推進チーム ゼネラルマネージャー野口紘司教諭は、生徒1人1台のロードマップを2014年に計画しはじめ、2020年には完遂するビジョンとし、6ヵ年での取り組みを粛々と進めてきたという。端末は、管理面で優れていることや生徒にタイピングを習得させたいなどの意図からChromebookを選定した。
2019年度に、中学1年生と高校1年生の新入生から1人1台Chromebookを配布し、校内全域でのWiFi設置を完了。2020年度は、中学1年生、中学3年生、高校1年生の3学年に1人1台を配布。さらに、コンピュータ教室のうち1室をグループワークができる多目的なICTルームとして改装。現在は、全学年がICTを活用できる体制が整っている。
同校では、ICT教材の利用経験はあったものの、中学生向けに適した教材を検討する中で「すらら」に出会ったという。自立した学習のサポート、生徒の学習状況とその成果の可視化などが決め手となり、2020年4月に「すらら」を正式に導入した。
導入が決まってすぐに新型コロナウイルス感染拡大による休校が決定し、遠隔学習への対応を迫られることとなった。「すらら」の導入決定から活用開始までわずか2週間しかない中、同校では活用開始に向けて念入りに会議を重ねた。新入生へのChromebookの配布は5月上旬の予定だったが、まずは「すららID」だけを配布し、家庭のパソコンやタブレット、スマホ等の端末を利用してもらうことにした。野口教諭は、「あの時期は保護者のテレワークなどと重なり、家で生徒が使える端末がないという家庭もありました。そのため、Chromebookを渡す日を急遽早めました。」
Chromebookの使い方の動画を制作して見てもらったり、家庭に一軒一軒電話して「すらら』の操作方法を説明したり、急ピッチながらも丁寧に、活用に向けた準備を整えた。保護者や学年の教員たちの協力もあり、休校中の家庭学習の基盤を整備することができたという。
「メッセージ機能」で教科横断のサポート、「すららカップ」でも一位に
学習機能はもとよりコミュニケーションに役立つ機能などさまざまな機能を搭載する「すらら」だが、同校では「メッセージ機能」を活用したユニークな取り組みが際立っている。「メッセージ機能」を活用し、生徒からの質問に対して教科・教員を横断してサポートしているのだ。もともとは、理科の通常授業において何でも自由に質問してよい時間を設けていたことが背景としてあり、「すらら」活用開始に伴い他の教科、教員にも横断して広がっていったという。
理科を担当する平井嵩人教諭は、リアルの授業で行っていた質問がデジタルに置き換わった形だと説明する。「生徒からの質問を複数教科の教員が共有するのを見て、他教科の教員も『これは自分の教科の視点からも答えられるな』と、生徒の質問にさらにフィードバックしてくれ、メッセージのやりとりに活気が出たように思います」。複数教科の教員が生徒への質問に回答することにより、生徒の理解に奥行きが生まれた。特に休校期間中は教員とのコミュニケーションが生徒の精神面の支えになったようだ。生徒と教員の信頼関係が強まり、教員間での情報共有も根付いたという。
2020年6月中旬に休校期間が終わり登校できるようになってからも、学校内の学習はスムーズだったという。休校中の時間割に「タイピング」を導入したことにより、生徒はスムーズにキーボード入力ができるようになった。生徒のタイピングの上達は例年より早いペースで、予想外の成果となった。学校再開後は、主に朝学習で「すらら」を活用し、数学と英語を中心に実施している。また、定期テスト対策や長期休暇期間の課題としても活用している。
野口教諭は、アダプティブラーニングの機能を知ってから、やればやるだけ自分に合った問題が出ることを生徒にアドバイスしているという。一人ひとりに苦手やつまずきの部分が配信されるため、「大変だ」と伝えにくる生徒には「つまずきだから出題される。自分のためだからやってみよう」と生徒の背中を押してあげているという。また、理科で水溶液の濃度計算が出てくる直前に、小学校の算数の割合に関する課題を配信するといったように、新しい単元の習得に必要な復習にも「すらら」を活用している。必要な知識を、自在に簡単に課題として出せることも「すらら」の大きなメリットだと語る。
休校中も休校が終わってからも、日々の「すらら」活用により、別の大きな成果も生み出した。全国の「すらら」ユーザーが競い合う「すららカップ」の入賞だ。昨冬の第17回大会において、同校は「中規模学校の部」で見事1位を獲得した。ただし「すららカップ」を意識した取り組みは特に行わなかったという。家庭科の担当で中学1学年主任の越朋美教諭は、「ICTを取り入れる以上、すべての教員の間でどのように使っていくかについての共通理解がないと、生徒の学習に効果をもたらすことはできません。休校中は、在宅でも生徒と教員のつながりが途切れないよう『すらら』の『メッセージ機能』や校内ネットワークを活用してやりとりしたり、ログインが滞っている生徒には電話をしたりと、教員が協力しあって学習促進をフォローしました。そして何より、生徒自身が自宅学習を頑張ってくれました」。その取り組みは、休校が終わってからも学習習慣として定着し、結果として1位獲得に結び付いたと振り返る。
学びの道筋を示していけるように
中学1年生の高野茉莉さんは、「すらら」にとても興味を持ったという。「レクチャー後の問題で正答率が低ければ、レクチャーにまた戻れるのでそこがいいと思います。「すらら」ではない通常の学習だと、自分から進んで復習することはないので(笑)。私は期末テスト前にも使っています。わからないところを先生に聞きづらい時がたまにあるのですが、そこでも『すらら』が役立ちます。勉強だけどキャラクターやアイテムも出てくるので楽しいです」。
同じく中学1年生の崔 翔赫(さい しょうかく)さんは、条件をクリアするともらえるポイントやアイテムなどのコミュニケーション機能が新鮮だったという。「わからないところは徹底的にやります。『すらら』は1位と2位でバトルみたいな、負けたくない気持ちになってすごくヒートアップします」。そして、メッセージ機能を使った友だちとの他愛のない会話で息抜きするなど、上手に「すらら」を活用している様子だ。
野口教諭は、ICT活用をさらにプラスするというよりも、ICTのメリットを追求していきたいと今後の展望を語る。「デジタルとアナログは5:5の割合で融合できたら理想です。実はプリンターをもう少し増やそうかと考えています。教員からプリントを支給するというよりは、生徒自らが、これは紙、これはデジタルで解いたほうが良さそうだと判断できるようになったり、自らテストの点をとりにいくための勉強方法を探ったりと、達成するための手段を自分で考えて行動する『自学力』を身につけさせてあげたいです」。越教諭も、「ICTの便利さに頼り切るのではなく、デジタルとアナログを上手に組み合わせながら、効果的な使い分けを大事にしていきたい」と語る。教材が進化しても人が失ってはいけないものとして、同校では「書く」ことも重視している。教育の根幹を大切にしながらも、教員がしっかり生徒に道筋を示していきながら、今後も学びを発展させていく。