『すらら』導入が全ての始まり、ICTツールを文房具のように活用し新しい学びを
惺山高等学校(旧:山本学園高等学校)
山本学園高等学校(現:惺山高等学校)は山形県山形市にある1919年創立の伝統ある私立校。「YAMAMOTOみらいプロジェクト」をかかげ新しい学びへの先進的な取り組みに日々挑戦している。その一環で2019年に県内で初めて、全生徒1人1台のChromebookを導入。電子黒板や校内全館のWi-Fi環境を整備し、教務システムや授業支援クラウドアプリの活用などICT化を推進。「新しい学びを通して、すべての生徒がより良い自分を築き上げ、より良い未来にたどり着くこと」を目標に掲げる同校では、『すらら』の導入をきっかけにICTを活用する学びが始まった。
『すらら』との出会いによってICT化が始まる
創立100周年を目前にひかえた2017年、伝統校の誇りを大切に守りつつも、新しい学びを取れ入れる必要にかられ、模索を続けていた。「そもそも学校改革の目的は『学び直し』や『進学指導』にあった。解決策を求めて、県外の他校を視察し情報を集めた」と髙橋亮教諭(進路指導部長)は語る。新潟県の高校で『すらら』による学び直しの成功事例に出会ったのが全ての始まりだった。山形県ではICT化に関する最新情報や事例が都心ほど豊富にあるわけではない。不安もあったが、『すらら』の学習効果に可能性を感じ「すららネット」にコンタクトをとった。その後の展開は早かった。
2018年から1、2年生全員が『すらら』で国語、数学、英語の学習を開始。それからICT化は一気に加速、2年足らずで、冒頭の状態まですすめた。「すらら」については入学後の学習のみならず、受験―入試前に学習課題を提示し、その学習状況から「勤勉性」と「到達度」を測るー『みらいチャレンジα』にも活用している。
「『すららネット』さんには、不安払拭のための導入校視察のセッティングや、Chromebookの導入にあたっても、会社を紹介頂くなど、いろいろと支援頂いた。時代の流れからICT化を進めなければならないのは理解していたが、何から手をつけたらよいのかわからなかったので、ありがたかった。」と髙山篤教諭(教務部長)は振り返る。
「学び直し」は宿題、やるのがあたりまえになり学力の底上げを実感:数学科
数学では、1年生は主に中学校範囲、2年生は1年生範囲の「学び直し」に『すらら』を活用している。導入前は、学年の内容と並行して、中学校や1年生の復習を授業内で行わなければならず、時間不足は大きな課題だった。『すらら』導入後は、「学び直し」の大半は宿題として配信する形に切り替えた。進捗は教科担任とクラス担任とで共有し必要な声がけをする。導入初年度は、設定した期日までに宿題を完了できる生徒は半数だったが、現在は9割まで上がった。終わらせることが当然になってきたのだ。「特に現在の1年生は入学時点から『すらら』の学びがあったため、やるのがあたりまえと感じているのだろう」と髙山教諭は笑顔を見せる。実際に1年間学んだ翌年4月実施の「基礎力診断テスト」では成績下位層の伸びが著しく、底上げを実感したという。
『すらら』の学びが定着した背景には、教諭らが使いこなせるようになり、効果的な声がけのコツがわかったことがあるという。生徒によっては、締め切りよりも前に声をかけた方が良いこともあるし、声をかけない方が捗る生徒もいる。学級での様子、生徒同士の人間関係を見て必要な時に必要な声がけができるのは教員だけだ。『すらら』は生徒一人ひとりの理解度やつまずきに合わせて個別最適化された出題を行えるため、復習範囲の学習については任せておける。だから教員は生徒の声がけに力を発揮することができる。
苦手単元の自学と不足する演習に『すらら』を活用:英語科
英語では、「苦手な単元の自学」と「授業で不足する演習」に『すらら』を活用している。「苦手な単元の自学」のために、4月に『すらら』の学力診断テストを活用する。テストが終了すると、生徒にはテストで明らかになった個々に異なる「苦手な単元」が課題として課される。教員は2週間で区切りを設け、2学期までに終わるようにスケジュールを組む。生徒は明確になった自身の「苦手な単元」をスケジュールにそって自分で学習し基礎力を上げるのだ。教員は学習の進捗を確認し、生徒が学習を終えられるようサポートを行う。
授業内で英文法を教える際、演習時間が十分に確保できないという課題がある。そこで不足する演習を『すらら』で宿題にすることで補っている。髙橋教諭は『すらら』のスタディログを活用している。生徒の回答をチェックし、必要なサポートを行ったり、間違いの多い個所は次回の授業で解説を加えたり、定期試験で扱う、そうした工夫をすることで学習効果の向上を図っている。
ICTツールは文房具のようにあたりまえのものとして
『すらら』やChromebookを始め ICTの導入で本当に実現したかったのは、生徒それぞれの強みを活かして未来を切り拓くための活動、探究学習だ。それも少しずつできるようになってきている。生徒と教員全体のスキルが上がりICTツールを文房具のように活用できるようになったからだ。以前は、得意な教員だけが使っていたのだが、教務システムの電子化、コロナ禍でのビデオ会議や動画を活用した授業へのチャレンジで教員間の差がなくなった。
かつては学校の性質上、年度途中で新たなことを始めることは考えられなかった。しかし『すらら』と出会って生徒の「学び直し」のために活用が始まると、生徒の変化のスピードに衝撃を受け、教員の意識も変容した。やれるところからやっていく、そして3カ月も経つとそれが当たり前になる、日々新しいことがあるという体験をしたことで教員のマインドも大きく変わった。
髙山教諭は、「ICTツールを文房具と同じようにあたりまえのものとして使い、生徒らにも夢を実現するために活用してほしい。これまで最先端のことは都心に行かなければ出会えなかったが、手元のツールを活用できればその距離が縮まる。地方の強みを発揮できるような生徒であってほしい」と想いを込める。
髙橋教諭は山形県の交通面の不便さを指摘する。探究学習の移動に手間がかかるという地理的なデメリットもICTを活用して解決していきたいと次のステップへの抱負を語った。
同校では、文房具のように学びで活用してほしいという想いで2021年度の新入生全員にChromebookをプレゼントする計画だという。