生徒のやる気に火をつける対話型授業とAI教材『すらら』で自主的な学びを目指す
京都芸術大学附属高等学校
2019年4月に開校した日本で唯一の芸術大学附属の通学型通信制高校(普通科)で、京都市左京区にある私立高校。最低週3日の通学と自宅学習を組み合わせた通学型の通信制高校であり、対話型教育を主軸にした授業を展開している。単位制カリキュラムを導入し進路に合わせた学びをデザインできる。
芸術教育の手法を取り入れた体験・授業・環境で、生徒の自主性と社会で必要とされる「コミュニケーション力」や「協働力」を伸ばし、生徒たちの「人間力の育成」「学力の向上」「進路支援」に取り組んでいる。
生徒のペースや習熟度に合わせ個別最適化された「すらら」による自主的な学びと、生徒のやる気に火をつけ、その努力を認め対話で応える教員。相乗効果をもたらすハイブリッドな学びを紹介する。
『ええかげん、変わりたいわ』一歩踏みだしたい生徒の意欲に応える対話型教育
母体となる京都芸術大学では、芸術を個人の自己表現と他者理解、つまりコミュニケーションであると広義でとらえて芸術教育を行なっている。その附属高校は、通学型通信制の普通科だが、この芸術教育の根幹、対話型教育を大切にしているという。キャッチフレーズ『ええかげん、変わりたいわ』には、他者との対話や協働に苦手意識があっても「一歩踏み出してみよう」という生徒の意欲に寄り添い応えるという想いを込めていると、草川清美教頭は京都芸術大学附属高等学校の学びについて語った。
「すらら」導入 〜背景に中学高校の学びの接続に課題
「すらら」導入以前には、中学の学びと高校の学びの接続という部分が課題だった。十分に中学の学びを理解できている生徒もいる一方で、学校に通えていない期間など不足部分のある生徒もいて、ばらつきが大きい。授業の照準を定めるのが難しく、個別に対応したいが時間が足りないのが悩みだった、と英語科 佐伯健太教諭は振り返った。
2021年、そのような中「すらら」に出会った。AIにより個別最適化され、国数英の基礎から応用までが全て揃う教材で、高校初期の学びを補完するだけでなく、さらに学びを深めたいと思う層へのアプローチも期待できると感じ、導入を決めた。
1人1台iPadで「すらら」の学びに連続性が生まれた
当初は、まだ個人でiPadを所有することがなく、1年生の6クラスが据え置きパソコンを使って国数英3教科の「すらら」に取り組んでいた。
同校では月水金は通学で普通科目授業、火木は個別学習や自主活動があり自由な学びを選択できる。この個別学習、自主活動の時間にもパソコン教室を利用できるのだが、希望者はそれほど多くなかった。
2023年度、1人1台のiPad導入が始まって、いつでもどこでも端末を使える環境が整ったことをきっかけに「すらら」の利用が拡がった。学びの連続性が生まれたのだ。
授業時間以外の利用が目覚ましく増えたことで、現在の単元の学びの質が上がったという。これまでは授業中は理解できていても、理解の定着を図ることが難しかった。しかし、「すらら」で連続し学ぶ中でAIが得意分野や苦手分野を分析し、出題をしてくれるので授業中のつまずきをカバーできるようになった。その結果、知識の習得に対する苦手意識を緩和することができた。
◆「すらら」のメリットを活かし生徒との対応に専念
「すらら」の最大のメリットはドリルだという。生徒の間違いに合わせてAIが出題する問題はバランスの取れた良問で簡単すぎず達成感が味わえ、立ち向かえるくらいの難易度が心地よいからだと、西川智央教諭は笑顔で語る。
「すらら」なしでやるなら、基礎科目全ての問題プリントを作り、解説をそれぞれ考えて、一人ひとりの質問に対応する必要がある。それが質問への対応に専念できるのだから同校の重視する対話に十分な時間を割けるのだ。
◆「すらら」で知識の定着を図る ~レポートと「すらら」の連携
学校設定の国数英基礎科目では普段の授業とレポートで「すらら」を活用している。レクチャー動画をしっかり見て穴埋め問題を解けば合格点が取れるように工夫している。レクチャー動画をスキップせずに確実に理解することが基礎力向上につながるので、習慣付いた「すらら」学習とレポートの連携が、個々の知識の定着につながると確信している。
対話型授業と金色のシール ~生徒のやる気に火をつけ、努力を見て承認する~
「知識獲得だけが目的なら一人でもできるはずだが、教材があるから自分でやっておくようにと言ってもうまくいかないだろう。学校に来て一緒に生徒と取り組む、しっかりと教員が声をかけていくことが重要だ。教員の役割は生徒の「もっとがんばりたい。もっとやりたい。」というやる気に火をつけることだ。そしてやる気になったら「すらら」を勧めていく。わからなくてもあきらめないよう励ますうちに自主的に学ぶようになる。そのために何より生徒の頑張った姿を逃さずにしっかり見て認めてあげることが非常に重要だ。」
「すらら」の効果的な活用において教員の関わりがいかに重要であるか、英語科 西川教諭は語る。具体的な運用としては生徒「すらら」の単元を印刷した紙の「チェックシート」を配布している。教員から指定された単元が終わると生徒の『すらら』画面には金色のメダル画像が表示されるのだが、そこで「チェックシート」にも教員が金色のシールを貼って、努力を認め賞賛するのだ。生徒らは競って手を挙げて教員に単元の完了を告げる。授業以外の時間にも見せに訪れる生徒もいるというから、信頼する教員らに認められることが生徒の自信や喜びに繋がっていることがわかる。
教員の講義+『すらら』のハイブリッド授業で自主的な学びを
生徒が自主的に「すらら」に取り組み習慣化するにはもっとやる気を高めたいと考えている。そこでレクチャー部分は教員が担い、ドリルを「すらら」に任せるというハイブリッド型にしていく計画だ。生徒は人間味を求めていて直接教えてもらっている事実、そういった環境にいるということで満足度が高くなるからだ。
10年後20年後、生徒たちに社会と関わりいきいきと活躍してほしい。そのためには、教えてもらえないからわからないではなく、自分で学び続ける姿勢が大事だと西川教諭。「すらら」なら、もしわからなくても個々に合った問題を出してくれるので自学自習の習慣をつけやすい。やる気になれば「すらら」で学べる。やる気にさせるレクチャー、生徒の努力をしっかり見て声をかけ認め、生徒の質問に時間を割いて丁寧に対応し、生徒のやる気を高めるのはやはり教員の役割だと、力を込める。