「すらら」「サテライザー」で生徒の「認知能力」と「非認知能力」を育む
埼玉県立上尾橘高等学校
本記事では、創立から40年以上の長い歴史を持ち、地域社会との連携を重視しながら多くの生徒の成長を支援している埼玉県立上尾橘高等学校(以下、本校)の先進的な取り組みをご紹介します。
本校が教育活動において最も大切にしているのは、生徒たちの「認知能力」と「非認知能力」をバランス良く育むという強い願いです。特に、基礎学力の定着といった認知能力の向上を目的とした教材を探す中で、ICT教材である「すらら」と出会い、その活用を開始しました。さらに、探究活動の深化には「サテライザー」も導入し、生徒と教員双方に大きな変革をもたらしています。
すらら導入の背景と多様な活用方法
すらら導入のきっかけ:基礎学力定着への強い願い
埼玉県立上尾橘高等学校では、生徒の学力の土台となる基礎学力の育成、すなわち「認知能力」の向上に焦点を当てていました。より効果的に生徒の学習を支援できる教材を探し求めていた中で、個々の生徒のペースに合わせた学習が可能な「すらら」が、その目的に合致すると判断され導入に至りました。
すららの主な活用シーン
すららは、日々の学習活動において多角的に活用されています。
・授業における「予習材料」としての活用:
生徒たちは授業に臨む前にすららを利用して、学習内容を予習します。これにより、授業前に一度内容に触れることで、導入部分の理解がスムーズになり、本授業での理解度や定着度が格段に向上します。
・学校独自の「キャッチアップタイム」での利用:
本校では、生徒の基礎学力向上を目的とした独自の授業時間「キャッチアップタイム」を設けており、この時間においてすららが主要な教材として活用されています。生徒は自分の苦手な分野や定着させたい単元に集中的に取り組むことができ、個別の学習ニーズに応じた基礎学力の強化が図られています。
・理科における「3段階学習」で深い理解を促進:
特に理科の授業では、専門的な用語や概念が多く、初めて触れる生徒にとっては抵抗感が生じやすいという課題がありました。この課題に対し、すららを活用した画期的な学習サイクルが確立されています。
【1段階目】
すららでの「事前学習」:生徒はまずすららで、初めての専門用語や概念に触れます。視覚的にも分かりやすい解説やアニメーションを通じて、抵抗感を和らげながら基礎的な理解を促します。
【2段階目】
教員による「解説」:すららでの事前学習を踏まえ、授業では教員がさらに詳しく、深い視点から内容を解説します。一度触れているため、生徒はより積極的に授業に参加し、質問も具体的になります。
【3段階目】
ワークを用いた「復習・定着」:最後に、関連するワークを通じて内容を復習し、知識の定着を図ります。
すららが生徒にもたらした変化:学習意欲と非認知能力の飛躍的向上
すららの導入は、生徒たちの学習成績だけでなく、その学習意欲や自律性、そして努力が報われる喜びといった「非認知能力」の育成に大きく貢献しています。
・学習へのモチベーションと楽しさの向上:
生徒からは「予習・復習がしやすく、解説が分かりやすかった」という声が多く聞かれます。特に、問題を正解した際に鳴る「ピコン」という効果音によって、「正解した時の達成感があり、勉強が以前よりも好きになった」と答える生徒もいます。また、自然災害に関するグループワークでは、すららが提示する話し合いの例が分かりやすく、多様な意見を交わしながら学習する楽しさを生徒たちは体感しています。
・自律的な学習習慣の確立と学習時間の増加:
以前は、「家に帰って何を勉強すれば良いか分からない」と感じていたり、「最低限の課題だけをこなす」に留まっていたりする生徒が少なくありませんでした。しかし、すららの導入により、「とりあえずやってみよう」という学習へのハードルが下がり、「自分自身が本当に知りたいこと」に向かって自ら学習を進める方法を身につける生徒が増えました。結果として、学校の課題とは別に、家庭での学習時間が大幅に増加する傾向が見られています。
・努力の可視化と評価による「非認知能力」の育成:
学期末にすららの学習時間や学習量を集計し、ランキング形式で生徒に提示したところ、これまでのいわゆる「優等生」とは異なる生徒たちが上位に名を連ねるという、教員にとっても驚きの結果が見られました。こうした生徒たちを学年集会などで表彰した際には、教員や周囲の生徒からも「おお、お前が!?」といった驚きと、素直な称賛の声が上がりました。
この経験は、生徒たちにとって「頑張ったことがきちんと評価されるんだ」という実感に繋がり、校内に努力を尊ぶ前向きな雰囲気を醸成しました。夏休みには、すららさんが企画した「すららカップ」にも多くの生徒が参加し、表彰された生徒の姿に刺激を受け、「自分も頑張ってみよう」と奮起する生徒が続出しました。これは、単なる学力向上に留まらず、努力が報われる喜びや自己肯定感、さらには継続する力といった「非認知能力」の育成に大きく貢献しています。
探究活動におけるサテライザーの活用:思考力・探究心を育む
本校では、すららと並行して、生徒の探究活動を促進するため「サテライザー」も積極的に活用しています。
・日常では触れない知識との出会い:
サテライザーは、生徒たちが普段の生活の中では決して触れることのないような、多様な専門分野や最新の知見に触れる貴重な機会を提供します。これにより、生徒の知的好奇心を刺激し、新たな「知りたい」という気持ちを引き出すきっかけとなっています。
・「調べる力」の育成を支援:
生徒の中には、意見を話すことは得意でも、自ら深く「調べる」という探究活動に苦手意識を持つ傾向が見られました。サテライザーを活用することで、この「調べる力」を実践的に練習できる場となり、探究活動に必要なスキルを着実に身につけさせています。
教員の働き方改革への貢献:負担軽減と質の高い教育活動への注力
すららとサテライザーの導入は、生徒たちの成長を支援するだけでなく、教員の皆様の業務負担軽減にも大きく寄与しています。
・授業準備の負担軽減と効率化:
教員間での会議を通じてすららやサテライザーの活用事例を共有し、それを実際の授業に活かすことで、日々の授業準備にかかる労力が大幅に軽減されています。例えば、「来週もサテライザー、再来週もサテライザー」といったように、事前に活用計画が立てられることで、ルーティン化された効率的な準備が可能となり、教員の皆様はより質の高い指導や生徒との対話に時間を割くことができるようになりました。
まとめ:未来を見据えた教育実践の成功事例
埼玉県立上尾橘高等学校におけるすららとサテライザーの導入・活用は、生徒の「認知能力」である基礎学力の確実な向上はもちろんのこと、「非認知能力」である学習意欲の喚起、自律的な学習習慣の定着、そして努力が適切に評価されることで得られる自己肯定感の醸成に大きく貢献しています。同時に、教員の皆様にとっては、授業準備の負担が軽減され、より本質的な教育活動に注力できる環境が生まれています。
これらのデジタル教材の導入は、生徒一人ひとりの可能性を最大限に引き出し、学習の楽しさを再発見させるだけでなく、教員がより専門性と情熱を持って教育に臨める、まさに未来を見据えた教育実践の成功事例と言えるでしょう。

