多様な仕掛けで自律的学習者を育成する
自修館中等教育学校
自修館中等教育学校は、神奈川県伊勢原市にある完全中高一貫の私立校。在学者のほとんどが大学進学をする。長年にわたり探究学習に力を入れてきた結果、明確にやりたいことを持った生徒が多く集まるのが特徴である。

自修館中等教育学校
自律的な学習の推進を目指して「すらら」を導入
2018年から新入生に一人一台のChromebookの導入を開始し、この取り組みを年次進行で拡大させ、2023年4月には全学年で一人一台端末の環境が整った。それに併せて、生徒の自律的な学習習慣が後押しされる授業、教材、カリキュラムを検討する会も発足した。
同校では、教育目標として「自主・自立の精神に富み、『自学・自修・実践』できる生徒の育成」を掲げ、生徒一人ひとりが学び続ける力、考え抜く力、チャレンジする力の育成を目指している。中高一貫の6年間の中で、特に最初の2年間は基礎学力の定着や学習習慣の確立に重要な時期であると同校では解釈している。そこで、個別最適な学習が可能な教材を探していたところ、「すらら」と出会い、2024年からの導入が決定し、現在1・2年生を対象に活用を進めている。
「すらら」を使う場面を明確にする
同校では、コロナ禍を経て、対面授業の時間では、対話しながら学び合い、新たな気付きを得ることを重視するようになった。一方で、希望進路の実現というミッションがある中で、学び直しの時間を十分に取れないことが課題として浮き彫りになってきた。それに対し、これまでは教員のマンパワーで放課後に補習や居残りを行っていたが、教員の業務も多岐にわたることから、十分にフォローしきれない状況となった。特に、国・数・英は一度つまずいてしまうと、その後の学びの積み重ねがしにくくなる。この部分を生徒自身が自分の力でフォローしていけるようにしたいという学校としてのニーズが「すらら」とマッチし、導入に至った。
導入にあたって、教材があっても生徒が自主的に活用しなければ意味がないと捉え、導入初年度の2024年度は「すらら」を使う場面を明確にして取り組んできた。
【帯時間】朝学習と家庭での復習
5分間の朝学習では、英語や数学の小単元のテストを実施している。
・1年次は既習範囲の復習となる内容
・2年次は1年次の範囲
点数が十分でない生徒は、復習課題を自宅で取り組む運用にした。この復習課題は「すらら」の「自動復習登録機能」によってテストの結果をもとに自動で自分にあった課題が配信される。これにより、学び直しの時間がとりずらくても自分に必要な単元が可視化されるので、効率的な学習が可能になる。また家庭でわからないところがあっても「すらら」のゼロから学んでも理解できるレクチャー機能によりひとりで学習が進められる。その積み重ねを通して学習習慣定着につながる。
【自主学習】自主的に学習できる環境も用意
また、長期休暇明けに実施する学力推移調査の対策となるような長期休暇課題を配信することも行っている。これらの課題は、配信はするものの宿題とはしておらず、やっていないからといって居残りにさせるようなことはしていない。それでも、同校の教育理念である「自主・自立の精神」が生徒たちにあることで、全体的に学習が進んでいるとのことである。
【授業中】反転学習により生まれた時間での探究的な学び
1年生の社会科では、道村唯輔教諭の指導のもと、「すらら」を活用した反転学習が展開されている。生徒は自宅で「すらら」に搭載されているレクチャー機能やドリル機能を用いて授業内容を予習する。「すらら」のレクチャー機能は、途中で問題に取り組んだり図を触ったりするインタラクティブ性のある作りのため、飽きずに学習を進めることができる。1ユニット平均して15分の小さな範囲であるため、学習習慣がついていない生徒でも、スモールステップで取り組むことができる。また、ドリル機能にも生徒の理解度に合わせて自動的に難易度や問題数が変化する「難易度コントロール機能」が備わっており、勉強が得意な生徒も苦手な生徒も適度な達成感を得ながら学習を進められる。道村教諭は、意欲の高い生徒に対しては配信したユニットを超えて自主的に先の単元へと進むことも推奨している。予習をしていることで授業の時間では、その内容をもとに演習や議論などのアクティブな学習活動を行っている。一例として、世界の地理を学ぶ単元では、4年次に予定されている海外への修学旅行を見越して、生徒が旅行会社の企画担当者になりきり、訪問先の選定から旅程の策定、さらには現地で学べる内容や必要な費用に至るまでを考えて、発表するというPBL型の学習が行われた。このような、探究的・対話的な学びが、道村教諭が行うほぼ全ての時間を使って展開されている。知識のインプットという学習の基礎段階を「すらら」が担保しているからこそ、できることである。
学習意欲を引き出す仕掛け
①「すらら甲子園」
すららネットでは、学習時間などの「努力量」を全国のユーザーと競い合う「すららカップ」というイベントを主催している。同校では、その校内版のイベントを「すらら甲子園」と題して開催している。点数などの「結果」ではなく、学習時間や取り組んだユニット数などのプロセスが評価されるため、勉強に苦手意識を持つ生徒でも前向きに取り組むことができる。このイベントでは、生徒自身が取り組みたい内容を自由に学習することが認められている。「すらら甲子園」は単に一つのイベントで終わるのではなく、多くの生徒にとって学習意欲を高めるきっかけとなり、学力推移調査の結果の向上にもつながっている。
②保護者との連携
「すらら」では保護者が子どもの学習状況を確認することができるため、これまで「ちゃんと勉強してるの?」「勉強しなさいよ?」といったネガティブな声掛けだったものが、「ちゃんと勉強していて偉いね」とポジティブな声掛けになったという変化も見られる。このように生徒を中心に、教員はもちろん、保護者をも巻き込んでいくことで「すらら」を使って学習することが当たり前の環境を作り上げている。
自律的な学習をより促進していく
これまでの実践を基に、同校では生徒たちが個別最適化された教材で学ぶことをより当たり前にすることを見据えている。具体的な方策として、まず、新入生に対して入学前課題として「すらら」を配信することを計画している。これにより、「すらら」に対する敷居を低くし、入学直後から「すらら」の円滑な活用を検討している。
さらには、これまでの教員が課題を配信する形式から、生徒自らがやりたいものや見つけた課題から学習目標を設定し、それに取り組む運用も視野に入れている。
学力推移調査前の課題についても、レクチャー・ドリルを配信するのではなく、まずテスト機能を用いて抜け漏れを可視化し、学ぶ必要のある部分に時間を割けるようにすることが構想されている。
「すらら」を活用して生徒が自ら課題を見つけて、それを乗り越えていくという経験が今後の人生の中でも役に立つと捉え、生徒の自主性・主体性を尊重する「すらら」の活用を、同校では今後も続けていく。
多様な場面での活用ができる「すらら」。生徒に自律的に学習をしてもらうには、いきなり生徒に委ねるのではなく、まず多様な場面で「すらら」を利用することで、「すらら」で学ぶことを「習慣化」させていくことが大事になる。そして同校が見据える今後のように、段階的に生徒自身に選択・判断させることが、自律的学習者育成への道筋となるだろう。

