自由進度学習とは?メリット・デメリットや具体的なやり方と実践事例

2024/08/09(金)

授業方法

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学校でタブレットを活用しての学習が取り入れられているなど、昔では考えられないような学習方法が当たり前になってきています。そのような学習方法の1つに「自由進度学習」というものがあります。自由進度学習を取り入れている学校では、多くの子どもが積極的に学習に取り組む姿が見られます。本記事では、自由進度学習の概要やメリット・デメリットについて紹介します。

自由進度学習の学習スタイルとは?


自由進度学習は「個別最適な学び」と「協働的な学び」ができることから注目されている学習スタイルです。教師が計画した学習内容の範囲内で、子どもたちが1人1人課題を設定し、自分で学習計画を立て、自分のスピードで学習を進めます。友達が立てた計画と自分の計画は異なるものの、学んでいることは同じです。自分にはできて友達にはできないこともあり、その逆もあります。そのように個性を利用し、友達同士で学びを深めていけるのも自由進度学習ならではの一面です。学び合う中で、友達の考えから新たな発見ができたり、逆に教えることで学びが得られることを発見できます。

自由進度学習が広がっている背景


これまで、学校では一斉・画一的な授業が行われてきました。同じ学習内容を同じように教わり、同じ時間内で学ぶスタイルです。学習内容を効率的に伝達できるメリットがある一方で、子どもたち1人1人がきちんと理解しているかどうかを見たり、学びへの興味・関心を高めたりといったことが難しい側面もありました。その結果、分からないまま置いてけぼりにされる生徒もあり、それではただ受け身で授業を聞くだけになってしまいます。そのような授業方法の改善のために挙げられた方法の1つが「自由進度学習」です。自由進度学習なら、1人1人が自分で自分のための計画を立てるところから、理解できるようになるまで学びを深めていくことができます。結果として、個性を伸ばしながら、資質・能力を高めていく教育を行うことが可能です。

自由進度学習のメリット


自由進度学習の時間の教室では、黒板に背を向けて1人で学習を進めている子どももいれば、友達同士で学習をしている子どもなど、さまざまな学習方法で学んでいる子どもがいます。ここでは、自由に学べるからこそ得られるものがある自由進度学習のメリットを紹介します。

自分の学習レベルに合わせて課題に取り組める

自由進度学習は、自分のペースに合わせて学習を進める方法です。理解が早く、もっと難しい問題を解くことにチャレンジする子どもはもちろん、学習内容が難しいからと基礎をしっかりやって確実に身に付けようとする子どももいます。自分の理解度や学習レベルに合わせて課題に取り組めるため、授業で置いてけぼりになってしまうことがありません。一斉授業の場合、課題が早く終わった子どもは待ち時間が長くなってしまったり、反対に時間がかかる子どもは課題が終わる前に答え合わせが始まってしまったりと、どちらにとってもデメリットがあるといえます。じっくり取り組んだり、問題を解く量を増やしたりと、自分が時間を有効に使えるような学習ができるのも自由進度学習ならではのやり方です。

先生が個々のつまずきに気付きやすくなる

自由進度学習は、子どもたちだけではなく教師側にもメリットがあります。子どもたちがそれぞれのペースで学習を進めると、子ども1人1人がどこを理解していて何が理解できていないのかを把握しやすくなります。生徒に声をかけやすくなるため、つまずいている生徒を見つけたらフォローをし、分かるようになるまでじっくり教えるという、一斉授業では困難だったことができるようになります。教師も1人1人のことをより把握しやすくなるため、自由進度学習の時間以外でも子どもたちに気を配れる面もメリットといえるでしょう。

生徒の自主性や学習に対する意欲が高まる

自由進度学習は、自分のことを自分で決め自分のペースで学習する方法です。自分で決めるということは自分に責任を持つということであるため、自分の学びに責任が持てるようになります。その気持ちが芽生えると、生徒の学習意欲が大きく高まっていくでしょう。算数が苦手で、一斉授業では意欲がないように思えた子どもが、自由進度学習を始めたことで積極的に学習に取り組むようになったという結果も出ています。最初はうまく計画を立てられなかったり、学習方法が分からなかったりといった場合でも、教師からのフォローや友達同士での助け合いで解消されていきます。

自由進度学習のデメリット


ここからは、自由進度学習にはどのようなデメリットがあるか解説します。

個人の進度と学習指導要領の内容との兼ね合いが難しい

学習指導要領は、授業で扱う内容の基準を示しており、全ての子どもに必ず指導しなくてはならないものです。また、子どもの学習状況や学校の判断によっては、学習指導要領にはない内容も指導することができるようになっています。しかし、自由進度学習は生徒が自分で学習の進度を決めるスタイルです。そのため、学習する内容は学習指導要領で決められているのに、それに追いつかない場合はどうしたらいいのかという対策が求められます。中には、自由進度学習を行なっていたのに、全員が学習指導要領の基準まで到達できなかったため、一斉授業を行わなくてはならなくなったという例もあります。

進度別に目配りするには教員が不足しがち

自由進度学習のメリットとして、教員が子どもたちの学習進度や分からない部分を把握しやすいという点が挙げられますが、生徒全員の実態を把握するためには圧倒的に教員が足りません。自由進度学習を進める中で、子どもたちは以下3つのグループに分けられます。

・学習能力が高いグループ
・中程度の学習能力を持つグループ
・あまり内容が理解できていないグループ

この3つのグループ全てを1人の教員で見てアドバイスをするとなると、キャパオーバーする恐れがあります。最低各グループに1人の教員を配置しようとしても、人数が足りないのが現状です。ここまでの人数がいないと個別対応は難しく、自由進度学習のメリットを最大限まで生かせません。

単元内自由進度学習の基本的なやり方


自由進度学習の1つに「単元内自由進度学習」があります。単元内自由進度学習とは、学習の単元ごとに子どもたちが自由進度学習をすることです。まず初めに教師が単元のねらいや時間数、学習の流れや教材の紹介をします。これらの情報をもとにして、子どもたちが各々学習計画を立てて進めていきます。例えば、45分の授業時間のうち、一部の時間を自由進度学習の時間にし、最初と最後の10分ずつをミニレッスンや振り返りの時間に割り当てます。一斉授業と自由進度学習のメリハリをつけることが大切です。全てを自由進度学習に変えるより、単元別で行ったほうが教師も管理しやすくなります。無理のない範囲で自由進度学習を進め、1人1人が充実した学習時間を過ごすことが重要です。その中で、教員はあくまでも1人1人をよく見て、子どもたちが自由進度学習を通して何を感じて何を考えているのかということを発見し、学ぶことが重要といえるでしょう。

自由進度学習の取り組みには教員の意識共有と学習環境の整備が不可欠


子ども1人1人が自分から積極的に学び、時には友達と協力しながら問題を解決していくという学習スタイルとしては、自由進度学習には一定の成果があります。しかし、1つのクラスや一部の学年だけが行うのでは、自由進度学習の全ての成果を得ることはできません。自由進度学習の成果を確実に得るためには、学校内で共有や目標設定を行うことや、自由進度学習を実施するにあたって評価・改善ができる組織と環境が必要になります。また、他の教育活動を関連付けていくことで、教員1人1人が子どもたちのことを理解し、そのための教材研究をする活動がより充実するようになります。学習環境の整備も併せて行うのが望ましいでしょう。

自由進度学習の2つの実践事例


実際に自由進度学習を行っている2つの小学校があります。教員はどのように進め、子どもたちはどのように学習しているのか、実践事例を紹介します。

広島県の公立小学校の事例

広島県の公立小学校では「自立した学び手の育成」を目指すことを念頭に、自由進度学習を進めています。子どもたちが自分で学習計画を立てるべく、まず教員が大まかな学習計画表をつくり、それをベースにして学習を進めていきます。学習計画表の作成のルールには、生徒全員が必ず取り組まなくてはならない学習内容の範囲から、自分で自由に取り組むように決めるというものがあります。学習内容も自分で選択するため、より自分で決めたことに責任が持てるようになります。子どもたちが使用するタブレットには自動採点機能が付いており、学習の進捗状況を把握できるようになっています。そのデータをもとにして、教員が1人1人のサポートに生かせる仕組みができています。その他にも、それぞれの進度や難易度に合わせた教材の準備、実験や観察ができるようなスペース、1人1台のタブレットなど、環境面の整備も行われています。子どもたちに「学習計画を立てなさい」といきなり言っても、それはかなり難しいことです。しかし、教員がつくった計画のベースがあれば計画を立てる難易度が大きく下がり、子どもたちの不安も大きく軽減されます。加えて、学習環境がしっかり整っているだけでも、生徒のモチベーションはアップするでしょう。

山形県の公立小学校の事例

山形県のある公立小学校では、単元内自由進度学習として「マイプラン学習」が行われています。単元内自由進度学習であるマイプラン学習では、決められている1つの単元の中で、自分に合うように計画を立てて取り組みます。自分で内容を決めて取り組めるため、できるようになるために基礎を丁寧に学習する子どももいれば、発展的な内容に取り組んでレベルアップを目指す子どももいます。マイプラン学習は2教科を同時に進めるカリキュラムになっており、かなり柔軟な時間配分が可能です。子どもたちの個別最適な学びの実現と学習指導要領との両立を目指すためには、決められた時間内で確実に基本的な内容をつかんでいくことが重要です。単元内自由進度学習で確実に時間内での学習内容をこなすだけではなく、自由進度学習により子どもたち1人1人の充実した学習を行うことができます。

まとめ


自由進度学習は、子どもたち1人1人がのびのびと学習できる時間をつくれるのはもちろん、子どもが自分で計画を立てて実行に移すため、責任を持てるようになるというのが大きなメリットです。しかし、学習指導要領との両立が難しく、1人の教員では子どもたちの学習全てをカバーできないという一面も持っています。メリットとデメリットを考えながら、学校全体で自由進度学習を取り入れていきましょう。

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