教員の働き方改革の事例を紹介!取り組み方も分かりやすく解説

2024/08/27(火)

働き方

近年、教員の長時間労働や過大な業務量が問題視され、教員の働き方改革が強く求められるようになりました。しかし、働き方改革に向けた具体的な取り組みが分からない教員の方も多いのではないでしょうか。この記事では、教員の働き方改革が必要とされる背景や働き方改革の具体事例などを紹介します。働き方改革について理解を深めたい方は、ぜひ最後までご覧ください。

教員の働き方改革が必要とされる背景を分かりやすく紹介


教員の働き方改革が推進される背景には、教員の過酷な労働環境があります。ここでは、教員が抱える労働問題について解説します。

教員は長時間労働である

過剰な労働により、多くの教員に長時間労働が強いられています。2022年度の「教員勤務実態調査」では、小学校・中学校それぞれにおける教員の1日当たりの在校時間について次のような結果が出ています
参考:教員勤務実態調査(令和4年度)|文部科学省

2016年度に行われた調査と比べると、教員の労働時間は減少傾向にあります。しかし、都道府県および政令市で定められている教員の労働時間は7時間45分です。上記の調査結果を見ると、実際の労働時間が本来の労働時間を大きく上回っていることが分かります。また、同調査の「仕事と仕事以外の生活とのバランス」についての質問で、「満足していない」と回答した教員の割合が小学校では50%、中学校では54.7%であったことからも、依然として教員の労働時間の改善が必要な状態といえるでしょう。

教員の時間外勤務が過労死ラインを超えている

長時間労働を余儀なくされている教員の中には、時間外勤務量が過労死ラインを超えている方も多く存在します。文部科学省は、教員の時間外勤務の上限の目安を「1カ月当たり45時間」と定めています。ところが、2022年度の教員勤務実態調査では、小学校で64.5% 、中学校で77.1% の教員が45時間以上時間外勤務をしていることが分かりました。さらに、過労死ラインとされる「1カ月当たり80時間」以上の時間外勤務をしている教員の割合が小学校では14.2% 、中学校では3分の1以上の36.6% にも上っています。長時間労働もさることながら、過労死ラインを超える時間外勤務の問題についても、早急な解決が求められています。
参考:残業月80時間」過労死ラインの教員、中学36%・小学14%…コロナ禍でも長時間勤務|読売新聞オンライン

労働環境の悪さから教員不足に陥る可能性がある

労働環境の悪さは現職の教員に負担を強いるだけでなく、教員を志す人材の減少を招く恐れがあります。2021年度に実施された「令和4年度採用選考の実施状況」に関する調査では、小学校〜高等学校のそれぞれで受験者数の減少が見られました。参考:令和4年度(令和3年度実施)公立学校教員採用選考試験の実施状況のポイント|文部科学省
また、一般社団法人日本若者協議会が2022年に実施した「教員志望者減少に関する教員志望の学生向けアンケート」において、教員志望の学生が減少している理由について最も多かった回答が「長時間労働など過酷な労働環境」でした。教員志望者数の減少についてはさまざまな要因が考えられますが、労働環境もまた影響しているのではないでしょうか。
参考:教員志望の学生が減っている理由は「長時間労働など過酷な労働環境」と 94%が回答 教員志望者減少に関する教員志望の学生向けアンケート結果|一般社団法人日本若者協議会

教員の労働時間が増えている原因


教員の労働時間の増加には、部活動での指導や授業以外の業務などさまざまな要因が関係しています。ここでは、教員の労働時間が増えている原因について詳しく解説します。

部活動の負担が大きい

多くの教員にとって大きな負担となっているのが、部活動です。特に中学校や高等学校では部活動を設けていることが大半であり、経験の有無にかかわらず多くの教員が部活動の指導や管理に携わっています。日本経職組合が実施した「2023年学校現場の働き方改革に関する意識調査」では、文化部の顧問になっている教員の56.5%、運動部の顧問を担っている教員にいたっては87%が週休日に勤務していると回答しました。一方で、顧問をしていない、あるいは学校に部活動がない教員の週休日の勤務割合は40%を下回っています。2022年度の「教員勤務実態調査」でも、部活動の活動日数が多いほど1日当たりの在校時間が長い傾向にあることが分かっています。これらの結果から、教員の長時間労働には部活動の負担も影響していると考えられます。
参考:2023年 学校現場の働き方改革に関する意識調査|日本教職組合
参考:教員勤務実態調査(令和4年度)|文部科学省

授業以外の業務が多い

教員には授業以外にもこなさなければならない業務がたくさんあります。以下は、教員が担う授業以外の業務の例です。上記はほんの一例に過ぎません。また、ときには保護者の対応に当たることもあります。このように、教員には授業以外にこなすべき業務が数多く存在し、これらを一手に担っていることが長時間労働につながっていると考えられるでしょう。

正確な労働時間を把握しづらい

残業代が支払われないことから、教員の労働時間は正確に把握されづらい傾向にあります。「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」では、公立の教育職員には原則時間外勤務手当や休日勤務手当を支給しないことが定められています。手当の代わりに「教職調整額」として月給の4%が支払われていますが、いくら時間外勤務をしても教職調整額は変動しません。そのため、労働時間を正確に把握しようとする意識が薄れてしまいがちといえます。日々労働時間があいまいな中で勤務していることが、長時間労働を助長してしまっているのが現状です。

教員の働き方改革を行う際の具体例


長時間労働の要因を1つずつ改善していくことが、教員の働き方改革につながります。ここでは、教員の働き方改革に向けた具体的な取り組みを紹介します。

労働時間を正確に把握する

先述の通り、学校現場では教員の労働時間が把握されづらい傾向があります。そこで、まずは各教員の労働時間を明確にすることが大切です。「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(答申)」では、ICTやタイムカードなどを活用し、客観的に勤務時間を管理することの必要性が明記されています。すでに小学校・中学校・高等学校それぞれの70%以上が、ICカード・タイムカード・パソコンの使用時間などによる客観的な方法で勤務時間を管理しています。データとして管理することで、勤務時間の正確かつ効率的な把握が可能です。
参考:教員勤務実態調査(令和4年度)|文部科学省

授業以外の業務を減らす

「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(答申)」では、業務の明確化・適切化が必要だとしています。例えば、給食時の対応を栄養教諭と連携することでこなしたり、学校行事の準備や運営の一部を事務職員に任せたりするなど、必ずしも教員が担わなくてもよい業務を分担して、教員の負担を軽減していくことが大切です。

教員以外の人員を確保する

教員以外の人員を確保する例として、部活動の顧問を部活動指導員に任せる方法があります。部活動指導員とは部活動での技術的な指導に従事できる人員で、2017年の学校教育法の一部改正により制度化されました。部活動指導員は基本的に学校職員の位置付けです。そのため、部活動指導員単独で、あるいは部活動指導員と教員が共同で顧問を担うことが認められています。部活動指導員の採用により、教員の負担は大幅に軽減されるでしょう。このように、一部の業務を積極的に教員以外の人員に任せていくことが大切です。

事務作業の分担を検討する

授業をはじめとする教員が担うべき業務がある一方で、事務作業など必ずしも教員が担う必要がない業務もあります。教員の働き方改革には、こうした事務作業を分担していくことも重要です。事務業務を分担する方法の1つとして、事務職員の活用が挙げられます。例えば調査や統計などへの回答は、教育課程や生徒指導に関係するものでない限り、事務職員との連携が可能です。また、教員業務支援員を導入する手もあります。教員業務支援員は学習プリントの印刷・採点業務の補助・各種データの入力や集計など、教員の事務的作業をサポートする人員です。2018年からは、文部科学省による教員業務支援員の配置支援も行われています。教育現場の全ての業務を教員が担うのではなく、他の人員でもこなせる事務作業などを積極的に分担していくことが求められます。

教員の働き方改革の事例集


教員の働き方改革は多くの学校で実施されており、すでに成果を上げている学校もあります。ここでは、教員の働き方改革の事例を紹介します。

教員業務支援員を導入して教員の負担を軽減|千葉県内の中学校

千葉県内のある中学校では、教員業務支援員の導入により教員の負担軽減に取り組んでいます。同校では、主に業者や保護者などの訪問者の対応・電話対応・教材や配布物の印刷および仕分けなどを教員業務支援員に依頼しています。初めは自身の業務を依頼することに抵抗を感じていた教員もいましたが、教員業務支援員・教員がともにコミュニケーションを取りやすい環境づくりに努めることで、業務の分担が進められていきました。教員業務支援員を活用した教員の負担の軽減によって、勤務時間の縮小や生徒と関わる時間の増加を実現しています。

テストの採点支援システムを活用し採点時間が半減|愛知県内の私立高等学校

愛知県内の私立高等学校では、テストの採点支援システムを採用して、採点時間の半減に成功しています。同校では、紙のテストをスキャナで読み取ることでデータに反映できる採点支援システムを導入しました。選択式問題はシステムが自動で採点し、記述式問題の場合は一覧表示して一斉に回答を確認する「串刺し採点」ができるようになっています。採点支援システムを導入した結果、多くの教員の採点時間が2分の1~3分の1程度に軽減されました。また、採点時間が短くなったことが、「これまで選択式問題ばかりで構成したテストが果たして生徒の生きる力を育成するのに適しているのか」とテスト問題を見直すきっかけにもなっています。教員の業務負担軽減により、質の高い教育を考える時間が創出されたことは大きな効果でしょう。

まとめ


教員の働き方改革が推進される背景には、教育現場の過酷な労働環境があります。教員には過労死ラインを超えるほどの長時間労働が強いられています。働き方改革の実現には、勤務時間の正確な把握・補助人員の確保・業務の分担などに取り組み、教員の負担軽減に努めることが重要です。この記事で紹介した事例も参考のひとつにして、自身の学校での勤務体制見直しにお役立てください。

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