ワーキングメモリと漢字学習の関連性とは?漢字が苦手な子どもにおすすめの覚え方
小学生が習う漢字の総数は1,026字です。小学1年生は80字、2年生は160字、3年生は200字と学年が上がるごとに覚える漢字の数が増え、形も複雑になります。そのため、「すらら」のお問い合わせ窓口には、どのようにすれば子どもが漢字学習に楽しく取り組めるかお悩みの保護者の方から、多くのご相談が寄せられています。
漢字の学習には反復学習が一般的ですが、この方法が効果的な子どももいれば、難しいと感じる子どももいます。では、なぜ反復学習を苦手に感じるのでしょうか。その理由の1つに、ワーキングメモリの働きが低いことが挙げられます。ワーキングメモリは認知特性の1つで、それぞれの潜在能力を示しています。反復学習が合わない場合、違う漢字学習法を見つけることが苦手な漢字を克服する方法の1つになるかもしれません。
そこで、本記事では認知特性をテーマに、反復学習が苦手な子どもの「ワーキングメモリ」に注目しながら、従来の反復学習に代わる漢字学習法として、ワーキングメモリと同じ認知特性の中の認知処理様式である「継次処理」と「同時処理」を活用した漢字学習法をご紹介します。
もくじ
漢字学習が難しい理由
子どもが漢字の学習を難しいと感じる理由はいろいろあります。まず、漢字自体の構造の複雑さがあります。これにより、形が似ている漢字を間違えたり、書き順を正しく記憶することを難しく感じることがあります。また、漢字は一つの文字が多くの意味や読み方を持つため、文脈に応じた意味の理解が必要となり、さらに漢字の学習を難しく感じさせている可能性があります。
そして、漢字学習にはワーキングメモリだけではなく、認知特性の中の認知処理様式である継次処理と同時処理のどちらが優勢かが関係している可能性があります。
ワーキングメモリの働きが低い場合、新しい情報を記憶するのが難しく、情報を理解するための時間を必要とするため、よく宿題に出される反復学習では漢字学習の効果が十分に発揮できないことがあります。
これには、以下のような原因が考えられます。
課題 | 説明 | 影響 |
---|---|---|
形状の複雑さ | 画数が多く 視覚的に似た漢字が 紛らわしい | 違いを見分けにくいこと による混乱 |
意味が複数ある | 文脈により 異なる意味を持つことが 理解しにくい | 正確な意味の理解に 時間がかかる |
記憶の負担 | ワーキングメモリの 保持力が低いと 短期的な記憶が難しい | 反復しても記憶に 定着しにくい |
これらの原因を理解した上で個々の特性に合わせた漢字学習法を探すことが重要になります。
ワーキングメモリと反復学習の関連性
ワーキングメモリとは
では、漢字に対する苦手意識を改善しながら、日常生活での漢字の使用をよりスムーズにする漢字学習法を見つけるために、ワーキングメモリとはどのようなものか解説していきたいと思います。
ワーキングメモリは、作業記憶、作動記憶ともいわれる短期記憶と情報処理能力を組み合わせたもののことです。例えば、買い物リストの一時的な記憶や、会話中に相手の言葉を理解しながらどのように答えるか考えるときなどに利用されています。日常生活や学習のあらゆる場面で非常に重要な役割を果たしているワーキングメモリは、情報を一時的に記憶し、処理しながら、複雑な課題を解決するときにも必要となります。
ワーキングメモリは、一般的には同時に3〜4つの情報を保持できるとされています。しかし、ワーキングメモリの容量はひとそれぞれ違うため、記憶できるものの量や情報を処理する速さが異なります。
ワーキングメモリが高い場合、同時に多くの情報を処理し、効率よく理解しながら学習内容を記憶することが可能です。しかし、ワーキングメモリが低い場合、新しい情報をすぐに失いやすく、学習すること自体や問題解決を苦手に感じることが多くなります。漢字学習は漢字を一時記憶し、記憶した漢字を思い出しながら書く、という動作を繰り返す反復練習により長期記憶に定着させるため、このワーキングメモリの役割が重要になります。
ワーキングメモリが低い子どもへの影響
ワーキングメモリが低いと、新しい情報を取り入れることが難しくなる場合があります。漢字学習においては、文字の形や意味を短時間で記憶し、それを繰り返し思い出すプロセスが難しく感じられるのです。そのため、反復学習にストレスを感じやすくなり、さらに学習意欲が低下する可能性があります。ワーキングメモリが低い状態は、特に漢字のような複雑な形を記憶する学習において、大きな壁となるのです。
従来の反復学習にストレスを感じやすい可能性
従来の反復学習は、継続的な記憶によって学習を促進する方法です。これは、ワーキングメモリが低い子どもにとっては非常にストレスを感じやすい可能性があります。何度も書くことにより一時的に記憶される可能性はありますが、深い理解や長期記憶には繋がりにくいのです。
以下の表に示されるように、従来の漢字の反復学習に代わる学習方法を模索するためには、反復学習のワーキングメモリへの影響を理解することが非常に有効だと考えられます。
従来の反復学習 | ワーキングメモリへの影響 | |
---|---|---|
方法 | 漢字をたくさん書く | 認知過負荷のリスク |
記憶の定着 | 短期的効果 | 長期記憶には不向き |
学習意欲 | 低下しやすい | 挫折のリスク増加 |
漢字の反復学習による認知過負荷とは、漢字をたくさん書くことで脳が処理できる情報量を超えてしまう状態のことです。これにより、情報の理解や記憶が難しくなってスピードが低下し、ストレスを感じやすくなります。また、漢字の反復学習は短期的には記憶に残る効果がありますが、長期記憶には不向きです。次は、従来の反復学習が苦手な子どもにおすすめの、反復学習とは異なる学習方法について、認知特性の観点から解説します。
認知特性の中にある認知処理様式の「継次処理」と「同時処理」
ワーキングメモリが低い場合、短期記憶の仕方に反復学習ではない別の漢字学習法を用いることが効果的になる場合があります。
子どもの認知特性を見つける方法
まずはじめに、お子さまの認知特性の中にある認知処理様式が「継次処理」と「同時処理」のどちらが優位かを知るために、次の簡単な質問にご回答ください。
Q.漢字を一画ずつ書き順に沿って覚えるのが得意(もしくは好み)ですか?
は い → 継次処理型が優位な可能性が高い
いいえ → 同時処理型が優位な可能性が高い
Q.漢字全体をイメージでとらえるのが得意(もしくは好み)ですか?
は い → 同時処理型が優位な可能性が高い
いいえ → 継次処理型が優位な可能性が高い
お子さまが「継次処理」と「同時処理」のどちらが優位かによって、意識的に日常の学習方法を見直し、お子さまの総合的な学習効率を高めることにもつながる可能性があります。
▼認知特性の「継次処理」と「同時処理」についてはこちらの記事もご参照ください。
継次処理が優位な場合
継次処理とは、情報を時間的に順番に処理していく方法です。一般的に、リストを順に追っていく作業や、ステップ・バイ・ステップで指示を受けるときに活用されます。この処理方法は、複雑な情報を段階的に理解したい子どもによく合います。たとえば、漢字の学習であれば、筆順を一つひとつ確認しながら繰り返し書くことが有効です。ステップ毎に進めることで、全体をしっかりと理解し記憶することが可能となります。
継次処理を活用した漢字学習法
ワーキングメモリが低く継次処理が得意な子どもには、継次処理を活用する漢字学習法が効果的です。継次処理とは、情報を段階的に処理して順序立てた理解をする認知特性を活かすことで、学習効果を高める手法です。これによって、複雑な漢字の習得も容易になります。
唱えて覚える
「唱えて覚える」方法は非常に有効です。この方法では、漢字の書き順や形を声に出して音声化し、聴覚を使って記憶に定着させます。例えば、「東」という漢字は、「十・口・丁」といった形の構成要素を声に出して確認しながら繰り返すことで、自分の中で組み立ての理解が深まります。これは、複雑な漢字を分解し、個々の要素としてのパターン化を助けることで、長期記憶の形成を促します。また、歌やリズムに合わせて楽しく記憶することで、長期的な記憶の定着がしやすくなります。
また、1日に習得する漢字の数を設定し、進捗をチェックします。具体的な目標を持つことで、達成感を得やすくなり、学習の継続モチベーションが高まります。
「すらら」の漢字アドベンチャー:「こえにだしておぼえる」
「すらら」の漢字アドベンチャーでは、継次処理を活用した漢字学習法として「こえにだしておぼえる」を採用しています。
継次処理を好むお子さまの場合、書き順に沿って声に出しながら漢字の練習をすることが非常に効果的です。
同時処理が優位な場合
同時処理は、複数の情報を一度に捉えて関連付けながら処理する方法です。これは、情報を並行して見ることにより、全体像をつかむのに適しています。全体の構造を理解することが得意な子どもには、この方法が推奨されます。たとえば、漢字学習では、部品や関連する意味を同時に把握することで効率的に学ぶことができます。そして、映像や図を活用して、漢字の書き方や成り立ちをビジュアル的に理解します。
同時処理を活用した漢字学習法
間違い探しで覚える
漢字学習を楽しくする方法の一つに間違い探しがあります。この方法では、似た形の漢字を並べて表示し、どれが正しい漢字かを選ぶゲーム形式で学習します。この同時処理法では、視覚的に漢字を捉え、それらを相互に比較することで、漢字の形を理解しやすくします。この技法により、既に知っている漢字と未知の漢字を比較することで、記憶を強化し、新しい漢字を効率的に学習することが可能です。たとえば、「森」と「林」や「淵」と「湖」のような漢字を比較する問題を作成し、学習者は正しい方を選んでいきます。これにより、漢字の識別力が向上し、長期的な記憶形成につながります。
「すらら」の漢字アドベンチャー:「まちがいさがしでおぼえる」
「すらら」の漢字アドベンチャーでは、同時処理を活用した漢字学習法のひとつに「まちがいさがしでおぼえる」があります。ゲーム感覚で楽しみながら学習できるため、学習の定着度が高まるとともに、勉強の意欲が向上します。
成り立ちで覚える
同時処理を活用するもう一つの方法は、漢字の成り立ちを視覚的に理解することです。漢字は、その多くが象形文字や会意文字(いくつかの漢字を組み合わせて作った、もともとの漢字とは別の意味を示す文字)に由来するので、成り立ちを理解することで記憶に残りやすくなります。例えば、漢字の部首名や意味、例を一覧にし、それがどの部分を表しているのかを視覚的に捉えることで理解が深まります。
部首名 | 意味 | 例 |
---|---|---|
木へん | 木や植物に関するもの | 林、森、桜 |
氵(水へん) | 水や液体に関するもの | 河、海、洋 |
心へん | 心や感情に関するもの | 思、念、感 |
この方法により、漢字の持つ意味や背景の理解につながります。漢字の成り立ちや由来の理解も非常に効果的な場合があります。背景知識を持つことで、文字それぞれの意味と構成をより深く理解できるからです。この方法では、歴史的背景や文化的な由来を踏まえて漢字を解説し、「なぜこの形なのか」「どのように発展したのか」を学ぶことによって、単純な暗記から一歩進んだ深い学習を促します。
この方法によって、漢字の持つ意味や背景を理解することができると、単なる文字の形としてではなく、歴史や文化としても漢字を認識し、結果として記憶がより強固になります。例えば、「森」という字が3本の木が集まった形であることを理解すれば、自然とその形が視覚的に記憶されます。
「すらら」の漢字アドベンチャー:「パーツのくみあわせでおぼえる」
「すらら」の漢字アドベンチャーでは、さらにもうひとつ、同時処理を活用した漢字学習法の「パーツのくみあわせでおぼえる」を採用しています。
これらの同時処理学習法を用いることで、ワーキングメモリが低い子どもでも漢字を楽しく効果的に学ぶことができます。同時処理を活用した学習法を普段の学習に工夫を加えることで、より理解度が深まる可能性があります。
このように、新しい学習方法を取り入れることで、漢字学習をさらに効果的に進めることができます。
まとめ
この記事では、ワーキングメモリがどのように漢字の学習に影響があるかについて注目しながら、お子さまの特性を知り、従来の反復学習とは異なる継次処理と同時処理を活用した漢字学習法について「すらら」の漢字アドベンチャーの具体的な学習法とともにご紹介しました。
お子さまの認知特性に合った学習法を見つけ、効率的に漢字を習得しながら、漢字学習だけではなく、お子さまの様々な学びへの意欲が高まりましたら幸いです。
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