思考ツールとは?種類や使い方、授業での実践例を徹底解説

2026/07/24(金)

授業方法/学習指導

探究学習

こんにちは。「すららネット」コラム運営事務局です。
「子どもたちの可能性をもっと広げたい」「勉強が苦手な生徒にも『わかった!できた!』の成功体験をさせたい」――そんな熱い想いを持って日々の教壇に立たれている先生方を、私たちは心から応援しています。
時代とともに学校教育のあり方も変化していますが、先生方が抱える「知りたい!」「困った!」を解消し、明日からの指導にワクワクしていただけるようなお役立ち情報をお届けしていきます。

それでは、今回の内容を一緒に見ていきましょう。

この記事でわかること/
解決できること

  • 思考ツールが生徒の思考力を伸ばす仕組みとメリット
  • 目的に応じて使い分ける代表的な思考ツールの種類と特徴
  • 思考ツールを授業へ効果的に導入するための指導のポイント
  • 教科の特性を活かした授業での具体的な実践例
目次

思考ツール(シンキングツール)とは?ツールの一覧や使い方、実践例を徹底解説

児童生徒が自ら考える力を養うことは教育において極めて重要ですが、具体的にどのような手順で思考を深めさせるべきか、その手法に悩む教員は少なくありません。こうした課題を解決し、知的な活動を効果的に支える道具が思考ツールです。

思考ツール(シンキングツール)は、頭の中にある漠然としたアイデアや情報を書き出し、目に見える形に整えることで思考のプロセスを助けます。本記事では、導入する具体的なメリットや授業で活用できるツールの一覧や使い方、実践例について詳しく解説します。思考ツールを日々の学習に取り入れることで、子供たちが論理的に物事を捉え、多角的に分析する力を育むための具体的な道筋を提示します。

思考ツール(シンキングツール)とは?

思考ツールとは、複雑な情報を視覚的に整理し、論理的思考を促進するための道具です。思考ツールを使用することで、分類・比較・関連付けといった思考プロセスが明確になります。

代表例として、2つの要素の共通点や相違点を示すベン図があります。このツールはイギリスの数学者ジョン・ベンが考案したものです。ベン図は、教育現場で幅広く活用されています。

他にも魚の骨の形をしたフィッシュボーン図、階層構造を表すイメージマップなど、目的に応じて選択できる多くの種類が存在します。
思考ツールは大人でも活用する場面が数多くあり、ビジネスの場でも会議やプレゼンテーションなどでよく使われています。

思考ツールを使うメリット

思考ツールを活用する最大の利点は、頭の中にある漠然とした考えを書き出すことで可視化し、情報の整理を効率的に行える点にあります。比較や分類を図表として表現するプロセスを通じて、論理的な思考技法が自然と身に付き、学習の質を向上させることが可能です。

また、グループワークなどの協働学習において、自分とは異なる視点や意見を客観的に把握しやすくなる効果もあります。他者の考えを視覚的に捉えることで、物事を多面的・多角的に考察する力が養われ、一人では到達できない深い気づきを得ることにつながります。

思考ツールは、個人の思考を深めるだけでなく、対話を活性化させて集団での学びを豊かにするための強力な武器となります。

意見の違いや共通点を比較できる

生徒は複数の立場や観点を整理し、論理的な判断力を身に付けられます。思考ツールは異なる意見を明確に分類し、比較検討を可能にするからです。
古典の授業では、複数の解釈を並べて比較することで作品への理解が深まるでしょう。比較分析を通じて、生徒は多角的な視点で物事を捉える力を養い、建設的な議論ができるようになります。

自分の思考を客観視しメタ認知を育成できる

思考プロセスを可視化することで、生徒が自分自身の考え方や学習の進め方を客観的に振り返りやすくなります。
KWLチャートなどを活用して「学習前に知っていたこと」と「学習後に学んだこと」を比較すれば、自身の思考の変化や成長を正確に把握できます。

また、学習目標や評価基準を可視化できるルーブリックなどを取り入れることで、生徒が自身の達成度や課題を振り返りやすくなります。詳しくは「ルーブリックとは?表の作り方や活用事例を紹介」をご覧ください。

このように自らの学びを調整するメタ認知能力が育成されることで、より主体的で深い探究学習が実現します。
最終的には、与えられた枠組みに頼るだけでなく、目的に応じて自らツールを選択する力も育まれます。
ルーブリックの活用については「ルーブリックとは?表の作り方や活用事例を紹介」で詳しく紹介しています。

参照元:文部科学省|主体的・対話的で深い学びの実現に向けたICT活用の在り方と質的評価

学校教育における思考ツール活用のポイント

学校教育では、総合的な学習の時間を軸に各教科で思考ツールを効果的に活用できます。育てたい思考スキルに応じて適切なツールを選択することが重要です。

総合的な学習に限らず各教科で取り入れる

教育現場では、個別学習と協働学習で思考ツールが効果的に機能します。個別学習では生徒の思考力向上を目指し、協働学習では共通理解の促進に役立てられるからです。
総合的な学習(探究)の時間は、思考ツールの導入がおすすめです。学習指導要領でシンキングスキルの指導が明記されており、思考ツールを活用する機会が豊富にあります。
関連付ける・理由づけ・多面的に見る・比較するなどの思考スキルは、全教科に共通して必要な能力です。そのため思考ツールも国語・社会・理科など教科を超えて、幅広い学習場面での活用が期待されています。

育てたい思考スキルに応じてツールを選ぶ

教師は指導目的を明確にし、育成したい思考スキルに適したツールを選択することが重要です。ツール選択を先に決めると、思考力育成の目的が曖昧になる危険性があります。
「この単元で比較する力を身に付けさせたい」など、具体的な思考スキル設定が授業成功のポイントです。
明確な目標により生徒の思考が整理され、対話や活動も活性化するでしょう。生徒もワークシートを埋めることを目標とせず、記入内容から新たな発見を得ることで学習効果が向上します。

ICTツールを併用する

思考ツールを授業で活用する際は、タブレット端末やオンラインの学習アプリといったICTツールの併用が効果的です。
デジタル形式のワークシートを利用すれば、何度でも修正が容易になり、生徒が心理的な負担なく試行錯誤しやすくなります。

また、画面上で作成した図をクラス全員ですぐに共有できるため、他者の多様な意見に触れる機会が増加します。
デジタルノート上でコメントを付け合うなど、リアルタイムで相互評価を行うことで、協働的な学びを一層深める効果が期待できます。
ICTツールの活用事例については「ICTツールを文房具のように活用し新しい学びを」で詳しく紹介しています。
AIの教育現場での活用については「AIが教育現場でできることは?メリット・デメリットや活用事例」で詳しく紹介しています。

使用する目的を生徒と共有し、形式的な作業にしない

思考ツールを導入する際、単にワークシートの枠を埋めることが目的化してしまう「思考停止」の罠に注意する必要があります。
形式的な作業で終わらせないためには、「何を明らかにしたいのか」という目的意識を教師と生徒で共有することが求められます。

扱う言葉の意味が曖昧だと論理が破綻しやすいため、言葉の定義をしっかり確認させることも思考を深めるポイントです。
課題の性質に合わせて、生徒自身が最適なツールを選択できるよう段階的な指導を心がけてください。

思考ツール(シンキングツール)の一覧


教育現場では目的に応じてさまざまな思考ツールが活用されております。主な思考ツールと使い方、使うことでのメリットをご紹介いたします。

ベン図


ベン図は、複数の要素間の共通点と相違点を明確に分析できる思考ツールです。円の重複部分で共通要素を、独立部分で固有要素を視覚的に示すからです。
国語の授業で2つの文学作品を比較する際、作品Aと作品Bを円で表現し、重複部分に共通するテーマを記入します。現代社会では民主主義と社会主義の比較分析に活用でき、重複部分には「国民の代表制」などが配置されるでしょう。
このように異なる概念の関係性を整理することで、生徒は比較する思考力を身に付けられます。

ステップチャート


ステップチャートは、目標達成に必要な手順を順序立てて整理できる思考ツールです。最終目標から逆算して、必要なプロセスを段階的に配置するからです。
総合探究で地域課題解決に取り組む際、「課題発見→情報収集→分析→解決策検討→実行計画」という段階を矢印で明確にできます。国語の小論文指導では「テーマ理解→論点整理→根拠収集→構成作成→執筆」の流れを示すことで計画的な学習を支援できるでしょう。
複雑なプロジェクトを小さなステップに分解することで、論理的思考力や話を要約することに役立つツールです。

イメージマップ


イメージマップは、1つの概念から関連する情報を連想し、考えを広げることができる思考ツールです。中心の概念から放射状に線を引き、関連要素を枝分かれさせて展開するからです。
地理の授業では「環境問題」を中心に、「温暖化」「森林破壊」「海洋汚染」といった要素を関連付けて整理できるでしょう。情報を視覚的に体系化することで、生徒の理解が深まります。

フィッシュボーン図


フィッシュボーン図は、問題の根本原因を段階的に分析できる思考ツールです。魚の骨のような構造で、大きな原因から小さな要因までを体系的に整理するからです。
現代社会の授業で「少子高齢化」を分析する際、頭部に問題を配置し、大骨に「経済要因」「社会要因」、小骨に詳細要因を記入します。根拠となる論点を段階的に整理することで、論理構造が明確になるでしょう。

Xチャート・Yチャート・Wチャート


視点を切り替えたり、情報のつながりを整理したりする際には、Xチャート・Yチャート・Wチャートといったツールが非常に役立ちます。これらはテーマを3つから4つの切り口で分類し、物事を多面的な視点で捉える力を養うために用いられます。

「X・Y・Wチャート」は、複数の観点から情報を整理し、思考を構造化するのに適したツールです。一方で、手順や時系列の変化を可視化して全体の見通しを持たせる場合には、ステップチャートなどの活用が推奨されます。

目的に応じてこれらのツールを使い分けることで、プロセスの変化を的確に捉え、より深い分析が可能になります。それぞれのツールの特徴を理解し、思考を深める場面で活用してください。

マトリクス(表)


マトリクスは、2つの軸を用いて情報を整理し、項目間の関係性を分析する手法です。縦軸と横軸に「重要度」「緊急度」といった、異なる評価項目を設定します。
それぞれの項目が交差するマスに情報を書き込み、考えを整理・まとめることができます。進路指導で「興味」と「適性」を軸に、生徒一人ひとりの強みを可視化する練習としても活用できます。
複雑な情報も視覚的に分かりやすく分類できるため、優先順位付けや意思決定をサポートする思考ツールとして有効です。

クラゲチャート


クラゲチャートは、中心に置いた1つの「問い」から、放射状に考えを広げていく思考ツールです。その名の通り、クラゲのような見た目が特徴といえます。
まず「なぜ〇〇か?」といった探究テーマを中央に置きます。そこから伸びる足に、問いの答えや関連するキーワード、新たな疑問などを書き足し、思考を可視化していきましょう。
単にアイデアを拡散させるだけでなく、問いを中心に考えを構造化できるのがメリットです。生徒が物事を多角的に深掘りする訓練に適しています。

KWLチャート


KWLチャートは、効果的に教材を理解させるために開発された思考ツールです。Kは「知っていること」、Wは「知りたいこと」、Lは「学んだこと」をそれぞれ記入する3つのマスがあります。
KWLチャートで情報を視覚的に整理することで効率良く学習が進み、自分の理解度も把握しやすくなります。
知識を共有することで、コミュニケーションがスムーズになり、授業の質向上も期待できるでしょう。教育現場での活用に適した実践的なツールです。

座標軸


座標軸は、縦軸と横軸に設定する観点で情報の見え方が変わる思考ツールです。数学では数値を厳密に扱いますが、思考ツールとして使う場合は感覚的・相対的に情報を配置します。横軸に時間軸を設定し、変化を連続的に捉えることも可能です。
グループで議論しながら書き出し、整理することで考えを深めやすくなります。完成した座標軸から特徴を見つけ、議論の視点を絞ることが重要です。

PMI法

PMI法は、対象を「Plus(良い点)」「Minus(悪い点)」「Interesting(興味深い点)」の3つの視点から客観的に評価する思考ツールです。
アイデアを単に良し悪しだけで判断するのではなく、多面的な角度から冷静に分析する習慣を身に付けることができます。

ディベートの準備やニュース記事の読み解きなど、複雑な事象を整理して意思決定を行う場面で役立ちます。
個人の感情に流されず、論理的で客観的な判断力を養うのに適した手法です。

思考ツールを使った授業での実践例

実際の教育現場では、各教科の特性を生かした思考ツール活用が効果的に行われています。現代文Bと地理Aでの活用例を見ていきましょう。

静岡サレジオ高等学校|韓国の受験過熱化をテーマとした探究学習を通して東アジアの地誌を学ぶ授業

静岡サレジオ高等学校では、地理総合の授業においてICTツールとマインドマップを組み合わせた探究学習を実践しています。韓国の過熱する受験競争を題材に、その背景にある社会構造や生活文化を多角的に分析し、東アジアの地誌的理解を深めることが狙いです。

授業では、デジタルノート上に自身の思考をマインドマップとして可視化し、情報の整理を行います。作成したマップをクラス全体で共有することで、自分とは異なる視点や要因の発見を促しています。

ふせん機能を活用した相互評価により、生徒同士の意見交換が活発化し、協働的な学びが深化しました。情報の収集から検討、創造までのプロセスをICTで支援し、生徒が自ら問いを立てて発信する力の育成に取り組んでいます。

浦和実業学園中学校・高等学校|助動詞「せ」を中心に源氏物語『桐壺』を読み解く授業

浦和実業学園中学校・高等学校では、古典の授業にICTを活用し、源氏物語『桐壺』を深く読み解く実践が行われています。この授業では助動詞「せ」の解釈を軸に据え、生徒が自ら調べ、考えるプロセスを重視しています。

生徒はデジタルノートのふせん機能を用いて、班ごとに考察をまとめます。単に答えを出すだけでなく、発表に至るまでの話し合いの過程を可視化することで、深い気づきを促すのが特徴です。

さらに、オンライン辞書機能を活用して重要語句を効率的に調べるなど、語彙力と読解力の相乗効果を狙っています。教員から正解を提示されるのを待つのではなく、ICTを「もう一人の先生」として自学自習に役立て、論理的な思考力を養っています。

まとめ

思考ツールは、複雑な情報を視覚的に整理し、論理的思考を促進するための道具です。代表的な種類としてベン図、イメージマップ、Xチャートなどさまざまなツールが存在します。学校教育では、総合的な学習(探究)の時間などを軸に、各教科で活用が期待されています。
現代文Bでイメージマップを活用し心情理解を深める例や、地理AでXチャートを使い住居を比較する例を紹介しました。思考ツールを用いる授業の参考にしていただければ幸いです。

執筆者

多胡 晋太郎

株式会社すららネット マーケティング本部 学校ソリューショングループ

【学校向けサービスサイト運営/教育コンテンツ企画/ホワイトペーパー制作】を担当。
すららネットは、AIを活用したICT教材「すらら」「すららi」等を通じて、【約2000校・約25万人】の学習支援に取り組んできた教育ソリューション企業。
学校・自治体への導入支援や教育現場との接点を通じて蓄積された知見をもとに、ICT教材の活用等に関する記事の企画・執筆を行っている。

CONTACT USお問い合わせ

「すらら」「Surala-i」に関する資料や、具体的な導⼊⽅法に関するご相談は、
下記のフォームよりお問い合わせください。

「すらら」「すららドリル」ご導⼊校の先⽣⽅は
こちらよりお問い合わせください。

閉じる