【日本語能力試験(JLPT)のN1レベルの難易度は?】実際の合格率や勉強時間の目安を徹底解剖
「日本語に対する理解度を企業にアピールしたい」「高めた日本語レベルがどこまで通用するのか試してみたい」
上記のような方は、ぜひ日本語能力試験(JLPT)のN1レベルを受けてみてください。
N1レベルは最も高いレベルとなっており、日本人でも満点を取ることが難しいとされています。そんなN1レベルが取得できれば、グローバル化が進んでいる日本の企業にとって、ぜひとも欲しい人材になれるでしょう。
本記事では、日本語能力試験(JLPT)の基本的な情報から、N1レベルの難易度・合格率・試験の例題などを詳しく紹介します。N1レベルの注意点についても解説するのでぜひ最後までご覧ください。
この記事を読む方で、外国人へ日本語を教えることについて下記のようなお悩みを持っている方はいませんか?
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もくじ
日本語能力試験(JLPT)とは?外国人の日本語能力を測る試験
日本語が母語でない人の日本語の能力を測るための試験が「日本語能力試験(JLPT)」です。5つのレベルが用意されており、日本語に対する理解度が正確に採点されます。日本語能力試験の取得結果を求人の応募条件にしている企業も多いです。
外国人材を採用する際のポイントの1つに「言葉の壁」があります。経験が豊富で高いスキルを有していても、うまく意思疎通ができず伝えられた内容を正しく理解できなければ、業務に大きな支障が出てしまうことも少なくありません。
日本語能力試験は、自分の日本語能力を正しく企業側に把握してもらうための大きな指標となるうえに、現在のレベルを自分自身で理解することもできます。
日本語能力試験(JLPT)のレベル・難易度
日本語能力試験には「N1」「N2」「N3」「N4」「N5」の5つのレベルがあり、数字が小さければ小さいほど難易度が高くなっています。それぞれのレベルの大まかな難易度は下記の通りです。
レベル | 特徴 | 読む力 | 聞く力 |
N1 |
|
抽象的な文章を読み、内容や構成が理解できる | 自然なスピードで会話やニュースを聞くことができ、話の流れを理解し要旨を把握できる |
N2 |
|
一般的な話題に関する読み物を読み、話の流れや表現意図を理解できる | 自然に近いスピードで会話やニュースを聞くことができ、話の流れを理解し要旨を把握できる |
N3 |
|
新聞や雑誌の見出しから情報の概要がつかめる | 自然に近いスピードで会話を聞き、登場人物の関係性と共に具体的な話の内容をほぼ理解できる |
N4 |
|
基本的な漢字や語彙を使用して書かれた文章を読み、内容を理解できる | ややゆっくりめで会話すればほぼ内容を理解できる |
N5 |
|
日常生活で用いられる定型文などを読んで理解できる | ゆっくり短い会話であれば必要な情報が聞き取れる |
日本語能力試験(JLPT)のN1レベルの難易度
日本語能力試験において、最も高いレベルとなるのが「N1レベル」です。自分自身のレベルアップのためにも、N1レベルの取得を目指している外国人は少なくありません。
試験を受ける前に、N1レベルの具体的な難易度や覚えるべき内容などについて、まずはここで正しい情報をしっかりと把握しておきましょう。
【日本語能力試験(JLPT)のN1レベルの難易度】
- 日本語能力試験(JLPT)の中で最も難しい
- 2,000以上の漢字と10,000以上の語彙を覚えなければならない
- 900〜1,200時間の学習が必要と言われている
日本語能力試験(JLPT)の中で最も難しい
5つのレベルがある日本語能力試験の中で、最も難易度が高いのが「N1レベル」です。
読解問題では、抽象的な表現に対する理解度や複雑な文章を読み解けるのかを判断します。聴解問題では、話の中の登場人物の関係性・詳細な内容について深く理解できるのかがポイントです。
問題は長文かつ複雑な内容が出されるため、単純に日常会話に関する理解があるレベルでは取得できません。また、日本人であってもうっかりミスで読み飛ばしてしまうような内容となっいます。
2,000以上の漢字と10,000以上の語彙を覚えなければならない
N1レベルを取得するには、2,000以上の漢字と10,000以上の語彙を学ぶ必要があります。
特に読解問題では漢字を読む力が非常に重要となり、長文問題では漢字にふりがなもありません。単純な問題ももちろん出題されますが、近い意味を持つ4つの熟語の中から正解を選択する問題もあります。
また、数多くの語彙を把握できていなければ、問題の内容を理解することすら難しくなるため、いかにN1レベルで求められる日本語能力が高いかが分かります。
900〜1,200時間の学習が必要と言われている
日本語能力試験のN1レベルを取得するためには、平均的に900~1,200時間の学習が必要とされています。独学だけでは非常に困難で限界があるため、日本語学校に通っているケースも少なくありません。
N1レベルで求められる日本語能力は、政治・経済といった抽象的で複雑な文章を正しく把握し、話の流れや表現意図を理解することができる高い能力です。
N1レベルの取得を目指す際には、独学ではなく学校に通うなどの学習環境を整えることが大切でしょう。
日本語能力試験(JLPT)のN1レベルの受験者数
日本語能力試験は1984年にスタートしました。当初の受験者数は7,000人程度でしたが、2009年には50万人以上・2019年には100万人以上と、徐々にその数を増やしています。
過去5年間における日本語能力試験の受験者数の推移は下記の通りです。
実施年 | 実施月 | 全体応募者数 ※N1レベルの応募者数 |
全体受験者数 ※N1レベルの受験者数 |
2019年 | 7月 | 644,104人 ※135,998人 |
550,448人 ※116,860人 |
12月 | 718,063人 ※148,488人 |
618,067人 ※127,828人 |
|
2020年 | 12月 | 424,147人 ※91,401人 |
370,028人 ※80,237人 |
2021年 | 7月 | 387,371人 ※110,705人 |
335,915人 ※95,175人 |
12月 | 420,210人 ※107,791人 |
348,992人 ※89,537人 |
|
2022年 | 7月 | 426,225人 ※106,312人 |
356,505人 ※90,299人 |
12月 | 506,293人 ※95,979人 |
431,449人 ※80,518人 |
|
2023年 | 7月 | 698,062人 ※141,392人 |
602,140人 ※120,407人 |
12月 | 782,961人 ※147,233人 |
663,295人 ※121,554人 |
引用:日本語能力試験「過去の試験のデータ」
上記のデータは国内外の合計です。2020年は、新型コロナウイルスの影響により12月の1回のみの開催となり、7月の試験は全世界で中止となりました。
そのため、全体的に受験者数が少なくなっていますが、その数字も徐々に回復しています。実施回数も年2回となり、これからは今まで以上の受験者数が予想されています。
新型コロナ禍による制限が緩和された2023年は過去最高の約148万人の応募があり、海外応募者数が初めて100万人を突破しました。
日本語能力試験(JLPT)のN1レベルの合格点と合格率
日本語能力試験のN1レベル取得を目指す方にとって、その合格点や合格率は特に気になるポイントです。まずは下記の表でN1レベルの合格点について見ていきましょう。
総合得点 | 得点範囲 | 0~180点 | |
合格点 | 100点 | ||
区分別得点 | 言語知識 (文法・語彙・文字) |
得点範囲 | 0~60点 |
基準点 | 19点 | ||
読解 | 得点範囲 | 0~60点 | |
基準点 | 19点 | ||
聴解 | 得点範囲 | 0~60点 | |
基準点 | 19点 |
引用:日本語能力試験「よくある質問・得点と合否判定について」
N1レベルに合格するためには、総合得点が100点以上かつ区分別得点がそれぞれ19点以上必要になります。総合得点が高くても、区分別得点のどれか1つでも基準点に達していない場合は不合格となってしまうため注意しておきましょう。
次に、過去5年間におけるN1レベルの合格率について紹介します。
実施年 | 実施月 | 合格者数/受験者数 (認定率) |
2019年 | 7月 | 34,235人/116,860人 (29.3%) |
12月 | 39,312人/127,828人 (30.8%) |
|
2020年 | 12月 | 36,270人/80,237人 (45.2%) |
2021年 | 7月 | 37,516人/95,175人 (39.4%) |
12月 | 30,926人/89,537人 (34.5%) |
|
2022年 | 7月 | 27,246人/90,299人 (30.2%) |
12月 | 24,782人/80,518人 (30.8%) |
|
2023年 | 7月 | 40,975人/120,407人 (34,0%) |
12月 | 37,553人/121,554人 (30,9%) |
引用:日本語能力試験「過去の試験のデータ」
最も高い認定率となっているのは2020年12月に実施された試験で、結果は「45.2%」でした。2019年から2023年に行われた全9回の平均は、国内・海外合わせて「33.9%」となっており、全体の約3割程度という結果です。
【公式の問題例】日本語能力試験(JLPT)のN1レベルの例題
具体的な試験の問題を知りたい方は、公式の問題例をチェックしてみてください。無料でN1レベルの出題内容を知ることができます。
ここでは、N1レベルの問題例の一部を紹介するのでぜひ解いてみてください。
【日本語能力試験(JLPT)のN1レベルの例題】
- 問1.()の言葉の読み方として最もよいものを、1・2・3・4から一つ選びなさい
- 問2.()に入れるのに最もよいものを、1・2・3・4から一つ選びなさい
- 問3.()の言葉に意味が最も近いものを、1・2・3・4から一つ選びなさい
問1.()の言葉の読み方として最もよいものを、1・2・3・4から一つ選びなさい
読み方として適切な種類を選択する問題です。まずは問題文を見てみましょう。
問.「彼は今、新薬の研究開発に(挑んで)いる。」
(1)はげんで(2)のぞんで(3)からんで(4)いどんで
答えは「(4)いどんで」です。この問題では、受験者の漢字に対する理解度や文章の読解力が求められます。
問2.()に入れるのに最もよいものを、1・2・3・4から一つ選びなさい
空いている箇所に適切な単語を入れて文章を完成させる問題です。
問.「私の主張は単なる()ではなく、確たる証拠に基づいている。」
(1)模索(2)思索(3)推測(4)推移
この問題の答えは「(3)推測」です。それぞれの漢字の読みや意味だけでなく、文章全体の意味に関しても正しく理解する能力が欠かせません。
問3.()の言葉に意味が最も近いものを、1・2・3・4から一つ選びなさい
文中にある単語と似た意味を持つ言葉を選ぶ問題です。
問.「このマニュアルの説明は(ややこしい)。」
(1)明確だ(2)奇妙だ(3)複雑だ(4)簡潔だ
この問題の答えは「(3)複雑だ」です。漢字の意味・使い方や語彙力を試される問題で、似た意味を持つ言葉を正しく把握しておく必要があります。
日本語能力試験(JLPT)のN1レベルの注意点
日本語能力試験は、外国人の日本語に対する理解力を示す指標となり、企業としては人材の日本語レベルを正しく把握するためにとても重要なポイントと言えます。
しかし、「日本語能力試験のN1レベルを取得していれば何の問題もない」ということではありません。ここでお伝えする3つの項目について意識して注意するようにしてください。
【日本語能力試験(JLPT)のN1レベルの注意点3選】
- N1レベルが必要な職種ばかりではない
- 「N1レベル=日本語のコミュニケーションが円滑」とは限らない
- ビジネスにおける日本語の知識とは別である
N1レベルが必要な職種ばかりではない
日本の企業として、外国人の日本語レベルは採用基準としてとても重要です。しかし、N1レベルが必要な職種ばかりではありません。日本で働く場合、N2レベルの日本語能力でも十分通用します。
難しく複雑なやり取りが主となる場合や通訳業務などは、N1レベルの日本語能力が必須となりますが、そうでない場合は無理にN1レベルの取得をする必要はありません。
マニュアルが完備されている工場のライン作業や定型的な会話が主となる接客業などの場合、N3レベルでも十分対応可能となるため、企業によって求めるレベルは異なります。
「N1レベル=日本語のコミュニケーションが円滑」とは限らない
日本語能力試験は、あくまでも日本語に対する理解度を測るための試験です。そのため、最も高いN1レベルを取得したからといって、日本語のコミュニケーションが円滑に行えるということではありません。
コミュニケーション能力に対する判断は、面接時などに見られることがほとんどとなるため、質問に対する受け答えなどがしっかりとできるように訓練する必要があります。
ビジネスにおける日本語の知識とは別である
ビジネスシーンでは、日本語は尊敬語や謙譲語などに変換されます。N1レベルは日常会話の理解度が高いことを示すものとなるため、ビジネスにおける日本語の知識とは別ものと考えておきましょう。
ビジネスの場面において先方に失礼な言い方をしてしまったり、上司に適切な言葉遣いができないケースも少なくないため、周囲に日本語に対する注意を受けた際には素直に受け入れるようにしましょう。
日本語能力試験(JLPT)のN1レベルに関するよくある質問
最後に、日本語能力試験のN1レベルに関するよくある質問の中で、特にしっかりと認識しておくべき2つの質問を紹介します。内容を正しく把握し、日本語能力試験に対する理解を深めておきましょう。
【日本語能力試験(JLPT)のN1レベルに関するよくある2つの質問】
- 日本語能力試験(JLPT)のN1レベルは日本人も受験できる?
- 日本語能力試験(JLPT)のN1レベルはすごい?
日本語能力試験(JLPT)のN1レベルは日本人も受験できる?
日本語能力試験の対象者となるのは母語が日本語ではない人です。そのため、基本的には日本人は受験できません。
しかし、日本国籍であったとしても、母語が日本語以外であれば試験を受けることが可能で、年齢に関する制限なども設けられていません。
日本語能力試験(JLPT)のN1レベルはすごい?
N1レベルは日本人であっても満点を取ることが難しいとされており、合格率は平均して30%前後です。そのため、母語が日本語ではない人の取得はすごいと言えます。
日本語に対する高い理解力が求められるN1レベルを取得できれば、言葉に対する理解度が日本人と大差がないでしょう。
まとめ:最も高いN1レベルを取得し、日本語能力を正しく示しましょう!
多くの日本企業では、日本語能力の高さは採用基準の大きな目安となっているケースが少なくありません。日本語能力試験において最も難易度が高いN1レベルは、日本語に対する深い理解を示す指標となります。
しかし、全体の約3割程度という低い合格率から見ても、N1レベルは容易に取得できるものではなく、数多くの漢字・語彙の勉強や長時間の学習は必須でしょう。
N1レベルを取得すれば日本語に対する高い能力が認められるため、自分自身の大きな武器として活用可能です。本記事でお伝えした情報を参考に試験の合格を目指しましょう。
この記事を読んだ方で、外国人へ日本語を教えることについて下記のようなお悩みを持っている方はいませんか?
- 「正しい日本語を聞く機会が少ない」
- 「母語で意味を確かめながら勉強したい」
- 「働きながら日本語教室に行く時間が中々取れない…」
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