ADHDの子どもが集中できる勉強法は?保護者のサポート方法を解説

ADHDの子どもには、「集中が続かない」「そわそわと動いてしまう」などの傾向があります。このような特性から、学校の授業に集中できず、勉強がうまくいかない経験が積み重なって、勉強すること自体に苦手意識を持ってしまうことは少なくありません。

この記事では、ADHDの子どもが集中しやすい勉強法や、勉強環境の作り方、保護者が勉強をサポートするときのポイントを詳しく解説するほか、勉強法の体験談についても紹介します。お子さまの勉強法にお悩みのある保護者の方は、ぜひ参考にしてください。

ADHDの子どもが集中しやすい勉強法とは?

ADHD(注意欠如多動症)の子どもには、気が散りやすく集中が続かない、じっとしていることが苦手、次にやることを忘れてしまうなどの特性があるため、勉強法にも工夫が必要です。ADHDの子どもが効果的に勉強に取り組める、おすすめの勉強法を紹介します。

<ADHDの子どもが集中しやすい4つの勉強法>

その時の勉強予定をリストにして視覚化する

勉強時間を短く区切って、短時間の勉強を重ねる

体を動かしながら勉強する

イラストや動画を使った勉強にする

その時の勉強予定をリストにして視覚化する

ADHDの子どもは、ワーキングメモリが弱いという特す。ワーキングメモリとは、作業に必要な情報を一時保存して処理する脳の機能のことです。ADHDの子どもは、一時保存する場所がひとつしかないような状態で、作業途中にほかのことに気をとられると、そのことに頭が占拠されてしまって、それ以外の記憶が抜けてしまいます。

そのため、「◯◯の次は◯◯をやって、その次は◯◯をやる」というような、次の予定を記憶することが難しくなります。そこで、勉強に取り組むときは、その時にやるべき勉強のスケジュールを紙に書いたり、タブレットに表示したりして視覚化し、見えるところに置いておくことが効果的です。「何の教科を、問題は何問で、何分やる」など、具体的に計画を立てるといいでしょう。

勉強時間を短く区切って、短時間の勉強を重ねる

ADHDの子どもは集中力が途切れやすく、30分間続けて勉強することも難しい場合があります。そのため、10~15分の短い時間の勉強と休憩を繰り返す勉強法がおすすめです。問題集なら「3問解く」を区切りにするなど、短時間でクリアできる目標を次々達成していくような感覚で取り組むといいでしょう。

砂時計やタイマー(残り時間が面積で表示されて、時間とともに面積が狭くなっていくもの)など、時間の経過が量的に減っていくことで表現されるアイテムを使うと、子どもが時間の感覚を掴みやすくなります。

体を動かしながら勉強する

勉強している途中で立ち上がって歩きだしてしまうなど、多動の症状があるADHDの子どもは「動いていたい」という欲求が強く、自分では抑制できません。「座りなさい!」「じっとして!」と強く注意しても効果はないどころか、無理に動きを禁じると、ますます学習に対してエネルギーが向けられなくなります。

じっと座って勉強できないなら、勉強中に体を動かすタイミングを作りましょう。例えば、「この問題が解けたら見せに来てね」と伝えて、問題を解くごとに立ち上がる機会を作ったり、立ちながら・寝転がりながら勉強したりすることも効果があります。歩きながら音読や暗記に取り組むのもおすすめです。

教科書や問題文を声に出して読むことなど、発声の機会を作ることで動く要求を満たすと、落ち着いて勉強に取り組める場合もあります。また、机や椅子に装着して座ったまま足を動かせるようにする「センサリーツール」を使用したり、ボールやリングなどを手でいじったりすると、学習に取り組みやすくなることがわかってきました。

このような、手足を動かせるようにする環境づくりは、アメリカなどでは当たり前のように行われており、最近は日本でも合理的配慮の一例として導入されるケースが増えています。

イラストや動画を使った勉強にする

ADHDの子どもは、長い文章を読むのが苦手だったり、文章だけで内容を理解するのが難しかったりする傾向があります。そこで、イラストや動画で視覚的に理解できる教材がおすすめです。図解や写真の多い教材や、キャラクターが問題を説明してくれる教材など、視覚的な刺激が多いと、注意をひきつけて集中力を持続させる効果も期待できます。

また、脳科学の研究では、言語と視覚の力を同時に使うことが、ワーキングメモリの保持に有効であることがわかっています。文字情報に加えてイラストなどの視覚的な刺激がある教材を選ぶことで、ADHDのワーキングメモリが弱いという特性を支えることができるでしょう。

無学年式のオンライン教材「すらら」は、文字・イラスト・音声を結びつけてゲーム感覚で学べる多感覚学習を採用しています。個性豊かなキャラクターが先生となり、対話形式で講義を行うなど、ADHDのお子さまが楽しく勉強に取り組める工夫が満載です。ADHDのお子さまの勉強方法にお悩みなら、「すらら」への入会を検討してみてはいかがでしょうか。

 

ADHDの子どもが集中しやすい勉強環境の作り方

ADHDの子どもが集中して勉強に取り組むためには、勉強法に加えて、勉強する環境を整えることも大切です。子どもの五感に届く感覚刺激を調整することで、落ち着いて勉強できるケースは多々あります。まずは家庭の学習スペースの環境を見直してみましょう。

壁やパーテーションで勉強スペースを囲う

ADHDの子どもの傾向として、視覚からの刺激が強いと、注意がそれてしまったり、イライラが募ってしまったりすることがあります。家族の動きが目に入ったり、外の風景が見えたりしないように、壁に向かって机を設置して、パーテーションで勉強スペースを囲うなどするといいでしょう。

子どもが過ごす部屋は、置物や壁の飾りなどは最小限にして、子どもの目に入る情報を少なくすることで、落ち着いて過ごしやすくなるはずです。小さな変化に敏感なこともあるので、物の配置はなるべく変えないことをおすすめします。

音・におい・温度などの刺激を減らす

視覚の刺激以外にも、音やにおい、室温などに不快感を覚えて、集中が途切れてしまうことがあります

静かな環境を作るのが難しい場合はノイズキャンセリングのイヤホンを使う、勉強中は料理をしないようにしてにおいを防ぐ、温度計を設置して適温を保つなど、子どもの集中を邪魔してしまう要素を一つひとつ除いていきましょう。

ADHDの子どもとの関わり方は?保護者の勉強サポートのコツ

ADHDの子どもの家庭学習では、保護者はどのようなサポートができるのでしょうか。ここでは、保護者の関わり方のポイントを紹介します。

できたことをほめる

勉強のやる気を引き出すには、ほめることが大切です。ADHDの子どもの効果的なほめ方として、下記の3つのポイントがあります。

名前を呼んでほめる

名前を呼ぶことで意識が保護者に向いて、ほめられていることを認知しやすくなるため、ほめ言葉がより伝わる

その場でほめる

ADHDの子どもはワーキングメモリが弱い傾向があるため時間をあけてほめられてもピンとこない。タイミングを逃さずその場ですぐほめる

具体的にほめる

「えらい」「すごい」などではなく、具体的に何がよかったのかを伝える。「昨日は2問だったけど、今日は4問解けたね。よくがんばっているね」など

名前を呼んでほめる 名前を呼ぶことで意識が保護者に向いて、ほめられていることを認知しや
すくなるため、ほめ言葉がより伝わる
その場でほめる ADHDの子どもはワーキングメモリが弱い傾向があるため時間をあけてほめ
られてもピンとこない。タイミングを逃さずその場ですぐほめる
具体的にほめる 「えらい」「すごい」などではなく、具体的に何がよかったのかを伝える。
「昨日は2問だったけど、今日は4問解けたね。よくがんばっているね」など

伝え方を工夫する

ADHDの子どもに何かを伝えるときは、短い言葉でゆっくりと具体的に伝えるようにしましょう。ワーキングメモリは素早く通り過ぎるものが定着しにくいので、話すスピードが早いと、子どもはいわれたことを理解できないことがあります。

また、ワーキングメモリが弱いADHDの特性として、最後の言葉が残りやすい傾向があります。例えば、「勉強するよ。遊びの時間はいったん終わり」と伝えた場合、遊びの時間は終わりということしか頭に残らず、勉強するという情報が抜けてしまうのです。「遊びは終わりにして勉強するよ」なら、「勉強するよ」が頭に残ります。言葉を分けずに短い言葉で伝えることで、伝わりやすくなります。

<監修者コメント>

株式会社RIDGE SPECIAL EDUCATION WORKS代表
小嶋 悠紀(こじま ゆうき)さん

ADHDの子ども達の学習支援は、大まかに「2つの段階」で分けるようにしています。まず低学年期には、大人の支援によって、圧倒的な数の「できた」「わかった」という経験をすることが重要です。高学年期には、「できた」「わかった」という経験と同時に、「なぜできたのか?」「どうしてわかったのか?」という過程に目を向けて「ほめる」ことがポイントになります。学習の成果だけでなく過程もわかりやすいなど、保護者の方がほめやすい学習支援ツールを使うことをおすすめします。

ADHDの子どもが実践した勉強法とは?体験談を紹介

ADHDのお子さまが実際に取り組んでいる勉強法について、2つの体験談を紹介します。

小学6年生Dさんの場合:毎日1時間学習のルールを継続中

小学6年生のDさんは、興味のあることには集中できる一方で気分に左右されやすく、漢字ドリルで漢字を10回書くだけでも1時間かかってしまうことがありました。オンライン教材を使ってはいたものの、勉強に取り組むめる時間はごくわずかでした。

そこで「毎日1時間勉強する」というルールを設定しました。保護者は学習内容よりも「1時間やりきること」を重視し、勉強の中身にはあえて口を出さないようにしたのです。ゴールが「1時間」と決まっていることで、勉強に集中しやすくなり、毎日継続できるようになりました。こうした積み重ねの結果、苦手だった科目の点数アップにもつながりました。

中学3年生Iさんの場合:「今日やること」を明確にして集中力をキープ

中学3年生のIさんは、自分から勉強に取り組むことが苦手でした。しかし、あらかじめ学習計画を立ててやるべきことを明確にし、オンライン教材にログインするとすぐに「今日やることがわかっている状態」にしたことで、集中を崩さず勉強を始められるようになりました。また、キャラクターによる解説やゲーム的な要素がある教材を使うことで、勉強へのハードルを低く感じられたようです。

勉強の際には「テレビを消す・机を片付ける」「終わったら好きなことをして自由に過ごせる」といったシンプルなルールを設けたことも効果的でした。こうした工夫により、集中して勉強できる時間が増えました。

ADHDの特性に合った勉強法で子どもの学習をサポート

ADHDの子どもにとって、勉強への集中は難しいこともありますが、特性に合った勉強法や環境作り、保護者の適切なサポートによって、前向きに取り組めるようになることも多いでしょう。大切なのは、できたことをいっしょに喜びながら、お子さまのペースに合わせて続けていくことです。できることを1つずつ積み重ねていくことで、自信や学習意欲も育まれていきます。保護者は焦らず、お子さまが安心して勉強できるようにサポートしてください。

お子さまの勉強をどのようにサポートしたらいいか迷うときは、集中力を持続させる工夫が満載の「すらら」がおすすめです。勉強のつまずきの原因をAIで特定して、自動的にさかのぼり学習する機能を使えば、お子さまの「できた」「わかった」という経験を積み重ねることができます。

 

<監修者紹介>
株式会社RIDGE SPECIAL EDUCATION WORKS代表
小嶋 悠紀(こじま ゆうき)さん

発達支援コンサルタントとして、特別支援教育の技術などをテーマに全国で講演を実施。信州大学教育学部在学中に発達障害がある人を支援する団体を立ち上げ、代表を務める。元・小学校教諭。直接の指導や支援会議への参加・学習会、オンライン発達相談を通じて、これまで3000人をこえる子どもの支援に関わるなど、幅広く活動している。日本初のセンサリーツール「ふみおくん」共同開発者。著書:『発達障害・グレーゾーンの子がグーンと伸びた 声かけ・接し方大全』(講談社2023年)など。

 

<執筆者紹介>
株式会社すららネット
子どもの発達支援室 室長
佐々木章太
ICTを使った出席扱い制度の第一人者。2015年から出席扱い制度に関する啓蒙活動を行っている。出席扱い制度専用窓口の設置、学校提出用のオリジナル出席扱い申請書を作成、2019年に文科省へ訪問し出席扱い制度の課題について提言するなど、制度認定までのスマート化を促進。保護者、学校、自治体への連携支援をはじめ、昨今ではオンラインフリースクール事業者に対して出席扱い制度のノウハウを伝授するなど制度普及に貢献。すららの出席扱い認定数は延べ2,000名を超える。

よくある質問

ADHDの子どもにおすすめの勉強法はありますか?

ADHDの子どもが勉強に集中して取り組む方法としては、下記のような工夫が効果的です。

<ADHDの子どもの集中力を高める勉強法>

・勉強予定を書き出すなど視覚化することで、次に何をすればよいかがわかりやすくする
・10~15分など短い時間の学習と休憩を繰り返すことで、集中力を保ちやすくなる
・立つ、歩く、手足を動かすなど、「体を動かしながらの勉強」を取り入れる
・イラストや動画を使った教材を活用することで、視覚的な刺激により集中力を維持しやすくなる文章だけでは理解しにくい内容も視覚的に理解しやすくなり、集中が続きやすくなる

ADHDの子どもにはどのような勉強環境が必要ですか?

ADHDの子どもは周囲の刺激に注意を奪われやすいため、壁やパーテーションで勉強スペースを囲うなどして、勉強中の視覚情報を減らすと集中しやすくなります。部屋の飾りは最小限にし、物の配置も変えないようにするのが効果的です。さらに、音・におい・温度などの刺激も集中を妨げるため、静かな環境づくりや勉強中の調理は控えるほか、適温の維持についても気にしてみましょう。

ADHDの子どもの勉強に保護者はどう関わればいいですか?

ADHDの子どものやる気を引き出すには、できたことをその場で具体的にほめるなど、ポジティブな関わりが効果的です。また、伝えるときは短くゆっくりと、最後に大事な言葉を持ってくるように工夫すると、子どもが理解しやすくなります。

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