認知特性とは?分類別の特徴と特性を生かす勉強法を解説

認知特性への理解やそれを生かす学習方法を知ることは、子どもの学習環境をよりよくするために欠かせないものとなっています。しかし、そもそも認知特性について知らない、認知特性をどのように子どもの学習に生かせばよいか分からないという保護者の方も多いのではないでしょうか。

そこで、本記事では認知特性の意味や種類別の特徴に焦点を当て、認知特性を生かす学習法について解説します。認知特性について理解を深め、お子さまがより効果的な学習をできるようお役立ていただけましたら幸いです。

認知特性=情報の認識や処理方法の特性


認知特性とは、視覚や聴覚など感覚器官から受け取った情報を認識する力・理解する力・記憶する力・表現する力を指します。人にはそれぞれ異なる認知特性があります。そのため、同じ情報でも、全ての人が同様の方法で処理するわけではありません。

認知特性はある程度生まれつきで決まっている

認知特性は、ある程度生まれつきで決まるといわれています。認知特性は生まれながらの感覚(視覚や聴覚など)の違いによって決まるからです。視覚が優位であれば、視覚からの情報の処理が得意な特性、聴覚が優位であれば、聴覚から入る情報の処理が得意な特性となります。特に、発達障がいがある人は視覚優位もしくは聴覚優位に特化している場合が多いといわれています。

子どもの認知特性への理解が大切な理由

子どもの認知特性を理解することは、個々の認知特性に合った学習環境を整えるためにとても重要です。前述の通り、認知特性には個人差があるため、同じ勉強の仕方でも、個々の理解度には差が出ます。子どもの認知特性を理解していれば、得意な特性を伸ばす方法で学習し、1人ひとりの理解度を上げることが可能になります。また、中には、ある感覚が過敏なために、特性が集中の妨げになってしまう子どももいます。例えば、聴覚が過敏な子どもは、些細な音も聞き取れてしまうため、勉強に集中できないことがあります。子どもの認知特性への理解は、それぞれが過ごしやすい環境をつくることにも役立ちます。

認知特性の主な分類は4種類


認知特性は、主に以下の4種類に分類されます。

・視覚優位型
・言語優位型
・聴覚優位型
・体感覚優位型

4種類の認知特性の特徴が分かれば、子どもの認知特性への理解は深まります。しかし、人の認知特性は必ずしも断定できるものではなく、複数の特性を併せ持つ場合もあることを覚えておきましょう。

【視覚優位型】見た情報の処理が得意

視覚優位型は、視覚から受け取った情報を処理できる特性です。視覚優位型には、以下の2つのタイプがあります。

・写真タイプ
・三次元映像タイプ

それぞれのタイプの特徴を確認していきましょう。

情報を二次元映像で処理するのが得意な「写真タイプ」

視覚優位型の「写真タイプ」は、目で見た情報を二次元映像で処理するのが得意とされています。写真タイプの人には、視覚から入った情報を、そのまま写真のように記憶できるという特徴があります。また、写真のように留めた記憶を、絵に描き起こすことも得意です。自分の記憶だけを頼りにアニメや漫画のキャラクターを描ける人は、写真タイプといえます。

情報を3D映像で処理するのが得意な「三次元映像タイプ」

視覚優位型「三次元映像タイプ」は2Dとしてではなく、3D映像で視覚情報を処理できます。三次元映像タイプの人は、写真のような平面の映像に空間や時間軸が加わるため、視覚情報を立体的に記憶できます。よって、建物などの目印と一緒に道順を覚えたり、時間軸に沿って記憶したことを伝えたりすることに長けているのです。

【言語優位型】読んだ情報の処理が得意

言語優位型とは、文字や文章を読んで得た情報を処理できる特性のことを指します。言語優位型のタイプは、以下2つです。

・言語映像タイプ
・言語抽象タイプ

それぞれどのような特徴があるのか順番に見ていきましょう。

文章を映像化して処理するのが得意な「言語映像タイプ」

「言語映像タイプ」は、文字や文章を読んで得た情報を、映像に変換して処理することを得意とします。反対に、映像を文章化することにも長けていることから、言語とイメージをつなげて処理できるタイプといえます。小説を読んで、ストーリー中の情景を思い浮かべたり、イメージを文章に書き起こすこと(作文など)が得意だったりする人は、言語映像タイプといえるでしょう。

文章を図式化して処理するのが得意な「言語抽象タイプ」

「言語抽象タイプ」は、文字や文章から受け取った情報を、図式化して処理するのが得意です。分かりづらい文章を、文字・数字・図と結び付けて記憶します。何かを覚えるときに書き出すと覚えやすいという人は、言語抽象タイプといえるでしょう。例えば、英単語の学習時に繰り返し書いて覚えるタイプの人には、言語抽象タイプの特性があります。

【聴覚優位型】聞いた情報の処理が得意

聴覚優位とは、耳から聞いた音声情報を処理できる特性のことをいいます。聴覚優位型のタイプは、以下の2つです。

・ラジオタイプ
・サウンドタイプ

ここではそれぞれの違いについて紹介していきます。

聞いた言語情報の処理が得意な「ラジオタイプ」

言語情報を聴覚で受け取って処理できるのが「ラジオタイプ」です。同じ言語情報を処理する点では、言語を見て処理することに長けている言語抽象型と重なる部分があるといえるでしょう。ラジオタイプの人は、耳から入った言語を、映像化などせず言語そのもので処理します。映画やドラマのセリフをそのまま覚えられるのが、ラジオタイプの特徴です。

音楽的な情報の処理が得意な「サウンドタイプ」

聴覚優位の「サウンドタイプ」は、聴覚情報の処理が得意なことはもちろん、音階や音色など、意味を持たない情報を処理することにも長けています。聞こえてきた音を瞬時に判断できる絶対音感を持つ人は、聴覚優位のサウンドタイプでしょう。聞いたままの音を自分で発することが得意な場合もあり、動物の鳴き声などを上手く真似できる人もいます。

【体感覚優位型】体験した情報の処理が得意

感覚優位型は、実際に体感・体験して得た情報を処理できる認知特性です。冷たい、気持ち良いなど、感覚的に受け取った情報をよく覚えています。自分が何かを表現する際には、身振り手振りをつけて伝えるというのが、体感覚優位型の特徴です。また、温かい、心地良い、痛いなど、感覚的な表現をよく使用する傾向があります。

不得意な認知特性がある子どもに見られる特徴


人には、得意な認知特性がある反面、不得意な認知特性もあります。学習において、不得意な認知特性をもつ子どもには、どのような特徴があるのでしょうか。認知特性ごとに、不得意な場合の特徴を見ていきましょう。

視覚認知が不得意なケース

視覚認知が不得意な場合、板書の内容を正確に書き写せないことがあります。また、文字を読むことが遅く、書き写す際に時間がかかるのも視覚認知が不得意な子どもの特徴です。中には、ノートに書き写すこと自体を嫌う子どももいるでしょう。また、ノートをとる際に、升目や罫線に収まるように描くことが苦手なケースもあります。

聴覚認知が不得意なケース

聴覚認知が不得意な子どもは、教師の口頭での説明・指示を理解することが苦手です。そもそも教師の話が聞けない子どももいるでしょう。また、聞いたことを理解しづらいため、話の内容をメモすることを難しく感じるケースもあります。周りが騒がしいと相手の話が聞き取れず、集中力が保てないのも、聴覚認知が不得意な子どもの特徴です。

言語認知が不得意なケース

言語認知が不得意なケースでは、教科書や黒板に書かれている内容を書き写せても、その意味は理解できないということがあります。基本的に、言語認知が不得意な子どもは、文章を読んでも理解しづらい場合が多く、文面での指示や教科書に書かれている内容なども上手く理解できません。また、時系列に沿って話すことが苦手という特徴もあります。

体感覚認知が不得意なケース

体感覚認知が不得意な子どもは、自分の体の大きさが把握しづらいため、ドアや机などにぶつかってしまいがちです。また、靴が左右逆でも違和感を覚えにくく、左右逆に履いていることに気づきません。物を扱うときや人に触れるときの力加減もわからないため、乱暴になってしまうことがあります。不器用な場合も多く、リコーダーの穴を塞ぐ、ボタンを掛けるなどの細かな動作が苦手です。

認知特性を生かす学習法のポイント


認知特性を学習に生かすことで、子どもの学習に対する理解は深まります。ここでは認知特性を生かす学習法のポイントについて紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

視覚優位を活かす学習法

視覚優位を生かす学習法の1つは、板書を視覚的に分かりやすくまとめることです。重要なワードを枠で囲ったり、文章ばかりではなくイラストや図を使ったりするなど、視覚に訴えかける板書を心がけましょう。コンピュータなどのICT機器を使うことも効果的です。また、子どもと意見交換をする場合には、プリントや付箋、小さなホワイトボードなどを使用して、お互いの意見が目で見えるようにするとよいかもしれません。視覚優位を生かす学習法としては、単語カードを用いる方法があります。重要な部分は色を変えるなどして、視覚的に分かりやすくまとめることがおすすめです。

言語優位を生かす学習法

言語優位を生かして学習する際には、子どもに対する問いや考えるためのヒントなどを、文章に起こして伝えることがおすすめです。また、習った内容を教科書の文章を使って振り返ることは、言語優位の特性を持つ子どもの知識定着を助けます。自分や他者の意見や考えを書き起こす作業を取り入れることも、言語優位を生かす学習法の1つです。言語優位を生かす学習法には、語呂合わせを利用するという方法があります。また、ノートを図式化してみるのもおすすめです。例えば、ノートの左上には新出単語を書き、その下には単語を使った例文をまとめるといったように、ノートのどこに何を書くのかを決めておくという方法があります。

聴覚優位を生かす学習法

聴覚優位を生かして学習する際には、新出単語や重要キーワードを繰り返し口にして伝えると効果的です。イラストを使用する場合でも、イラストの内容を口頭で説明すると、聴覚優位の特性がある子どもにとっては理解しやすい可能性があります。また、子ども自身に意見や考え、答えに至るまでのプロセスを口頭で説明させるという方法もあります。CDなどの音声教材を用いるのも効果的です。子どもが学習する際にも、リスニング教材は効果を発揮します。また、覚えたい箇所を音読して、自分の声を聞くことも、聴覚優位を生かす学習法の1つです。教師の発音やイントネーションを真似してみるのもよいかもしれません。

体感覚優位を生かす学習法

体感覚優位を生かす学習法は、重要な箇所を読ませたり、書かせたりするなど、作業や動作を授業に取り入れることがおすすめです。また、問題に対する答えを発表したり、分からないところを質問したりする際にも、積極的に口頭で説明させるのも効果的です。積み木やサイコロなど、ちょっとした小道具を使用するのも知識の定着につながります。子どもが学習する際にも、同じように作業や動作を取り入れるとよいかもしれません。効果的な方法の1つは、単語や人物名などを繰り返し書く方法です。覚えたい内容と作業が関連付くことで効率的に覚えられます。他には、ジェスチャーと関連付ける方法もあり、いずれにしても何かしらの作業や動作を取り入れることが大切です。

まとめ


認知特性は、感覚器官から入ってきた情報を処理する能力の特性のことです。認知特性には個人差があり、人によって得意・不得意があります。子どもの認知特性を理解し、「視覚優位型」「聴覚優位型」「言語優位型」「体感覚優位型」それぞれの特徴を把握したうえで、ぜひ認知特性を生かす学習方法を実践してみてください。

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