【日本語能力試験(JLPT)のN2レベルの難易度】合格率・合格点やN1レベルとの差を徹底解説
近年の日本では、さまざまな業界においてグローバル化が著しく、外国人を積極的に採用している企業も少なくありません。しかし、外国人を採用する際に企業が懸念する項目があります。それが日本と海外の「言葉の壁」です。
日本の企業に就職するためには、自分の日本語能力を証明すること重要になります。そんなときに役立つのが「日本語能力試験(JLPT)」です。
本記事では、日本語に対する理解度を測るための「日本語能力試験(JLPT)」の中で2番目に高いレベルに分類される「N2レベル」について詳しく紹介します。
試験概要やN2レベルの難易度をはじめ、公式にある問題例や注意点などについて深く理解し、正しい情報を把握したうえで試験に臨みましょう。
この記事を読む方で、外国人へ日本語を教えることについて下記のようなお悩みを持っている方はいませんか?
- 「正しい日本語を聞く機会が少ない」
- 「母語で意味を確かめながら勉強したい」
- 「働きながら日本語教室に行く時間が中々取れない…」
すららが提供する日本語学習ICT教材「すららにほんご」なら世界中のどこにいても、正しい発音で日本語を体系的に学習することができます!
詳細は以下よりご確認いただけます。
もくじ [もくじを隠す]
日本語能力試験(JLPT)とは?日本語を母語としない人を対象にした日本語試験
日本語能力試験(JLPT)は、日本語を母語としない人を対象にした日本語の理解度を測るための試験です。対象となるのは日本語非母語話者で、日本国籍であっても母語が日本語でなければ受験できます。
1984年から始まった日本語能力試験は、スタート当初は7,000人程度の受験者数でしたが、2019年には全世界で100万人を超える数となり、日本語の試験としては世界最大規模です。
約40年ほどの歴史がある日本語能力試験の受験者数やレベルについて、下記でそれぞれを詳しく見ていきましょう。
【日本語能力試験(JLPT)とは?】
- 日本語能力試験(JLPT)の受験者数
- 日本語能力試験(JLPT)のレベル
日本語能力試験(JLPT)の受験者数
現在日本ではグローバル化が進み、さまざまな企業で働く外国人が増えました。今後も外国人を採用する企業は増加するとされており、日本語能力試験の受験者数も比例して増えていくと予想されています。
日本語能力試験の受験者数は、開催当初から年々増加しているのが特徴です。その中で、2020年は新型コロナウイルスの影響により、7月の試験が全世界で中止になったために受験者数が減少しました。
しかし、その後は徐々に回復傾向となっています。
実施年 | 実施月 | 全体応募者数 | 全体受験者数 |
2019年 | 7月 | 644,104人 | 550,448人 |
12月 | 718,063人 | 618,067人 | |
2020年 | 12月 | 424,147人 | 370,028人 |
2021年 | 7月 | 387,371人 | 335,915人 |
12月 | 420,210人 | 348,992人 | |
2022年 | 7月 | 426,225人 | 356,505人 |
12月 | 506,293人 | 431,449人 | |
2023年 | 7月 | 698,062人 | 602,140人 |
12月 | 782,961人 | 663,295人 |
引用:日本語能力試験「過去の試験のデータ」
表を見ても分かる通り、2020年はイレギュラーな事態となったために受験者数は減少していますが、今後は回復していくと見られています。
新型コロナ禍による制限が緩和された2023年は過去最高の約148万人の応募があり、海外応募者数が初めて100万人を突破しました。
日本語能力試験(JLPT)のレベル
日本語能力試験には5つの難易度が用意されており、「N1レベル」から「N5レベル」があります。まずはそれぞれの具体的なレベルの内容をみていきましょう。
レベル | 特徴 |
N1 |
|
N2 |
|
N3 |
|
N4 |
|
N5 |
|
5つのレベルは数字が小さいほど難易度が上がり、求められる能力も高くなるのがポイントです。
日本で従事する場合、業種によりどのレベルが必要となるのかはそれぞれ異なります。そのため、必ずN1レベルやN2レベルの高難易度を取得しなければいけないということはありません。
日本語能力試験は、あくまで日本語に対する理解度を示すための指標です。企業の中には、採用条件の1つとして設定しているケースもありますが、まずは無理に高レベルを取得するのではなく、今現在の自分の能力に見合ったレベルの受験を目指しましょう。
日本語能力試験(JLPT)のN2レベルの試験概要
日本語能力試験のN2レベルは、5つの段階の中で上から2番目に難易度が高いレベルです。まずはその試験概要を確認しておきましょう。
【日本語能力試験N2レベルの試験概要】
- 言語知識・読解:試験時間105分
- 聴解:試験時間50分
N2レベルの試験科目は「言語知識・読解」「聴解」の2種類です。試験問題の構成と大問を確認してみましょう。
試験科目 | 大問 | |
---|---|---|
言語知識・読解 | 文字・語彙 | 漢字読み |
表記 | ||
語形成 | ||
文脈規定 | ||
言い換え類義 | ||
用法 | ||
文法 | 文法形式の判断 | |
文の組み立て | ||
文章の文法 | ||
読解 | 短文の内容理解 | |
中文の内容理解 | ||
統合理解 | ||
長文の主張理解 | ||
情報検索 | ||
聴解 | 課題理解 | |
ポイント理解 | ||
概要理解 | ||
即時応答 | ||
統合理解 |
日本語能力試験の試験内容は「聞く力」「読む力」を測るものとなっており、「書く力」「話す力」を測るためのパートはありません。
また、試験はマークシート形式で行われるため、すべて選択問題となっています。
日本語能力試験(JLPT)のN2レベルの難易度
日本語能力試験のN2レベルでは、幅広いシーンで使用される日本語に対する理解が必要で、聴解力と読解力は中級以上のレベルが求められています。ビジネスにおける基本的な表現や文法を使いこなす能力も欠かせません。
N2レベルの具体的な難易度について確認していきましょう。
【日本語能力試験(JLPT)のN2レベルの難易度】
- 600~800時間の学習が必要と言われている
- 1,000字の漢字と6,000の語彙を覚える必要がある
600~800時間の学習が必要と言われている
N2レベルを取得するためには、平均的に600~800時間の学習が必要とされています。日本人に馴染みがある英検やTOEICなどの試験に置き換えると、英検準1級やTOEIC800点を取得するための学習時間と同程度です。
勉強を開始したときの能力により異なりますが、簡単な学習で取得できるようなレベルではありません。日本人同士の会話のように、違和感なく文章に関する理解や言葉の使い方が求められているのがN2レベルです。
正確に比較ができるようなものではありませんが、N2レベルを取得するのは英検準1級と同レベルと考えておきましょう。
1,000字の漢字と6,000の語彙を覚える必要がある
N2レベルの学習内容として、1,000字の漢字と6,000の語彙が必要です。
漢字1,000字は、小学校6年間で習う漢字である1,026字の修了レベルに該当し、常用漢字の約半分を覚えなければいけません。6,000の語彙は、日本人に置き換えると小学2年生程度となり、日常的な会話は全て理解できるレベルになります。
また、N2レベルはビジネスシーンにおける読解力も求められるため、語彙の種類としてはビジネスや専門領域に関連するものも多くなるのが特徴です。
日本語能力試験(JLPT)のN2レベルの合格点と合格率
まずは合格点について確認していきましょう。
総合得点 | 得点範囲 | 0~180点 | |
合格点 | 90点 | ||
区分別得点 | 言語知識 (文法・語彙・文字) |
得点範囲 | 0~60点 |
基準点 | 19点 | ||
読解 | 得点範囲 | 0~60点 | |
基準点 | 19点 | ||
聴解 | 得点範囲 | 0~60点 | |
基準点 | 19点 |
引用:日本語能力試験「よくある質問・得点と合否判定について」
日本語能力試験は総合得点と区分別得点で採点され、合格するためには総合得点が90点以上、区分別得点はそれぞれ19点以上必要になります。
ここで注意するのは、合格するためには全てにおいて合格点・基準点以上の点数が必要という点です。仮に総合得点が150点と高得点であっても、言語知識・読解・聴解のいずれかが基準点を下回れば合格できません。
次に、N2レベルにおける合格率を確認しましょう。
実施年 | 実施月 | 合格者数/受験者数 (認定率) |
2019年 | 7月 | 55,320人/143,939人 (38.4%) |
12月 | 63,810人/178,040人 (35.8%) |
|
2020年 | 12月 | 63,811人/114,076人 (55.9%) |
2021年 | 7月 | 48,181人/110,571人 (43.6%) |
12月 | 42,079人/101,398人 (41.5%) |
|
2022年 | 7月 | 38,505人/103,093人 (37.3%) |
12月 | 32,131人/97,119人 (33.1%) |
|
2023年 | 7月 | 60,870人/144,712人 (42,1%) |
12月 | 63,807人/121,554人 (38,7%) |
引用:日本語能力試験「過去の試験のデータ」
年1回の試験実施となった2020年は、認定率「55.9%」と過去5年間で最も高く、受験者数の半数以上が合格するといった結果となりました。
また、2019年から2023年の全9回の日本語認定試験の平均認定率は「約40%」です。半分には満たないものの、著しく低い合格率ではないため、正しく学習すれば高難易度のN2レベルを取得することも不可能ではありません。
日本語能力試験(JLPT)のN2レベルの問題例
日本語能力試験の学習をする際には、公式サイトにある無料の問題例を参考にしてください。レベルごとに問題が用意されており、出題される内容を具体的に知ることが可能です。
試験は選択問題となり、基本は3・4つの選択肢から適切な答え記します。ここで紹介する日本語能力試験N2レベルの問題例を解いてみてください。
【日本語能力試験(JLPT)のN2レベルの問題例】
- 問1.()の言葉の読み方として最もよいものを、1・2・3・4から一つ選びなさい
- 問2.()の言葉を漢字で書くとき、最もよいものを1・2・3・4から一つ選びなさい
- 問3.()に入れるのに最もよいものを、1・2・3・4から一つ選びなさい
問1.()の言葉の読み方として最もよいものを、1・2・3・4から一つ選びなさい
漢字の読みを問う問題です。1つの漢字には複数の読み方があり、正しい使い方を理解しているかどうかを判断する問題になります。
「この黒い(種)からどんな花がさくのだろうか。」
(1)だね(2)たね(3)じゅ(4)しゅ
この問題正解は「(2)たね」です。「種」だけであれば選択肢にあるどの読み方も正解ですが、上記の問題文における「種」の正解は「たね」になり、他の読みは不正解となります。
問2.()の言葉を漢字で書くとき、最もよいものを1・2・3・4から一つ選びなさい
読み方が同じ漢字の中から、文章に適した種類を選択する問題です。
「今日は、ゴミ(しゅうしゅう)の日ですか。」
(1)拾集(2)修集(3)取集(4)収集
この問いの答えは「(4)収集」になります。文章の中で使用されている単語に合った正しい熟語を選ぶことが求められる問題です。
問3.()に入れるのに最もよいものを、1・2・3・4から一つ選びなさい
字も読みも異なる漢字の中から、文章に最も適している種類を選択する問題です。
「あの映画の最後は()場面として知られている。」
(1)名(2)高(3)良(4)真
この問いの答えは「(1)名」です。漢字の種類も読みも異なるため、他の2問とは違った難しさがあります。
日本語能力試験(JLPT)のN2レベルの注意点
日本語の能力が高ければ、企業への採用率がアップしたり日常生活をスムーズに送ることが可能ですが、N2レベルを取得しても注意すべきポイントがあります。
【日本語能力試験(JLPT)のN2レベルの注意点2選】
- 日本語を話す力・書く力は測定できない
- ビジネス日本語の能力とは別になる
N2レベルに関して特に知っておくべき大切な注意点について、ここで正しく把握しておきましょう。
日本語を話す力・書く力は測定できない
N2レベルを取得したからといって「話す力」「書く力」も高い能力があるという判断はできません。本記事でもお伝えしている通り、試験項目は「読む力」「聞く力」の2つです。
そのため、実際に日本人と会話をするとスムーズに受け答えができなかったり、適切な文章を書くことができないこともあります。
日本の会社に就職する場合、面接などの実際に会話を行う場面で話す能力などを判断されるケースが多くあるため、試験とは別にしっかりと学んでおくようにしましょう。
ビジネス日本語の能力とは別になる
「N2レベルはビジネスレベルの日本語が理解できる」と紹介しましたが、必ずしも取得した全員が正しく理解できているとは限りません。言葉以外にも社会のルールやマナーなど、把握すべき項目は多くあります。
「N2レベルがあるからビジネスでも大丈夫」と思っていても、実際は失礼な言い回しをしてしまうことも少なくありません。上司に対する敬語や取引先へのメールなど、さまざまな場面で日本のルールに沿った対応が求められます。
日本語能力試験はあくまでも日本語に対する理解度を測るための試験となるため、ビジネス日本語の能力とは異なることを頭に入れておきましょう。
日本語能力試験(JLPT)のN2レベルに関するよくある質問
日本語能力試験のN2レベルに関して、疑問点を抱えている方は少なくありません。事前にN2レベルについてしっかりと把握し、正しい情報を理解したうえで試験に臨むようにしましょう。
最後に、特に知っておくべき大切な2つの項目について紹介します。
【日本語能力試験(JLPT)のN2レベルに関するよくある質問2選】
- N1レベルとN2レベルの難易度の差はどのくらい?
- 日本語能力試験(JLPT)は中国語圏の方が有利って本当?
N1レベルとN2レベルの難易度の差はどのくらい?
N1レベルとN2レベルの難易度は主に下記のような内容となっています。
【N1レベルとN2レベルの難易度の差】
- N1レベル→日常会話はもちろん、複雑な新聞の内容や自然なスピードで伝えられるニュースを正しく理解できる
- N2レベル→日常的な会話の理解に問題はなく、少し複雑な新聞の内容やニュースも理解できる
N1レベルでは、「幅広い場面で使用される日本語に対する高い理解度」が求められています。一方、N2レベルで求められるのは、「日常的な場面に加え、より幅広いシーンで使用する日本語がある程度理解できている能力」です。
また、日本語能力試験の合格点においてもN1レベルとN2レベルには違いがあります。区分別得点はどちらもそれぞれ19点以上が基準点となりますが、総合得点ではN2レベルの合格点が90点なのに対し、N1レベルの合格点は100点です。
日本語能力試験(JLPT)は中国語圏の方が有利って本当?
母語が中国語圏の方が有利と言われる理由の大きなポイントは「漢字」です。中国語と日本語の漢字は、表記や意味が同じものや似ているものが多くあります。
【中国語と日本語の共通点】
- 意味や表記が同じ漢字→学生・大学・学校など
- 表記が似ている漢字→化粧品・解決・口紅など
日本人から見ても、「中国語は分からないけれど文字を見れば何となく意味が分かる」ということがあるように、とても似た言語となっているため、日本語能力試験には有利に働きます。
特に言語知識(文法・文字・語彙)や読解問題に対しては点が取りやすく、発音ができない場合でも意味が分かれば点数が取れる傾向にあります。
まとめ:日本語能力試験のN2レベルは高難易度
日本語能力試験のN2レベルは、難易度が高く日本語に対する深い理解度が求められます。ビジネスにおいても、企業の中には「日本語能力試験N2レベル以上」を採用基準にしているケースも多いです。
しかし、日本語能力試験は「読む・聞く能力」を示す指標となるため、N2レベルを取得してもコミュニケーション能力や書き取り能力が優れている訳ではありません。
日本語能力試験に合格するための勉強はもちろん大切ですが、同時に人と会話する能力や文字を書く力をしっかりと身につけ、生活やビジネスに役立たせていきましょう。
この記事を読んだ方で、外国人へ日本語を教えることについて下記のようなお悩みを持っている方はいませんか?
- 「正しい日本語を聞く機会が少ない」
- 「母語で意味を確かめながら勉強したい」
- 「働きながら日本語教室に行く時間が中々取れない…」
すららが提供する日本語学習ICT教材「すららにほんご」なら世界中のどこにいても、正しい発音で日本語を体系的に学習することができます!
詳細は以下よりご確認いただけます。
まずはお子様がやってみようと思えるかどうか、
無料体験してみてください
のお子様が
学習を継続!!
「すらら」は「見る、聞く、書く、読む、話す」などの
いろいろな感覚を使った飽きない学習システムなので、
ゲーム感覚で楽しく集中して勉強ができます。
※2016年1月~2017年6月の期間ですららを3ヶ月以上継続している生徒の継続率